むかし勤め先の仕事仲間で、どうしても気が合わない女性がいて、しかし彼女と、なんとか折り合いを付けなければならないという、切羽つまった状況のなかで、苦肉の策として編み出した、血液型についての僕だけの理論がある。
これは何かの本を参考にしたものでもなく、根拠といえば、自分の経験としてそう感じるということだけで、まったく無きに等しいものなのだが、僕はその理論を20年ちかくの長きにわたって参考にし、人間の関係というものを理解する、一つの指針として役立てている。
べつに秘密にするようなことでもないので、どういうものだか、ちょっと書いてみようかな。
まず人間には4つの血液型、O型、A型、AB型、B型があるわけなのだが、これを野球のダイヤモンドのような、四角の上に配置する。
ホームベースがO型、一塁がA型、二塁がAB型、三塁がB型。
血液型が同じものどうしは、当然性格が合うと考えられるが、このダイヤモンドでトイメンになったものどうし、O型とAB型、A型とB型とは、性格が正反対であり、共通するところがない。血液型と性格が関係あると言うということは、A型に相当する性格、B型に相当する性格というものがあって、この二つの組み合わせとして、さらにAとBとを両方もっている性格、これはAB型、それから、どちらももっていない性格、これはO型、という、そういうものがあるということを、言うことになるから、自動的に、上のトイメンのものどうしは、共通するものがない、ということになるわけだ。
僕はAB型なのだが、職場で気の合わなかった女性というのはO型で、だから僕は理解の仕方として、相手は性格的に、自分と共通するところがないのだから、相手が自分には理解のできないふるまいをしたとしても、それは仕方のないことであって、それを理解しようとするのではなく、理解はできなくとも、なんとか折り合いを付けられるように努力することが、最善の策なのだ、というように考えることにした。
そしたら気持ちが、ウソのようにすっきりしたものだ。
しかし逆にいえば、理解はできないとはいえ、正反対ということは、それが覆うことのできる距離としては最大になるので、トイメンの者どうしがなんとか折り合いをつけて、チームとしてやっていけるようになっている場合は、そのチームは最強であると、考えられることになる。
以上がダイヤモンドの、トイメンどうしの関係についてだが、ダイヤモンドで隣り合う者どうしの関係というものもある。
上流、下流とも呼べるようなことが、あると思うのだ。
ホームベースから、一塁、二塁、三塁とむかう向きにいえば、O型は、A型より上流にあり、A型はAB型より上流にあり、AB型は、B型より上流にあり、B型は、O型より上流にある。このように、すべての血液型が、自分にたいして、上流と下流をもつ。
上流の血液型の人間にたいしては、人はわけもなく尊敬してしまう傾向をもち、下流の人にたいしては、かわいく思う傾向をもつ。
尊敬するということは、逆にいえば、うるさく思う、ということでもあり、かわいく思うというのは、バカにしてしまう、ということでもある。
だから夫婦が、亭主が上流であれば、亭主関白だし、奥さんが上流であれば、カカア天下であるということになる。ときどき例えばA型の人が、自分のまわりに、少ないはずのAB型を、知らないうちにやけにたくさん、集めていたりする場合があるが、これはそのA型の人が、多少なりとも親分肌で、自分がかわいく思える人といっしょにいるのが、心休まるからであると解釈できる。
4つの血液型のうち、チーム内に3つしかない場合、例えばA型とAB型とB型しかいなかった場合、誰か一人、この場合はB型、が、最下流になってしまうことになり、その場合そのB型は、ちょっとつらい思いをすることになる。
だからチームがあったら、4つの血液型全部があるほうが、チームは円滑にまわる。
また血液型全部があると、すべての人にとって上流下流がいて、その上流下流の人たちは、性格の合わないトイメンの人と自分とを、うまく仲介してくれることになるので、トイメンにある者どうしが対立してしまう、ということも少なくなる。
とまあ、以上が、僕の血液型理論です。
だからどうしたということもなく、この理論の正しさを主張するつもりもなく、ただ僕はこういう理論をもっている、というだけの話なのですが、飲んでる席でのネタにでもしてもらえましたら、幸いでございます。