煮物は日本人にとって、「心のふるさと」のようなものなわけですけれど、作るのに時間がかかる。
まずだしを取り、材料を下ゆでして、それからコトコト煮るとなると、なんだかんだ言って、どうしたって小一時間はかかることになる。
それで現代では、「ほんだし」をつかって時間短縮をはかることになるわけですが、「和食の命」ともいえる「だし」を工業製品に売り渡してしまうことには、僕はどうも抵抗がある。
そこで登場したのが、「煮物っぽい炒め物」という企画。
これは煮物の時間短縮を、工業製品に頼るのでなく、「炒め物」という、伝統的な手法によって解決しようという話で、たしも取らず、炒め物とまったくおなじ手順でできるので、大幅に時間が短縮。
しかも味も、ばっちり煮物と変わらずうまいです。
仕事が終わって家に帰ってから、短時間で料理をしなくちゃいけない人が、「煮物を食べたい」とかいう場合、いいんじゃないかと思います。
■ 「厚揚げと青菜の煮物っぽい炒め物」の作り方(男子1食分)
◎ 材 料
・厚揚げ 1パック
スーパーに売ってる厚揚げ、1パックの量も色々あるかとは思いますが、べつに好きなだけでいいです。この料理は厚揚げが主役なので、「ちょっと多いかな」というくらいでかまいません。
・青菜 2分の1束
青菜は、小松菜かチンゲン菜がいいです。ほうれん草は不可。水菜は△。
・豚コマ肉 100gくらい
味出し用なので、少なめでいいです。50gとかでもいいかも。豚コマ肉は、「安い」という意味ですから、冷蔵庫に豚肉が残っていれば、なんでもいいです。牛肉でも鶏肉でも可。
・ちりめんじゃこ 大さじ1くらい
べつに「すり切り」とかで厳密に計る必要はありません。「だいたいそのくらい」という意味。
・唐辛子 1本
大人はやはり、ピリ辛味がいいわけですが、お子さんがいる場合なら、これは入れずに、皿に盛ってから大人の分だけ、七味唐辛子をふるようにしたらいいと思います。
・合わせ調味料 酒大さじ1、みりん大さじ1、醤油大さじ1、水大さじ1
合わせ調味料はかならず、合わせた段階で、味見をします。アルコールがありますから、ちゃんとした味はわかりませんが、「甘さと塩辛さ」のバランスだけ見ておきます。もし甘みが強すぎれば醤油を、塩気が強すぎればみりんを足します。
・サラダ油 大さじ1くらい
・ゴマ油 大さじ1くらい
◎ 作り方
(1) 切る
厚揚げは、手で1口大にちぎります。
包丁でなく手でちぎるのは、味のしみ込みをよくするためです。
昨日は冷蔵庫に残っていたチンゲン菜を使いましたので、チンゲン菜は、葉と茎を切り分け、葉は半分に切り、茎はまず最初にタテに切り、さらにタテのうす切りにします。
小松菜の場合なら、やはり葉と茎を切り分け、葉と茎をそれぞれ半分くらいに切ってしまうのがいいと思います。
唐辛子はヘタを落とし、種を出して、細い輪切りにしておきます。
豚肉は、大きいようなら、1口大程度に切ります。豚コマ肉なら、べつにそのままでかまいません。
(2) 下ゆでする
青菜は、生のままだとうまく火が通らないし、アクも出るので、これだけはちょっと面倒でも、下ゆでした方がおいしくできます。
鍋に湯を沸かし、塩ひとつまみを振りこんで、まず青菜の茎を入れます。
湯が再沸騰してきたら葉をいれて、また再沸騰してきたら、ザルにあけておきます。
(3) 炒める
フライパンを「中火」で温め、サラダ油とゴマ油をいれて、まず豚肉を炒めます。
豚肉の色が変わったら、ちりめんじゃこと唐辛子をいれ、さらに1分ほど炒めます。
火加減は中火のままで、厚揚げと青菜をいれ、1分ほど炒めます。
ここで炒めるのは、火を通すことが目的ではなく、豚肉とちりめんじゃこ、唐辛子の味がついた油を、厚揚げと青菜になすりつけることが目的です。
(4)煮る
合わせ調味料をいれ、鍋を前後にゆすって鍋返しをするか、またはフライ返しをつかって上下を返しながら、1分ほど中火で煮ます。
さらに火を強火にし、やはり上下を返しながら、調味料が煮詰まりなくなるまで煮たら、出来あがり。
厚揚げと青菜の煮物っぽい炒め物。
