自炊はするけど、魚料理は苦手という人、少なくないんじゃないでしょうか。
たしかに1つには、魚料理は肉にくらべてちょっと手がかかるから、面倒くさいというのはありますよね。
魚のさばき方など、料理の本を見てもよくわからないし、それ以前に料理の本を見ること自体が邪魔くさいということも、あるんじゃないかと思います。
それで魚料理をするにしても、つい塩焼きばかりになってしまいがちなんですよね。
たしかに塩焼きはおいしくて、魚はまず、塩焼きしていれば、まちがいないわけですけれど、それ以外の料理法にも挑戦したいという気が、本当はないわけではないでしょう。
でもそれが、なかなかうまくいかないというのは、
「買い物へ行くのがスーパーだからだ」
ということも、原因として、少なからずあるのではないかと思うんですよね。
魚の流通は、肉とは根本的に異なるところがあると思うんです。
「安定供給ができない」んですよね。
肉だったら、特売の目玉商品などは別として、年がら年中、おなじものが置いてあるわけでしょう。
ところが魚は、そういうわけにはいかない。
養殖物は別として、まず旬があるし、さらに旬のあいだでも、天候などに左右されて獲れたり獲れなかったり、供給に非常なばらつきがある。
だから安定供給を旨とするスーパーであっても、鮮魚のコーナーに置いてあるものは、日によってけっこう違ってきてしまうというわけなんですよね。
そうすると、ある日スーパーへ行ってみると、自分がどうやって料理したらわからない魚が、売り場に並んでいることになる。
売り場へ来てから、料理の本を広げるわけにもいかないから、次の日にしようと思って、家で料理本を見て翌日スーパーへ行くと、昨日はあった魚が、翌日にはなかったりする。
また翌日になると、おなじ魚でももう鮮度が落ちていて、食べる気にならないこともあるでしょう。
そうこうしているうちに、その魚を食べるのをあきらめてしまい、魚の料理法を学ぶ機会を逸することになってしまうわけなんですよね。
ですから魚の料理法を学びたいと思ったら、ほんとうは、スーパーでなく、魚屋へ買い物に行くのが一番なんです。
魚屋だったら、すぐ目の前に店員がいますから、どうやって料理したらいいかわからない魚の料理法を、その場ですぐ聞くことができる。
魚のさばき方がわからなければ、まずはお店の人にやってもらうことにして、それをそばで眺めていれば、何より勉強になる。
魚屋も、自分たち個人商店がスーパーに対してもっているアドバンテージが、お客さんに対するていねいな対応であることはわかっているから、何を聞いても嫌がらず、ほんとに親切に教えてくれます。
ただこの頃では、住んでいる場所の近くに魚屋がないということも、少なくないでしょう。
新興の住宅地などでは、まず個人商店の魚屋など、見当たらないですよね。
そういう場合には、べつにスーパーだっていいんです。
時間が遅くなってしまうと、ちょっと難しいかもしれませんが、適当な時間なら、鮮魚コーナーの担当のお兄ちゃんなりおいちゃんなりがいるでしょう。
バックヤードに顔でも出して、声をかければ担当の人が出てきてくれますから、その人に聞いてみれば、とても親切に教えてくれます。
一度イカのさばき方がわからなかったので、スーパーの鮮魚コーナーのお兄ちゃんに、「さばくところを見せてくれないか」と言ったことがあります。
そしたら「バックヤードにはお客さんは入れてはいけないことになっている」とのことだったんですが、わざわざワゴンにまな板をのせて売り場まで出てきてくれて、そこでイカをさばくのを実演してくれました。
スーパーの鮮魚コーナーの人は、お客さんからものを尋ねられることが、少ないのではないでしょうか。
だから声をかけると、とても嬉しそうにしてくれるように思います。
現代では、料理を学ぶというとどうしても、家で料理の本を見て、レシピに書いてある材料をスーパーで買い物して、というやり方をすることになってしまいがちでしょう。
このやり方は、アメリカから輸入されたのじゃないかと思うんですが、それはアメリカが、肉を中心に食べるから、成り立つことなのじゃないかと思うんですよね。
でも魚料理をするには、それだけじゃうまくいかない。
やはりどうしても、人に聞かないといけないということなのだと思うんです。
昨日はスーパーで、たっぷりの紅鮭のアラが、200円という破格の値段で置いてありました。
紅鮭のアラは、粕汁にすると最高です。
