中毒になり、食べずにはいられない、ということにまではならないので、ほかの店を新規開拓しようということにすれば、忘れてしまうようなものなのだが、でもかならず、しばらくするとまた食べたくなる。
僕がとんかつが好きで、東京にいたころには週に一度はとんかつを食べていたということもあるとは思うし、この店が家から近く、また僕がこれまで京都で食べたとんかつのなかでは、この店のがいちばんうまいということも、たしかに理由としてあると思うが、なんとなくそれだけとも思えない。
この店の「個性」ともいうべきものが、僕を引きつけるということも、大きいような気がするのだな。
値段は924円。
これをぺろりと平らげることのできる人、僕は少ないのじゃないかと思うくらいの大きさなのだ。
常識的な考えからすれば、もう少し大きさを小さくして、値段を安くしたほうが、お客さんは増えるのじゃないかと思うのだが、この店のマスターはそうはしないわけだ。
なぜなのか。
そう、この「なぜなのか」という問いに、この店でとんかつを食べた者は、自ずと向き合わざるを得ない。
とんかつを食べながら、なぜこんなにでかいのかと、あれこれ考えてしまうことになるのだ。
この素麺、これだけでかいとんかつがあり、たっぷりのご飯があれば、それ以上の炭水化物はまったく必要ないと思えるのにもかかわらず、入っているわけだ。
なぜなのか。
ここで再び、問いを発せざるを得なくなる。
これらの問いにはおそらく、答えがないのだ。
ライオンのたてがみは、なぜ金色かを問うというようなものなのだろう。
答えがないと解っていながら、問いを発せざるを得ない、そういう状況をこそ、不条理と呼ぶべきものではないだろうか。
この店の、そういう不条理さというものも、僕を引きつけてやまない、大きな理由になっているという気がするのだ。だからどうしたって話だが。
だいこんのはな (定食・食堂 / 四条大宮駅、大宮駅、二条駅)
昼総合点★★★★☆ 4.0