「麻婆豆腐」といえば、丸美屋やCookDoの麻婆豆腐の素をつかって作るという人も、少なくないでしょう。
もちろんそれは悪いことではないし、主婦が手早く料理を作らないといけないときには、手軽においしくできるから便利ですよね。
ただそれは、「料理をたのしむ」という点からいえば、ちょっともったいないところはあるわけです。
「味付け」という、せっかくの一番おもしろいところがブラックボックスになってしまっているのですから、それでは料理をたのしみようがないですね。
「料理をたのしみたいけど、たのしめない」
という人も、少なくないかもしれません。
とくに主婦は、料理を「義務」でやる側面があるから、どんなことでもそうですけれど、義務のままだと、なかなかたのしい気持ちになるのはむずかしい。
そういう場合は、「ご主人がいないとき」とか、チャンスなのではないでしょうか。
料理にあれこれ注文をつけるご主人がいないとき、思う存分、手抜きでもなんでもいいから、自分が作りたい、自分が食べたいものを作ってみる。
食事はもちろん、大勢でするとたのしいに決まっていますけど、「1人だからこそ味わえるたのしみ」があることも、また確かなことだと思うんですよね。
「仕事」はなんでも、効率的にこなし、「いかに短時間で終わらせる」かが重要になってくる。
「時間をいくらかけてもいい」というのは、仕事ではないですよね。
でも、「趣味」はちがう。
料理が趣味ならば、「いくらでも時間をかけたい」ものになるでしょう。
料理をうまく、自分にとって仕事でなく、趣味であるということにしておけると、またちがった世界が見えてくると思うんです。
どうせしなくちゃいけないことなんですから、少しでもたのしめるようにした方が、いいに決まっていますよね。
麻婆豆腐は、一から作るのはそれほど難しくはないですが、レシピを見ると、訳の分からない調味料が、いろいろ並んでいるわけですね。
そういうものをイチイチ買い揃えなくちゃいけないと思うと、作る気も失せてしまう。
そこで今回は、「豆板醤」だけは仕方ないとしても、その他の甜麺醤だとか、ドウチ、花椒だとかいうものは、一切使わずに、麻婆豆腐を作りました。
中国の調味料を使わなくても、丸美屋よりはよっぽどおいしい、日本人好みの麻婆豆腐が作れます。
これは木綿豆腐1丁を、水切りしておきます。
水切りは、2センチ角程度に切りそろえた豆腐を、まな板なり、皿なりザルなりの上に20分くらい置いておけばいいですが、時間をかけずにやるのなら、2~3分サッとゆでるようにしてもいいです。
それに豚のひき肉100グラム。
ニンニクとショウガ、それぞれ1かけのみじん切り。
長ねぎ5~10センチくらいのみじん切り。
豆板醤を、大さじ1。
豆板醤のこの分量は、この量だと「ふつう」の辛さになると思います。辛いのが好きな人は、もっといれても問題ありません。
合わせ調味料を作っておきます。
まず器に、味噌大さじ1と、砂糖小さじ1。
ここに液体をすこしずつ入れながら、味噌を溶かしのばすようにしていきます。
醤油を大さじ1。酢を小さじ1。酒を50cc。水150cc。
この調味料は要は、「甘辛い味噌味」をベースにするという意味です。
麻婆豆腐のレシピにいれられることが多い甜麺醤も、「甘辛い味噌」ですから、日本人にとっては、これでまったく問題ありません。
またどんなレシピにも、「鶏ガラスープの素」を加えることになっていますが、べつに豚肉のだしがあるのですから、それは必要ありません。
水溶き片栗粉。
片栗粉大さじ1を、水大さじ2で溶かしておきます。
ゴマ油小さじ1くらいを、最後にまわしかけます。
青ねぎ適量を、器に盛ったらふりかけます。
炒めるときは、サラダ油大さじ3。
これはけっこうな量ですが、油はこのくらい使ったほうがいいです。
まず先に豚肉を炒めるのは、けっこうなポイントなんですね。
肉にきっちり火を通しておかないと、変に油っぽいような感じになってしまいます。
炒めると肉汁が出てきますが、これをきちんと飛ばして、肉に焦げ目が付くくらい炒めます。
写真は、サラダ油が少ないんですが、はじめ大さじ1で炒めてみたら、やはり足りなかったとわかったので、あとから足しています。
強火のままだと、焦げてしまうからですね。
鍋がある程度冷めたら、あらためて中火をつけて、じっくり炒めます。
香辛料の香りを出し、それを肉にしっかり付けます。
レシピに分量が書いてあっても、かならず自分で味見するのは大切ですよね。
もし塩気が足りなければ塩を足しますが、煮汁はこれから煮詰まっていくので、あまり塩からくしないようにします。
弱火にして、コトコト4~5分煮ます。
豆腐が煮汁から顔を出すようなら、ときどき混ぜて、ひっくり返してやるようにします。
豆腐を煮たら、火を強火にし、水溶き片栗粉をいれトロミを付けますが、トロミを付けるとき重要なのは、レシピに分量が書いてあっても、それを一度に全部、いれてしまわないことです。
煮汁のちょっとした量のちがいで、必要な水溶き片栗粉の量は大きく変わってきますから、まず半分くらい、まわし入れてみて、トロミの加減を見ながら、足りないようなら水溶き片栗粉を追加していくようにします。
じつは昨日は、水溶き片栗粉を一気にいれてしまったために、すこしトロミをつけすぎてしまいました。
トロミが付いたら、ゴマ油をたらして、全体を大きく混ぜて、出来あがり。
皿に盛ったら、青ねぎをふりかけます。
トロミがきつすぎることを除けば、大変おいしかったですよ。
しかしトロミがこのくらい強くても、これはこれでよかったです。
中国のもともとの麻婆豆腐も、汁気はあまりないんですよね。
トロミのきつい麻婆豆腐は、スプーンをつかわず箸だけで食べられるのが、まずいいです。
味も「中国風味噌田楽」という風情になり、僕は、「これから麻婆豆腐は、こうやって作りたい」と思ったくらいです。
中国の麻婆豆腐には、「花椒」という中国山椒をいれるわけで、最近の麻婆豆腐は、これが味のポイントになっていますよね。
そのかわりにこの麻婆豆腐に、日本でつかう、ふつうの山椒をふってみると、またいい感じの味になっておいしいです。
昨日はこれに、「中華風アサリのスープ」を付けてみました。
アサリの口がひらいたら、塩すこしと醤油、酢とゴマ油すこしで味をつけ、青ねぎをサッとひと煮して出来あがり。
あー、今思いましたが、これ唐辛子と酢をもっときかせて、トロミもつけて、酸辣湯風にしてもよかったかもしれません。
お湯割りを「2杯」など、以前は飲んだうちには入らなかったものですが、最近は少なめの酒でも、わりとサクッと終われるようになってきました。
「年」ってことですね、これは。