今の時期は、アサリだけではなく、ハマグリも旬に入っているんですね。
スーパーなどで売ってるハマグリは中国産なので、中国のハマグリが日本とおなじ時期に旬をむかえるのかどうか、確かなことはわかりませんが、まあでも中国は、日本からはそう遠くないのだから、べつにそう違わないと思ってもいいのでしょう。
ハマグリは縄文時代から食べられていたそうで、「貝塚」の貝はハマグリなんだそうです。
実際ハマグリのだしは、上品な、クセのない味で、だしの味を尊ぶ日本人にとっては、鯛とならんで、まさに王者といえる存在でしょう。
ただハマグリは、水質の汚染に弱く、現在日本では、漁獲が激減しているとのこと。
文明の進歩によって、こうしておいしいものが1つずつ姿を消していくのは、残念なことです。
ハマグリを食べようと思ったら、やはりシンプルな調理法が、一番おいしいのじゃないでしょうか。
潮汁とか、いいですよね。
網で焼いて、醤油をたらしただけのも、またおいしい。
ぬたなんかもいいですよね。
あとはやはり、ハマグリの湯豆腐。
ハマグリのだしが、豆腐にたっぷりとしみ込んだのは、もうたまりません。
ハマグリの湯豆腐は、池波正太郎「そうざい料理帖」にも出てきます。
池波は、ハマグリをむき身にして、うすく切った大根といっしょに豆腐を煮、醤油で食べるんですね。
大根といっしょに豆腐を煮ると、豆腐が白く、ふっくらと煮えるのだそうです。
醤油で食べるというのも、ストイックでかっこいいですよね。
湯豆腐といえば、やはり京都が本場でしょう。
京都の湯豆腐屋は、昆布だしで豆腐だけを煮て、濃いだし汁に青ねぎなどの薬味をいれて食べさせます。
でも先日、祇園にある食堂で湯豆腐を食べたときには、豆腐だけじゃなく青ねぎと春菊、葛きりが入っていて、だし汁で煮られ、青ねぎをきざみ込んだポン酢で食べるようになっていました。
これもまた、家庭的でよかったです。
昨日はハマグリの湯豆腐、どうやって食べようか色々考えた結果、殻のままのハマグリと春菊をいれ、ポン酢で食べることにしました。
池波正太郎が、ハマグリをむき身にするのは、食べるのを楽にするという意味合いかと思うんですが、貝は殻ごと入っていたほうが豪華で派手だし、作るのも楽ですね。
何を食べるかを考えるのは、それなりの時間がかかるし、なかなか思い浮かばないときはイライラしますが、やはりこれこそ、料理の醍醐味だといえるのではないでしょうか。
池波正太郎も、毎日かなりの時間をかけ、その日に食べるものを考えていたと書いています。
湯豆腐は、どうやって作るかが決まってさえしまえば、作るのは非常に簡単。
塩水は水カップ1に対して、塩小さじ1がちょうどです。
海水とおなじ3%の塩水にするのですが、塩小さじ1は6gなので、200ccの水に対して、ちょうど3%ということになりますね。
でももちろん、そんなの適当でかまいません。
ハマグリは砂出ししたら、水でよく洗います。
殻の表面のヌルヌルしたのは、臭みの原因になるので、指でこすってていねいに落とします。
豆腐は絹ごしでも木綿ごしでも、お好み次第ですね。
弱めの中火にかけ、鍋を煮立たせないようにしながら温める。
煮立ててしまうと、豆腐にスが入るんですね。
ハマグリからアクが出てきたら、とり除きながらしばらく煮る。
ハマグリの口が全部ひらいたら、春菊を入れて火を止めます。
ぷっくらとしたハマグリと、ハマグリのだしがしみにしみた豆腐。
春菊のアクセントも絶妙です。
「日本人に生まれてよかった」とつくづく思うことは、まちがいありません。
ポン酢は、市販のを使ってもかまいませんが、市販のポン酢は、ちょっとしたやつは値段も高いし、なかなか好みの味のが見つからないんですよね。
ですから自分で作ったほうが、まちがいのない味になります。
醤油と柑橘系のしぼり汁を同量程度に混ぜ、みりんを少したらします。
柑橘系のしぼり汁は、「ポッカレモン100」を使っていますが、それでも市販のポン酢よりおいしいです。
肉豆腐は、湯豆腐とちょっとかぶってしまいましたが、仕方ありません。
前日の残り物を食べるときにも、下手に電子レンジで温めたりするのでなく、常温で食べたほうがおいしいですよね。
日本酒も、もう暖かいので常温です。