2010-10-15

おくのと

僕は東京にいた頃には、まだラーメンには目覚めていなくて、好きだったものは寿司ととんかつ。寿司は東京には、回転寿司でも十分うまいところがあるから、そこに週3回は通い、週1回とんかつを食べるという、そういう生活をしていた。広島へ行ったら、さすが魚がうまいのであって、広島の漁港近くに最高においしくて信じられないほど安いがあったので、そこへ通い倒して、さらに出張で山陰へ行った時など、魚とはこんなにうまいものかと、改めて実感していたわけだ。

実際山陰で最も感動したのがアジで、居酒屋へ行って刺身を食べたら、カンパチとかハマチみたいな、脂が乗ってコリコリとしたやつがある。何かと聞いたらアジだった。新鮮なアジというものはこんな味がするのかと、そのとき初めて知ったのだ。

京都へ来て、こちらは山に囲まれていて、もともと生魚を食べる習慣がなかったわけだから、寿司や刺身には期待しないようにしようと思いながらも、やはりちょこちょこ、生魚を出す店を探して歩いていたのだが、僕が行くような安い店で、ピンとくるところはあまり見当たらなかった。市場の中や周りの店もひと通り行ってみたが、悪くはないが、それほど良くもない。やはり京都では無理なのかなと思っていたら、見つけたんだな、とうとう。

ブログを通して知り合った人から教えてもらったこの「おくのと」。ここはいい。家からも近いし、魚を食べるなら、僕はもうここに決まりだな。壬生川通松原下ルあたりの住宅地の中に、ぽつんとある。

大将はたぶん60歳くらい、店の名前の通り能登の出身で、東京で修行して、それから京都へ来たのだそうだ。カウンター5、6席に小さな座敷という、こじんまりとした店内。ひとりで飲むにはうってつけだ。

メニューは魚が基本、400円からあり、お造りで1,000円前後。安めの部類だよな。

まずビール。ここはスーパー銭湯「やまとの湯」がすぐ近くにあるので、ここでサウナを満喫してからこちらに来ると、もうこたえられない。

突き出しの、わかめとジャコのポン酢かけ。わかめとジャコがきちんとうまいことは言うまでもないのだが、さらにこのポン酢がうまい。醤油の品のある風味が強めに出ていて、だしも入っている。

山かけ。これはまずマグロがすごい。赤身と中トロの中間くらいの、脂が乗っていながら、きちんと落ち着いた味がするという、一番うまい部分。そこに乗ってる山芋がまた、摺り下ろしてあるのではなく、刺身のつまのように極細に千切りされていて、やわらかさと歯応えを両立している。こういうちょっとしたところで、職人の腕前って解るのだよな。

ここで熱燗。能登の酒がいろいろ置いてあって、これは天狗舞という、甘口でコクがあるタイプ。

そしてにぎり寿司。これは死んだ。まず左奥のマグロ。これは山かけと同じやつ。その右がおこぜ。次は何だか、聞くのを忘れた。そしてイカ。これがコリコリとしていて最高。それにウニと、コハダ。コハダのしめ加減も上々。

この店は京都中央卸売市場からも近いのだが、大将は市場では仕入れはしないのだそうだ。近くに別の、全国からいいものを集めている魚屋があって、そこから仕入れるのだとのこと。それがまず、この店がほかと違うところなのだろうな。

お勘定は、以上で3,200円。ほんとにおすすめ。


おくのと 割烹・小料理 / 丹波口駅四条大宮駅大宮駅
夜総合点★★★★★ 5.0