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2010-09-20

橋東詰町 「新福菜館 三条店」

新福菜館、本店は京都駅のすぐ近くにあるが、この三条店は、家からわりかし近くにある。ネットのクチコミを見ると、本店よりうまいと書いてあるのもあるのだが、まあそれは別としても、本店は店がせまくて、しかも行列するから満員で、小さくなって食べないといけないのだが、こちらはカウンター席も多く、広々としていて、すこしゆっくりビールを飲んだりするにはいいな。
まずビールと餃子をたのんで、それが終わったらラーメンを食べるのだが、この餃子、しっかりした皮がぱりっと焼きあがって、中身はトロトロ。ずいぶんいろんなラーメン店で餃子を食べてきたが、その中でもこれは、かなりうまい。
そしてラーメン、これはほんとにうまかった。僕はいつも星を付けていて、5つ星も惜しげもなく出すほうで、食べているときは4つ星と思っても、このブログを書いているうちに、自分でこんな意味もあったのかと見つけて、5つ星にしたりすることも多いのだが、このラーメンは、文句なしの5つ星。僕にとって、最もうまいラーメンの一つ、京都で今まで食べたラーメンの中では、市場にある「石田食堂」と双璧だな。
スープの色、新福菜館は黒いわけだが、味は澄んでいて、雑味はまったくない。黒いのは濃口醤油がたくさん入っているからだが、同時にみりんやなにかの甘みがかなり強く入っていて、煮付けをするときの汁にも近い、甘辛い味になっている。
僕は今日このラーメンを食べて、京都のラーメンがなぜこういう甘辛い味なのか、自分としてははっきりわかったように思った。新福菜館の創業は1938年だそうで、これはまだ戦争前、全国でも最古の部類に属するのじゃないかと思うが、当時の状況はよくわからないが、たぶんまだラーメンというものも、それほど一般的じゃない、どちらかといえば新しい食べ物だっただろう。
まず中国で食べられている汁そばに近いものが、日本に入ってきたのだろうが、これはたぶん、塩味にニンニクとショウガをきかせるか、または醤油味に、八角などの香料をきかせるか、という感じのものだったろう。中国の汁そばの味って、大きくいうとこの2種類だよな。
ところがこのニンニクと八角、70年前の日本人には、なかなか受け入れられなかっただろうと思うよな。八角は今でも、日本の料理にはほとんど使われないし。なので中国の汁そばそのものではなく、日本人の口に合うようなものを、新たに考えださなければいけないということになる。
日本伝統のスープというものは二種類あって、一つは魚介だしに薄口醤油で味をつけた、薄い味、それからもう一つ、魚や肉を煮炊きするときには、濃口醤油にみりんと砂糖をたっぷり入れた、濃い味。ラーメンはだしは肉でとるから、それじゃ、肉を煮るときと同じ味付けにしてみようということで、この濃い味のスープができた。そういうことなのじゃないかと、今日思ったというわけなのだ。
そういう意味ではこの濃い味のスープは、まさに京都らしい、純日本風の味付けと言えるよな。
それじゃこういう味付けが、なぜいま京都以外では、あまり残っていないのかといえば、理由は二つあるだろうと想像できて、一つは京都以外の場所では、戦災によって、戦前からつづいているラーメン屋がなくなってしまったこと。戦前からのラーメン屋、大きな空襲のなかった京都だからこそ、残れたと思えるよな。それからもう一つは、戦後になって、日本人がニンニクを、それほど嫌がらなくなって、ニンニクを使えるとなると、甘みをおさえてもコクのある味が出せるようになり、それが戦後のラーメンの主流になっていったということ。ほんとのところはどうだか、わからないが。
石田食堂はそれとはまったく別に、市場の店ならでは、魚介だしを使うということで、薄い味の和風スープの道を歩んだということだよな。
ということで、話がえらく脱線してしまったが、まだ新福菜館三条店の話の途中だったのだ。
言いたかったのは、上のようなことを色々考えさせるだけの、含蓄のふかい、上等なスープだったということだ。
しかしスープだけではない。麺がまたすごくて、中くらいの太さのモソモソしたタイプの麺を、歯ごたえがありながら、ネチネチはしないという、絶妙なゆで加減で出してくる。僕はカウンター席の手前、店主が麺をゆでたりスープを調整したりする目の前に座ったので、店主の作業をよく見ることができたのだが、麺をゆでるのに、2度も3度も、指でつまんで、かたさを確認していた。つまむと指が熱いのだろう、それを冷やす水まで、ボールに入れて脇におかれていた。
あと、すごいと思ったのは、チャーシュー。あれはどこの部分の肉なのだろう、バラ肉かとは思うのだが、脂身と赤身が段々に重なっているものではなく、2センチくらいの脂身の層と、その下は全部赤身になっている肉を使っていて、それが脂身はぷりぷり、赤身は歯ごたえがあるように煮られている。味もしっかりしみて、なんともうまい。
店主は50代くらいかな、4人の若い男女を、店員だか、アルバイトだか、として使っているのだが、若い店員は、いろいろヘマもするだろうに、イライラするような様子はこれっぽっちも見せずに、時々みじかく指示をしながら、自分の仕事を黙々とこなしていく。いい感じだったな。
ビールは中瓶450円、餃子250円、中華そば(並)600円。
新福菜館 三条店 (ラーメン / 二条城前、大宮、烏丸御池)
★★★★★ 5.0