奈良公園の中といってもいいような、自然に囲まれた、大変いい場所に、志賀直哉がむかし住んでいた家が保存されていて、そこには大学を卒業して、ぶらぶらしながら作家への道を模索していた、若き小林秀雄も出入りし、世話になっていたのだ。
小林秀雄を師と、勝手にあおぐ僕としては、当然行ってみないといけないわけだ。
志賀直哉自信が設計し、京都から呼び寄せた大工につくらせた、数寄屋風の瀟洒なつくり。
まずは二階へ。
台所や風呂場もふくめ、すべての部屋を見られるようになっているのだが、ここは書斎。
南向きで明るい。
奥の客間の窓からの借景も見事。
一階の茶室。
暗い中、手元だけが明るいという方が集中できた直哉は、もともとこちらを書斎としていたのだが、そのうち二階の南向きの部屋へ移ったのだそうだ。
そして、庭に面したこのサンルームが、高畑サロンと呼ばれ、当時の文化人たちが集い、白樺派文化を花咲かせていった場所なのだ。
ここに当然、小林秀雄もいたのだな。
ここは建物自体も洒落ていて気持ちがいいし、部屋数も多くて、見ごたえがあるので、文学にちょっとでも興味がある人は、観光コースには絶対組み込んだらいいと思う。