ほんとうは、紅鮭は「ひず」と呼ばれる鼻の部分の軟骨がおいしいんですが、それは別のところに取られてしまうのでしょう、このパックには入っていませんでした。
粕汁を作るのは、非常に簡単です。
紅鮭の味がありますから、昆布だしだけでも悪くはないんですが、やはり削りぶしも入れてだしを取ったほうがおいしいです。
だしを取るには、まず鍋に水を張り、昆布1枚と削りぶしひとつかみを入れて、中火にかける。
沸騰したら弱火にして、アクを取りながら3分くらい、コトコト煮る。
あとはこれを、キッチンペーパーをザルにしいて、こし取れば出来あがり。
だしを取るのは、慣れるとべつに面倒でもないし、ほんだしなどの化学調味料を使うのにくらべて、料理の味が格段によくなります。
削りぶしは、かつお節より、サバだの煮干しだのが入っている混合ぶしのほうが、安いし、なにかと使い出があると思います。
紅鮭は塩でシメてありますから、それほど臭みも出ないでしょうけれど、やはりアラを使うときには、湯通しは基本になるのじゃないかと思います。
べつに塩気があるわけでもないので、多めに使っても問題ありません。
「ちょっと多すぎるかな」というくらい、入れるようにすると、コクが出ておいしいと思います。
小さくちぎって、だしでふやかしておくようにします。
ニンジンと大根は、拍子木に四角く切るようにします。
これは京都の魚屋のおばちゃんから教えてもらったやり方ですが、昨日はそれを忘れて、油揚げは入れず、ニンジンはイチョウ切り、大根は半月切りにしました。
でもだからといって、問題があるわけではありません。
だしにこれらの具と、紅鮭を入れ、アクを取ってちょっと煮ます。
味付けですが、紅鮭にかなりの塩気がありますから、何も入れなくてだいじょうぶだと思います。
紅鮭の塩気は、煮ているあいだはもちろん、火を止めてから、さらには器に盛ってからも、煮汁に出ていくことになりますから、作っている最中に味を見て、それで醤油などを足してしまうと、塩辛くなりすぎることになります。
食べながら、よっぽど塩気が足りなければ、自分で醤油を足してもらうようにするのがいいのではないでしょうか。
京都風に正式にやろうとすれば、セリをのせるわけなんですが、「べつに青ねぎでいい」という許可を、魚屋のおばちゃんからもらってあります。
酒粕のほっくりとしたコクに、紅鮭の味が、最高に合います。
魚屋のおばちゃんも、「粕汁は豚肉で作る人もいるけれど、やはり紅鮭だ」と断言していました。
昨日は、あとはピーマン。
ピーマンって、どうやって食べたらいいか、よくわからない人も少なくないのじゃないでしょうか。
思い付く料理といえば、まず青椒肉絲。
またはピーマン肉詰め。
あとはサラダに入れるとか。
和風の簡単な料理が、意外に思い付かないんですよね。
でもピーマンは、いちばん簡単に食べようと思ったら、さっと塩ゆでして、かつお節と醤油をかけて食べるのが一番です。
ピーマンとしょうゆは、大変よく合うものなんですよね。
そうでなければ、ジャコやかつお節といっしょにクタクタに煮てしまうのも、またおいしいです。
そこにまず、ジャコかかつお節。
これはどちらでもいいですから、適当と思われる量を入れます。
かつお節なら、ピーマン1袋に対して、3g入りとかのパックを1パック分、入れてしまうのでちょうどいいと思います。
あとは酒を大さじ1杯、みりんと醤油をそれぞれ大さじ1~2杯。
強火にかけて、煮立ったら弱火~中火の加減にして、味見をしてみる。
この段階では、まだうす過ぎるわけですが、甘みと塩気のバランスだけを見ておくようにします。
それでそのまま、20分でも30分でも煮て、汁気を煮詰めてしまいます。
時間はかかりますが、手間はかかりません。
ピーマンは、中途半端に火を通すと、苦味が出てくるわけですが、それを通り越すと、苦味が消え、甘酸っぱい味になるんですね。
歯ごたえもやわらかく、桃か何かのフルーツでも食べるような感覚です。
あっさり味付けすれば、酒のツマミに最高ですし、みりんと醤油を少し増やして、こってり目に味付けすれば、ご飯のおかずにもイケると思います。
ようやく、すこし暖かくなってきて、常温の酒がおいしいと思えるようになってきました。
といっても、相変わらず暖房はつけているんですが、冬のあいだは、暖房をつけても、まだ寒かったんですよね。
ところが今は、暖房をつけるとホカホカと暖かくなるので、そうやって暖かい部屋で、すこし冷たい酒を飲むのが、また気分最高という次第です。