2012-03-04
一人暮らしが買わない方がいい調理器具。
「ハマグリの潮汁」「イカと里芋の煮物」
入学や転勤などで、一人暮らしをこれから始める人も、少なくないだろう。
当然自炊しようと意気込んで、調理器具なども色々そろえることになる。
初めて親元を離れるなどということになれば、親があれやこれやと気を遣い、見繕ってくれることにもなるんだろう。
でも調理器具は、けっこうかさばるものもあるから、下手に買い込んでしまうと、ただでさえも狭いワンルームマンションのキッチンが、身動きが取れないことになってしまうこともある。
親はよかれと思い、必要な調理器具を選んでくれるわけなのだが、その「必要」は、「家族全員分のご飯を作るために」ということだ。
しかし主婦が家族の食事を作るのと、一人暮らしで自分一人のための食事を作ることでは、根本的にちがうところがある。
4人とか5人分の食事を作るのならば、かけてもおかしくない手間が、一人分の食事を作るには、馬鹿らしいことも少なくない。
だから調理器具は、いきなり色々そろえてしまうのでなく、まず最小限のものだけを買い、どうしても必要だということになってから、増やしていくようにしたほうがいい。
ふつう絶対必要だと思われていながら、意外に必要ではないものは色々ある。
たとえば、「ザルとボウル」。
まずボウルは、まちがいなく必要ない。
ラーメンやうどんのどんぶり、それに鍋などで代用できる。
調理器具は、もしほかのもので代用できるのなら、買わないほうがいい。
ボウルなどあると、狭い戸棚の場所を大きくふさぐことになり、ほんとうに邪魔くさい。
ザルも、必要かどうか、よくよく考えたほうがいい。
ザルがどうしても必要になるのは、そうめんを茹でたあと水にさらすときと、だしを濾すときだけだ。
それ以外のときは、何とか工夫すれば、ザルなしで対応できる。
ザルも大きいし、洗うのも意外に面倒だから、もしそれほどそうめんも食べないし、だしも濾さないのであれば、ない方がいい。
一人暮らしをするのなら、「鍋料理」がラクだろうと考え、土鍋を買おうとする人もいるだろう。
しかし土鍋は、まず必要ない。
鍋はフライパンでやれば十分だ。
大きくて重く、しかも扱いがめんどうな土鍋は、よっぽど毎日のように鍋をするようになってから、買うようにしても遅くない。
しかし調理器具のうち、一人暮らしに最も必要ないものは、「炊飯器」だと思う。
炊飯器を買ってしまったために、料理をしなくなるということも、あるのではないかと思うくらいだ。
まず炊飯器は、邪魔くさいことはなはだしい。
ワンルームのキッチンには、まずまちがいなく置く場所がなく、リビングの隅にでも置くことになるはずだ。
洗うのも面倒くさい。
炊飯器から内釜と中ぶたを外し、さらに中ぶたのパッキンを外すことを考えただけで、気が遠くなりそうだ。
しかし何より大きいのは、炊飯器があると、どうしても「ご飯」を中心とした献立を考えることになることだ。
このことが、じつは一人暮らしが料理をしなくなる、諸悪の根源ではないかと思えるところがある。
ご飯を中心とした献立を考えると、どうしたって「1汁3菜」、汁物に、おかずが3品はないと、寂しい感じがしてしまう。
1汁3菜を毎日作るのは、けっこう大変なのはまちがいない。
これをご飯でなく、「うどん」にしたら、献立は非常に簡単になる。
うどんは、肉でも野菜でもいっしょに煮込んでしまえば出来てしまうから、鍋ひとつで作ることができる。
うどんすきや鍋焼きうどんにすれば、豪華なごちそうの雰囲気さえ漂ってくる。
うどんは、スーパーで売っている冷凍うどんを買えば、下手なうどん屋よりよっぽどおいしい。
だからまず、ほんとうに家でご飯を炊かなければならないのか、うどんではダメなのか、よくよく考えてみる必要があるだろう。
ご飯を食べるのは、ランチの定食にすることにしたって悪くない。
どうしても家でご飯が炊きたくなったら、小さな片手鍋があれば、それで十分おいしいご飯が炊ける。
特に夜、酒を飲む人ならば、炊飯器はまずまちがいなく必要ないと、太鼓判を押したいところだ。
ちなみに、電子レンジは、言うまでもなく必要ない。
ひな祭りには、ハマグリの吸い物と寿司を食べるものだそうだ。
理由はいろいろあるらしいが、ハマグリの吸い物と寿司といえば、べつにひな祭りに限ったことでなく、日本の代表的なごちそうの一つだろう。
ハマグリは、縄文時代から食べられてきているそうだが、たしかに味といい、だしといい、濃厚なうま味がありながら、クセがなく上品で、まさに日本人の好みに合っている。
最近では水質汚染のため、漁獲量が激減しているのは残念なことだ。
ハマグリの一番おいしい食べ方は、やはり潮汁だろう。
塩水に1時間ほどつけ、砂を吐き出させたハマグリを、昆布だしにたっぷりの酒をふり入れた汁で煮る。
貝が開いたらアクを取り、塩とうすくち醤油で味付けすれば出来あがり。
好みでシメジなどを入れたり、三つ葉を浮かべたりしてもいい。
ハマグリは、中国産なら安いし、潮汁も簡単だから、一人暮らしにもうれしいところだ。
アサリやシジミなども、潮汁の作り方はまったくおなじ。
あとはイカと里芋の煮物。
京都には「小芋」と呼ばれる、里芋の小さなのが売っていて、たわしでこするだけで皮がきれいにむけてしまう。
10分ほど下茹でして、イカと一緒に5分ほど炊く。
しばらく煮汁につけたままにして、味をしみさせる。
ピーマンの茹でたの。
ピーマンの食べ方としては、まちがいなくこれがいちばん簡単だ。
細く切ったピーマンをサッと塩ゆでし、水に取らずにそのまま冷やす。
かつお節をかけ、ポン酢で食べる。
潮汁は、翌日のうどんにもなる。