初めて訪れた街の繁華街を、隅から隅まで歩いて、店を眺めてまわるのは、とても楽しいもので、繁華街というのは、その土地の人たちの欲望の、ひとつの表れであるわけだから、それを知るということは、その土地を知るための、手っ取り早い方法であると、僕は勝手に思っている。
仙台に来て3日、広瀬通から北の、国分町あたりはひと通り歩いて、僕が強く思ったことは、仙台には、奥深い、酔っ払い文化があるな。
だいたい、稲荷小路という飲み屋通りにある、車両通行禁止のための柵。
酔っ払いじゃない人から、苦情が来そうなものだ。
仙台では酔っ払いというものが、非常な市民権を得ているということだよな。
もしかして、酒を飲まない人は、不思議に思われたりとか、そのくらいのこと、あるんじゃないのか。
知らないが。
仙台では、なぜかオネエちゃんより、男性が目につくのだが、でっぷりとして、腹が出た人が多い。
こちらでちょっと知り合いになった人に、その話をしたら、その人は他県の出身で、仙台に数年いたことがあるという人だったのだが、たしかにそうだと、理由はたぶん、冬になると寒いから、スキーをするとかいうのでないと、行くところもなくて、家や飲み屋で、酒ばかり飲んでいるからじゃないか、ということだった。
だいたい東北は、まず米がうまいし、魚介類も豊富だから、酒を飲むにはこれ以上の場所はないのだよな。
一番町通りという、南北に走る商店街があって、ここには三越があったりして、おしゃれな店も多く、これがこのあたりの繁華街の、ひとつの中心なのだけれど、その二本西、やはり南北に走る通りが、国分町通りといって、ここから西が、キャバクラや風俗の店が山ほどある地帯。
一番町通りと国分町通りのあいだの道は、稲荷小路といって、ここには居酒屋がたくさんある。
一番町通りの東側は、こんどは小さな、カウンター式の飲み屋が軒を並べる一帯になっている。
小さな、カウンター式の飲み屋というのは、店主と客が顔突き合わせ、話をするわけだから、なんとも温かい、独特の風情があって、いいのだよな。
昨日はそのうちの一軒の、「森」という店へ入ってみた。
酒は、ビール、ウィスキー、ワイン、カクテル、日本酒、焼酎と、なんでもござれ、洒落たジャズなんかがかかって、ちょっとバーのような雰囲気もあるのだが、さらにまた料理が、各種、膨大な量があって、七輪焼きというのが、ひとつのセールスポイントみたいだが、ほかにもちょっと覚えられないくらい、いろんなものがあった。
宮城でおすすめの酒をきいたら、「萩の鶴」という純米吟醸を出してくれた。
これ、グラスが、ちゃんと一合入るくらい、大きめで、下のマスにもたっぷり入っていたから、一合半くらいはあったんじゃないか。
甘めで、しかもおだやか、すっきりとした飲み口。
宮城の酒は、一ノ蔵も、わりとすっきりしていて、軽い飲み口なのだよな。
ずいぶん時間がかかって、揚げたてのが出てきたが、いちいちそうやっているのかな。
ご夫婦とも、とにかく実直な、何事にも手を抜かず、丁寧にやる、というような感じの人たち。
ご主人は、今年初めにブラジルの、日本人会に招待されて、そばを打ってきたりもしたのだそうだ。
僕はこれは初めて食べたのだが、ご夫婦が沖縄へ行ったとき、おいしかったから、レシピを聞いてきたものなのだそうで、ハツを長ネギやショウガと一緒にゆでて、それを玉ねぎのスライスと共に、ポン酢に浸けたものなのだそうだ。
好みで、シークワーサー、それに沖縄の唐辛子ダレをかけて食べる。
あっさりしていて、酒の肴にはうってつけ。
今度自分でも作ってみよう。
以上でお勘定は、1,550円。
帰り際には、名刺をくれて、もし場所がわからなくなったら、電話をくれれば迎えに行きますから、とまで言ってもらい、温かな気持ちになって店をでた。
また来たいな。
一番町通りの、一本東の道が、三越に北に向かってつき当たる、そのあたりにある。
くいもんや 森 (居酒屋 / 勾当台公園駅、広瀬通駅、あおば通駅)
夜総合点★★★★★ 5.0