しかしスペアリブおでん、ほんとにうまかった。最初から最後まで、汁をいっさい沸騰させないから、肉が固くなったり、モソモソになったりせず、ぷりぷりでジューシーのままなのだ。肉というのは85度で固くなるそうで、沸騰させない水の温度80度で火を通すと、そういうことになるというわけなのだな。一日目はまだ味がちゃんとしみていなかったが、二日めはもうバッチリで、死ぬかと思うくらいうまかった。
スペアリブはアクがかなり出て、掬うだけでは取り切れないので、やはり下茹でする必要があるんだな。沸騰させないようにして30分くらい煮て、その汁も濾して使うようにすれば、いいのかもな。ちょっと面倒くさいが、まあべつに煮込み料理は、時間はかかるが、ただ鍋を火にかけておけばいいだけだから、手間はそれほどかからないのだよな。
話は変わるが、尖閣ビデオ流失の件が、気になって仕方ないのだ。政府が非公開としていた映像が、インターネットであのようにいとも簡単に公開されてしまうという、衝撃の大きさもさることながら、僕はユーチューブの動画を、削除される前に、sengoku38本人のアカウントから直接見たということもあって、流出させた保安官を、なんとなく身近に感じてしまっているということもあるのかもしれない。
本を読んだりとかしながらも、保安官のことをいろいろ頭に思い浮かべたりしてしまうわけなのだが、取り調べで「国民の知る権利に応えた」みたいなことも言っているみたいだが、まあそういうこともあるかとは思うが、それよりも、自分が手に入れたあのビデオを、ネットで公開したくてたまらないという、そういう欲望を、抑えることができなかった、というのがほんとのところだと、僕は想像するのだよな。
自分が持っているこの映像を、ネットで公開すれば、みんなが驚き、大きな反響を巻き起こし、自分はヒーローになれる。そういう想いに取りつかれてしまって、それをしたらどういうことになるのか、職場の仲間に迷惑をかけ、自分もクビになり、事によっては家庭も崩壊するということを、うすうす気付いていながらも、ビデオを公開しないことにはどうにもこうにも我慢ができない、そういうことになってしまった。
なぜそう思うのかというと、もしほんとに冷静に、このビデオは国民に知らせるべきである、自分はそれを、職を賭しても行う、という覚悟ができていたのなら、ふつうは、まず保安官の仕事を辞めて、職場の仲間にかける迷惑を最小限にして、ビデオを公開したらすぐに名乗りをあげて、自分の行動の意味を説明すると、そういう風にするはずだと思うのだ。ところが彼の場合、ビデオが公開されてから、ようやく4日もかけて名乗りをあげて、取り調べから漏れ伝わってくる話も、「職場の仲間に申し訳ない」とか、今さら言うなよ、と言いたくなることだったりとかする。
つい出来心でやってしまったことが、やってしまってから事の重大さに気付き、あわててビデオを削除したけれど、時すでに遅し、どうしたらいいのかそれから考え始め、逡巡した挙句に捜査の手が迫ってきて、上司に問い詰められてようやく名乗りをあげるという、なんともみっともないことになっているというのが真相なのじゃないかと僕は思う。校長が生徒の母親に手を出してしまってクビになるというのと、話の種類としては変わらないのじゃないかと思うのだよな。
あのビデオが流出したということが及ぼす影響は、多方面にわたってかなり大きなものがあるとは思うが、その経緯そのものは、そういうつまらない話だ、ってこった。たぶん。
しかしあの保安官、これからイバラの人生だな。大変だ。