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2010-11-07

東京

僕は生まれは札幌だが、3歳の時に神奈川に来て、それ以降ずっと東京や東京近郊に住んできたから、東京は生まれ故郷のようなものなのだ。

でも数年前、名古屋に2年住み、広島にも2年住みというのを経験し、僕にとっては圧倒的に、東京より、地方の暮らしが性に合っているということがわかり、今春仕事をやめて、京都に住むことに決めたのも、こちらに人脈があるということもあったが、東京ではなく地方に住みたい、という気持ちも大きかった。

東京に住んでいる時は解らなかったのだが、すし詰めの満員電車、目の前10センチのところにオヤジの禿げた頭があったりする、まったく身動きできない状態で、1時間とか、2時間とか、かけて通勤するのが普通であるという状態は、明らかに人間の限界を超えている。そこで仕事をしないといけない人は、それに耐えなければ仕方ないわけだが、選ぶことができるのなら、そうでない所の方がいいに決まっている。

というわけで現在京都で快適に暮らしているのだが、今回中学の時の同窓会が4年ぶりにあるというので、久しぶりに東京へ行ってきた。

中学の同窓会が、こんな歳になっても続いているのは、わりと珍しいのじゃないかと思うのだが、8年前に中学卒業以来初めて行われて、それから4年ごとに開催されることになっている。同窓会って面白くて、久しぶりに会うと誰だか解らなかったりするのだが、そのうちそれが、だんだんピントが合ってくるように、中学時代の顔が思い出され、解るようになってくると、それと同時に、自分が中学時代へ戻ってしまったような気がしてくる。そういう気分は、まず他では味わえないからな。

それに中学は、僕は公立校へ行ったので、選抜されずに、ヤクザからお医者、先生まで、幅広い人種がいる。ヤクザの同級生は今回来なかったが、新宿でフィリピンパブを経営しているやつとか、48になって家事手伝いをしている男など、普段なかなか会えない種類の人達の顔を見られるのも楽しい。

ほとんどは結婚しているのだが、離婚したり、未婚だったりして独身の人間も、約50人中、僕を含めて4人いた。一人女子、といってももちろんおばさんだが、で、いわゆる事情通というタイプがいて、彼女は中学を卒業して以来初めての同窓会参加だったので、今現在の実際の事情に通じているということではないのだが、会場の隅の方の席に陣取り、繰り広げられる人間模様を目をキラキラさせながら眺め、時折興味をもった人間を呼びつけ話を聞くなどし、短い時間ながらも最大限の情報収集力を発揮しているのがおかしかった。

僕も彼女に呼ばれ、離婚の経緯などを根堀り葉掘り聞かれるわけだが、ついでに僕の相手を面倒みようと思ったらしく、未婚の女子を呼びつけて、あなたたちお似合いだと思うから、次の同窓会の時に、いい仲になっているなと嬉しいな、などと言いながら、その女子と僕とをしきりにくっつけようとしていた。実際にそれが実現する可能性は、ほぼないのじゃないかとは思うが、そういうはしゃいだ雰囲気は、なんとも久しぶりのことで、わざわざ京都から新幹線に乗って来た甲斐があったと思った。

それから中野区の地元へ移動してさらに飲み、同級生の家に泊めてもらって、朝方新宿へ戻ってきたのだが、歌舞伎町はさすがだな。朝の7時過ぎでも、当たり前のように客引きがいる。お上りさんよろしく、キャバクラやらホストクラブやらの看板を眺めながら、のろのろ歩いていると、次から次へと声をかけられる。

東京の人は歩くのが早くて、僕も東京に住んでいた時には、今よりもっと、すたすた歩いていたのだが、それはたしかに時間に追われて忙しいということもあるが、ゆっくり歩くと変な人に声を掛けられるからということもあったというのを、久しぶりに思い出した。わき目も振らずにまっすぐ歩かないと、余計なものに引っかかってしまうのだ。

さて新宿で、酒を飲んだ翌朝、食べるものといえば、やはり牛丼だ。これは僕にとっては、ほとんど決まっていると言ってもいい。学生の頃は、毎日と言ってもいいくらい、牛丼を食べていた。最近はラーメンをよく食べるようになったが、欠食児童の感覚としては、ラーメンは高いばかりで、腹持ちが悪いのだよな。

そして牛丼は、吉野家と決まっている。吉野家はほかの牛丼屋に比べて、肉質がやわらかいということと、味付けが、和風だしの風味が利いているのがいい。和風だしといっても、当然化学調味料なわけで、吉野家の牛丼というのは、化学調味料の勝利であると、僕は思っている。

牛丼の食べ方も、人によって色々だと思うが、僕は肉、めし、紅しょうがを、一緒に口に入れてしまうのではなく、まず肉、そしてめし、さらに紅しょうがという具合に、一つずつ口に入れていく。それがそれぞれの味をいちばん楽しめる。

化学調味料の味しかしない味噌汁も、当然付ける。