僕は東京にいた頃には、まだラーメンには目覚めていなくて、好きだったものは寿司ととんかつ。寿司は東京には、回転寿司でも十分うまいところがあるから、そこに週3回は通い、週1回とんかつを食べるという、そういう生活をしていた。広島へ行ったら、さすが魚がうまいのであって、広島の漁港近くに最高においしくて信じられないほど安い
店があったので、そこへ通い倒して、さらに出張で山陰へ行った時など、魚とはこんなにうまいものかと、改めて実感していたわけだ。
実際山陰で最も感動したのがアジで、居酒屋へ行って刺身を食べたら、カンパチとかハマチみたいな、脂が乗ってコリコリとしたやつがある。何かと聞いたらアジだった。新鮮なアジというものはこんな味がするのかと、そのとき初めて知ったのだ。
京都へ来て、こちらは山に囲まれていて、もともと生魚を食べる習慣がなかったわけだから、寿司や刺身には期待しないようにしようと思いながらも、やはりちょこちょこ、生魚を出す店を探して歩いていたのだが、僕が行くような安い店で、ピンとくるところはあまり見当たらなかった。市場の中や周りの店もひと通り行ってみたが、悪くはないが、それほど良くもない。やはり京都では無理なのかなと思っていたら、見つけたんだな、とうとう。
ブログを通して知り合った人から教えてもらったこの「おくのと」。ここはいい。家からも近いし、魚を食べるなら、僕はもうここに決まりだな。壬生川通松原下ルあたりの住宅地の中に、ぽつんとある。
大将はたぶん60歳くらい、店の名前の通り能登の出身で、東京で修行して、それから京都へ来たのだそうだ。カウンター5、6席に小さな座敷という、こじんまりとした店内。ひとりで飲むにはうってつけだ。
メニューは魚が基本、400円からあり、お造りで1,000円前後。安めの部類だよな。
まずビール。ここはスーパー銭湯「やまとの湯」がすぐ近くにあるので、ここでサウナを満喫してからこちらに来ると、もうこたえられない。
突き出しの、わかめとジャコのポン酢かけ。わかめとジャコがきちんとうまいことは言うまでもないのだが、さらにこのポン酢がうまい。醤油の品のある風味が強めに出ていて、だしも入っている。
山かけ。これはまずマグロがすごい。赤身と中トロの中間くらいの、脂が乗っていながら、きちんと落ち着いた味がするという、一番うまい部分。そこに乗ってる山芋がまた、摺り下ろしてあるのではなく、刺身のつまのように極細に千切りされていて、やわらかさと歯応えを両立している。こういうちょっとしたところで、職人の腕前って解るのだよな。
ここで熱燗。能登の酒がいろいろ置いてあって、これは天狗舞という、甘口でコクがあるタイプ。
そしてにぎり寿司。これは死んだ。まず左奥のマグロ。これは山かけと同じやつ。その右がおこぜ。次は何だか、聞くのを忘れた。そしてイカ。これがコリコリとしていて最高。それにウニと、コハダ。コハダのしめ加減も上々。
この店は京都中央卸売市場からも近いのだが、大将は市場では仕入れはしないのだそうだ。近くに別の、全国からいいものを集めている魚屋があって、そこから仕入れるのだとのこと。それがまず、この店がほかと違うところなのだろうな。
お勘定は、以上で3,200円。ほんとにおすすめ。
おくのと (
割烹・小料理 /
丹波口駅、
四条大宮駅、
大宮駅)
夜総合点
★★★★★ 5.0