とんかつというのは、たぶん豚肉を一番おいしく食べる料理法であると、言ってもいいのじゃないかな。
自分で料理していて思うのだが、豚肉は牛肉や鶏肉と違って、温度を上げすぎると、急激にかたくなり、まずくなるものであると思う。
ところが温度を低くして焼くと、今度は中の肉汁が、ぜんぶ出てきてしまう。
だから豚肉は、ただ焼くというやり方に、イマイチ向かないものがあるのだな、たぶん。
それに対して、衣をつけて揚げるというやり方なら、低温でじっくり火が通り、しかも肉汁も外に出ない、ということなのじゃないかと思う。
肉はやはり、分厚いものの方が、圧倒的においしいわけで、分厚い肉を、中がピンク色に残るくらいの火の通し方をしたとんかつを、1,000円程度の定食で出す店が、東京にはけっこうあるのだが、あれは東京で、とんかつを食べたい人がほんとにたくさんいる場所だから、できることなのだろうな。
だから東京以外の場所で、東京のようなとんかつを食べるということは、ハナからあきらめているわけだけれど、ちょっとでもおいしいとんかつ屋があれば、それを見つけたいという気持ちは、やはりあるわけだ。
もちろん僕は、とんかつを注文。
950円でライスとお新香はついてくるが、味噌汁が欲しければ、プラス100円で頼まないといけない。
なるほど、とんかつにも流儀はいろいろあるが、これは行儀がいいとんかつだな。
肉は7、8ミリ程度のうすいもので、やわらかく火が通って入るのだが、その肉そのもののうまさより、衣だとか、付け合せだとか、そういう周辺のものをあわせた総合力で、アピールするという形だ。
大根おろしに一味がかかったものがのっていて、これに自分で卓上の醤油をかけるようになっている。
キャベツの千切りには、甘めのドレッシングがかけられていて、キュウリとトマトも添えられている。
それに、玉子の入ったポテトサラダ。
衣は甘めで、濃いめの味が付けられていて、全体として、ただのとんかつというより、一段上の洒落た一皿、というものを目指しているという形だな。
こういうのも悪くないが、僕のような、まだ肉をガツガツと食べたい人間よりは、もう少し上の世代向きなのかもな。
落ち着いた、上品な店内で、カウンター5、6席と、テーブル3卓。
BGMにはジャズがかかっていたりする。
ディナーにとんかつ、みたいな、ちょっと洒落た使い方も、できそうな店だ。
とんかつステーキ 岡田 (とんかつ / 円町駅、西大路御池駅)
昼総合点★★★☆☆ 3.0