また行った場所が、東京随一の繁華街新宿だってことがあるのだけれど、とにかく広告、宣伝、呼び込み、客引き、その他もろもろの物事が、なんとか人の気をひこうと一斉に群がり集まってくる。それぞれが自分勝手に、自分のことだけを考えてやっていることだから、それらはお互いに何の関わりもなく、したがって全体として完全なる無秩序というものが、その場のすべてなわけだ。東京に住んでいるときは、それが当たり前であって、日本全国津々浦々、同じようなものなのだろうと勝手に思っていたのだが、そんな場所は日本には、それほどたくさんないのだよな。
そういう場所だから、歩く人も、まわりの無秩序な刺激に負けないように、自分も刺激的な格好をしなければ、埋もれて目立たなくなってしまうわけだ。東京の女の子が、とにかくエロい格好をしているということは、最近思っていたことなのだけれど、エロいというのはある意味、最大の刺激であって、今やおそらく東京では、エロくない格好というものは、誰にも認識してもらえないというような、そういうことになっているんじゃないかという気がするな。
ストッキング一つとっても、柄が入っているのは当たり前で、その柄と、腰回りの無地の部分との継ぎ目が、ふつうなら腿の付け根のあたりにあるだろうというところ、ずいぶん下の、腿の真ん中あたりにあるというのもずいぶん見かけた。下着が見えているというのと、感覚的にはいっしょなわけで、人間いろんなことを考え出すもんだ。
東京の場合ラーメンも同じような感じがして、スープは濃く、麺は太く、肉は分厚く、野菜は山盛り、とかいうのって、それぞれの部分部分の特徴を、より刺激的になるように増幅しているというようなものであって、それってラーメンのデフォルメ、ラーメンのマンガみたいなものだよな。東京の人はあまりに刺激にかこまれた生活をしているから、そういうマンガみたいなものしか、すでに認識できないようになっているのじゃないかと思ったりする。
まあしかし、オーソドックスな、「日本風のインドカレー」といえばこれだろう、というような、まろやかでかつスパイスの利いた味。すべてにおいて程良くて、今の新宿の刺激にあふれた光景とは、ずいぶん違うのだけれど、新宿も昔はたぶん、こういう場所だったということなのでしょうね。