これはいいですよ。
厚揚げにもしっかり味がしみていて、目隠しして食べたら、絶対に煮物と区別がつきません。
味のポイントはちりめんじゃこ。
ちりめんじゃこは、炒め物につかうと、ほんとにいい味を出してくれます。
酒は焼酎お湯割り。
和風味でも、炒め物の場合には、やはり日本酒より焼酎が合うと思います。
* * * * *
昨日は朝と昼に、手軽にできる炭水化物系を2品食べました。
これもあっという間にできて、時間がないときオススメです。
■ 高菜のスペイン風ごはん
昨日の「
あさりごはん」の要領で、あさりの代わりに、「高菜とちりめんじゃこ」を使いました。
味もかなりいけます。
生米を、洗ったり水に浸したりセずそのまま炊けるので、「ご飯もの」の中では一番手軽なんじゃないでしょうか。
◎ 作り方
1.オリーブオイル大さじ2くらいを小さめの鍋にいれ、1センチほどに切った高菜とちりめんじゃこそれぞれ軽く1つかみくらいを弱火で炒めます。
2.生米150ccを、洗わずそのままいれ、1~2分炒めます。
3.給湯器の最高温度のお湯200ccと、酒大さじ1、醤油小さじ1、さらに味を見ながら塩をほんの少しいれ、かき回して米が鍋底にくっつかないようにしてやってから、フタをして、とろ火で20分炊きます。
4.5分ほど蒸らせば出来あがり。
■ 梅かつおの焼きうどん
和風の炒め物をするとき、「だし」をどうするかが問題になるわけですが、上の2つはちりめんじゃこを使ったのに対し、こちらではかつお節。
これも、かなりバッチリうまいです。
ただ、肉が余っているのがあれば、それをちょっぴり味出し用にいれたら、もっとおいしいかも。
◎ 作り方
1.梅干し1個分の種を除き、包丁でよくたたいたものを、酒大さじ1、醤油大さじ1、水大さじ1と混ぜ、合わせ調味料にしておきます。
2.フライパンを中火で熱し、サラダ油大さじ1をいれ、斜め薄切りにした10センチ長さ程度の長ネギとゆでうどん、合わせ調味料、それにかつお節3g入り1袋と、材料をすべていれます。
3.うどんをほぐすように炒め、合わせ調味料が煮詰まってなくなれば出来あがり。
* * * * *
昨日、友達のバツイチ・アラフォー女性から電話があり、妻子持ち49歳の男と付き合い始めているのだけれど、ちょっとした行き違いから、つい相手に感情をぶつけてしまったら、
「女房に小言をいわれているみたいだ」
といわれ、信頼していたはずの相手で、自分も相手の感情をできるだけ受け止めるよう、努力していただけに、ショックだったとのことでした。
男性は彼女に会うと、「疲れた、疲れた」といっては、自分の仕事や家庭の愚痴をこぼすのだそうです。
趣味の音楽プレーヤーだそうですが、仕事もリストラされ、夫婦仲も悪く、彼女としては、なんとか男性が立ち直り、自分の道を歩むことができるよう、応援したいと思っているのだとか。
僕はこの男性と年齢がおなじですから、男性の気持ちが手に取るようにわかるのですけど、要は男性は、自分は相手に癒されたくても、相手を自分が癒してやろうなどとは、つゆほども考えていないということなんですね。
男性は、彼女から「ありがとう」といわれると、「他人行儀な感じがする」といって不愉快そうな顔をするんだそうです。
僕も結婚していた頃、元妻から「ありがとう」といわれるたび、まったく同じように感じていました。
「ありがとう」というのは、「義務」や「奉仕」にたいする感謝の言葉であり、本当に親しい間柄では、そんな堅苦しいことなしに、お互いが「やりたい」という気持ちから何かをするのが大事であると、勘違いしていたんです。
そうした、「家庭の仕組み」にたいする全くの無理解が、僕の離婚の原因となったわけなんですが、男性の夫婦仲が悪くなったり、仕事をリストラされたりすることも、たぶん同じようなことなのでしょう。
「自分自身の居心地のよさ」を追求するのは、たしかに大事なことだと思うんですが、それを僕みたいに、1人で酒を飲んだり、サウナに行ったりするだけじゃなく、誰かといっしょに居心地よくなろうと思うと、それなりの「努力」が必要なんですよね。