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2012-03-31

旬のハマグリを満喫するならこれ。
「ハマグリの湯豆腐」




今の時期は、アサリだけではなく、ハマグリも旬に入っているんですね。

スーパーなどで売ってるハマグリは中国産なので、中国のハマグリが日本とおなじ時期に旬をむかえるのかどうか、確かなことはわかりませんが、まあでも中国は、日本からはそう遠くないのだから、べつにそう違わないと思ってもいいのでしょう。

ハマグリは縄文時代から食べられていたそうで、「貝塚」の貝はハマグリなんだそうです。

実際ハマグリのだしは、上品な、クセのない味で、だしの味を尊ぶ日本人にとっては、鯛とならんで、まさに王者といえる存在でしょう。

ただハマグリは、水質の汚染に弱く、現在日本では、漁獲が激減しているとのこと。

文明の進歩によって、こうしておいしいものが1つずつ姿を消していくのは、残念なことです。



ハマグリを食べようと思ったら、やはりシンプルな調理法が、一番おいしいのじゃないでしょうか。

潮汁とか、いいですよね。

網で焼いて、醤油をたらしただけのも、またおいしい。

ぬたなんかもいいですよね。

あとはやはり、ハマグリの湯豆腐。

ハマグリのだしが、豆腐にたっぷりとしみ込んだのは、もうたまりません。



ハマグリの湯豆腐は、池波正太郎「そうざい料理帖」にも出てきます。

池波は、ハマグリをむき身にして、うすく切った大根といっしょに豆腐を煮、醤油で食べるんですね。

大根といっしょに豆腐を煮ると、豆腐が白く、ふっくらと煮えるのだそうです。

醤油で食べるというのも、ストイックでかっこいいですよね。



湯豆腐といえば、やはり京都が本場でしょう。

京都の湯豆腐屋は、昆布だしで豆腐だけを煮て、濃いだし汁に青ねぎなどの薬味をいれて食べさせます。

でも先日、祇園にある食堂で湯豆腐を食べたときには、豆腐だけじゃなく青ねぎと春菊、葛きりが入っていて、だし汁で煮られ、青ねぎをきざみ込んだポン酢で食べるようになっていました。

これもまた、家庭的でよかったです。



昨日はハマグリの湯豆腐、どうやって食べようか色々考えた結果、殻のままのハマグリと春菊をいれ、ポン酢で食べることにしました。

池波正太郎が、ハマグリをむき身にするのは、食べるのを楽にするという意味合いかと思うんですが、貝は殻ごと入っていたほうが豪華で派手だし、作るのも楽ですね。

何を食べるかを考えるのは、それなりの時間がかかるし、なかなか思い浮かばないときはイライラしますが、やはりこれこそ、料理の醍醐味だといえるのではないでしょうか。

池波正太郎も、毎日かなりの時間をかけ、その日に食べるものを考えていたと書いています。



湯豆腐は、どうやって作るかが決まってさえしまえば、作るのは非常に簡単。

ハマグリは塩水に1~2時間つけ、砂出しをしておきます。

塩水は水カップ1に対して、塩小さじ1がちょうどです。

海水とおなじ3%の塩水にするのですが、塩小さじ1は6gなので、200ccの水に対して、ちょうど3%ということになりますね。

でももちろん、そんなの適当でかまいません。



ハマグリは砂出ししたら、水でよく洗います。

殻の表面のヌルヌルしたのは、臭みの原因になるので、指でこすってていねいに落とします。



鍋に昆布をしき、豆腐とハマグリをいれ、豆腐がかぶるまで水を張り、酒を4分の1カップほどいれる。

豆腐は絹ごしでも木綿ごしでも、お好み次第ですね。

弱めの中火にかけ、鍋を煮立たせないようにしながら温める。

煮立ててしまうと、豆腐にスが入るんですね。

ハマグリからアクが出てきたら、とり除きながらしばらく煮る。

ハマグリの口が全部ひらいたら、春菊を入れて火を止めます。



これはですねえ、死にますよ。

ぷっくらとしたハマグリと、ハマグリのだしがしみにしみた豆腐。

春菊のアクセントも絶妙です。

「日本人に生まれてよかった」とつくづく思うことは、まちがいありません。



タレは、ポン酢に青ねぎをきざみ込む。

ポン酢は、市販のを使ってもかまいませんが、市販のポン酢は、ちょっとしたやつは値段も高いし、なかなか好みの味のが見つからないんですよね。

ですから自分で作ったほうが、まちがいのない味になります。

醤油と柑橘系のしぼり汁を同量程度に混ぜ、みりんを少したらします。

柑橘系のしぼり汁は、「ポッカレモン100」を使っていますが、それでも市販のポン酢よりおいしいです。



あとは前々日の肉豆腐とスグキで、日本酒を2合半。

肉豆腐は、湯豆腐とちょっとかぶってしまいましたが、仕方ありません。

前日の残り物を食べるときにも、下手に電子レンジで温めたりするのでなく、常温で食べたほうがおいしいですよね。

日本酒も、もう暖かいので常温です。



ハマグリのだしは、タレを割って飲んでもいいですが、残しておいて、翌日うどんを煮ても、大変おいしいです。