まず向かったのは、「すずめ」。
お好み焼きで有名な広島だが、じつはラーメンもおいしい。
同じ広島県内だと、尾道ラーメンが有名だが、僕は広島市内のラーメンのほうが好きだ。
醤油豚骨に昆布とかつお節がかくし味として入っているという独特なもので、終戦後に「沖稔」という人によって編み出されたのが源流だといわれている。
この「すずめ」は沖氏の経営していた食堂の従業員が始めた店で、広島市では「陽気」とならんで老舗の一つ。
陽気もおいしいのだが、僕はすずめのほうがうまいと思う。
僕が広島市で一番好きなラーメン店がこの店だ。
たしかにこのラーメン、特徴がないといえばない、普通といえば普通のラーメンなのだが、僕はこのラーメン、努力が足りない結果として特徴がないということではなく、特徴などというものは不要であるという明確な考えのもと、それが苦労して消されたものであると想像する。
味に余分なところがなく、かといって足りないところもない。
「ああたしかに僕は、こういうラーメンが食べたかったのだよな」と、食べてみて思う。
そういう味なのだ。
ラーメンに限らず、広島の老舗の店では、そういう味の食べ物を出すところが多い。
そうやって自分を虚しくし、人に寄り添っていくスタンス、どこにでもあるというものでは決してなく、広島の地域性を示すものじゃないかと僕は思うのだが、ほんとにいいな、好きだなと思うところだ。
食べログ 「すずめ」