昨日のおっさんひとり飯は・・・。
塩を入れない豆アジの南蛮漬けフレッシュトマト入り。
仕事を終え、京都四条大宮のバー「スピナーズ」へ行くと、
カウンターに桐島かれん似の女性がいた。
以前はスピナーズでよく一緒になった桐島かれん似の女性だが、
最近はすれ違いで、顔を合わせるのは久しぶりだった。
「こっちに座っていっしょに話そ。」
ぼくは桐島かれんの隣に座り、
生ビールを注文した。
「彼女さんとはどうなの?」
桐島かれんは、彼女とぼくが出会ったころからスピナーズに居合わせ、
事情を詳しく知っている。
ぼくは彼女が、用事で東京へ帰っていることを説明した。
「会えないからって、浮気しちゃダメよ。」
「分かってますよ。
ぼくは真面目にやってるよな、コウイチ君。」
ぼくは一緒に話を聞いていた、バーテンのコウイチ君に話を振った。
「いや、分かりませんよ。
ぼくは高野さんがスピナーズ以外の場所で、
何をしているかまでは知りませんからね・・・」
桐島かれんとの会話は、やがて料理の話になった。
桐島かれんから料理についての話を聞くと、
「さすが京都の人らしく、料理の仕方が繊細だ」
と、ぼくはいつも思う。
「今日は豆アジを買ったので、南蛮漬けにしようと思うんですが、
桐島さんは南蛮漬け、どういう風に作りますか?」
桐島かれんは、南蛮漬けの作り方を説明する。
「豆アジのエラとワタを取って、片栗粉をふって・・・」
(塩コショウはしないのか?)
ぼくは不思議になって聞いてみた。
「私、南蛮漬けには、塩は使わないのよ。
漬け汁にも、塩や醤油は入れないよ・・・」
(塩をまったく使わないとは、
さすが桐島かれんらしいこだわりだ・・・)
ぼくは感心し、どんな味がするのか、早速ためしてみることにした。
豆アジは、指でエラとワタを取る。
洗って水気をふき取り、片栗粉をまぶす。
酢に味を見ながら砂糖を溶かし、ゴマ油と輪切り唐辛子少々を入れる。
ここに玉ねぎとピーマン、セロリ、そしてトマトのうす切りをひたしておく。
トマトはやはりスピナーズで、松下奈緒似の女性からもらったので、
南蛮漬けには普通は入れないと思ったが、せっかくだからと入れてみた。
フライパンにサラダ油を1センチ高さくらいに入れて、弱めの火にかけ、
豆アジを途中で表裏を返して、じっくりと揚げる。
じっくり揚げると、骨までやわらかくなる。
揚げた豆アジの油を切り、野菜をひたしておいた甘酢に漬ける。
10分ほど漬ければとりあえず食べられるようになるが、
2~3日でも、漬ければ漬けるだけやわらかくなる。
たしかに塩を入れなくても、酢の酸味があるから、
味は足りないところがない。
むしろ塩を入れないほうが、やさしく、すっきりとした味になる。
トマトも、入れたのは大正解だとぼくは思った。
あとは梅干しととろろ昆布のにゅうめん。
お椀にゆでて水で洗い、熱湯で温めたそうめんと、
削りぶし、とろろ昆布、梅干し、青ねぎを入れ、
熱湯を注いでうすくち醤油で味をつける。
みょうがと大葉の冷奴。
おろしショウガと削りぶし、ポン酢醤油。
農家のおばさんから買った、赤カブのぬか漬け。
スピナーズで桐島かれんと飲んでいたら、
松下奈緒似の女性が来て、
ぼくの、桐島かれんとは反対側の隣りに座った。
桐島かれんとの料理の話はひとしきり終わり、
話題は7月6日三条会商店街七夕祭りでの、ぼくの演奏の話になった。
ぼくは当日の衣装について、
桐島かれんと松下奈緒に相談してみた。
「加トちゃん風の、ハゲヅラにちょびヒゲ、
腹巻にサルマタでやろうと思うんですが・・・」
聞いた途端に、桐島かれんと松下奈緒は、嫌そうな顔をした。
「それ絶対、ドン引きされるよ・・・」
七夕祭りで一番多いのは、桐島かれんや松下奈緒と同世代、
30代後半の家族連れのはずだ。
小さな子供は加トちゃんなど知らないし、
お母さんも、加トちゃんの衣装をいいと思うとは思えない・・・。
「私、高野さんがドン引きされて、
一人ぼっちになっているのを見たくない・・・」
桐島かれんは、憐れむような顔でぼくを見る。
変に衣装などに凝るよりは、
ぼくがいつも着ているような、
自然な服装でやったほうがいいと言う。
「こういうことは、女性が言うのがまちがいないね。」
加トちゃんの衣装はやめることにするよ。