「即答するバカ」というタイトルと、鳩山元首相がオバマ大統領に答えた「トラスト・ミー」ということばが、やり玉に上がっていたので、いま世の中の人がものごとに即答する傾向をもつようになっているのはなぜか、みたいな、社会分析とか、精神分析とか、そういう内容の本かと思ったら、まったくそうではなく、著者は元文化放送のフリーアナウンサーで、この本は、ネットに連載したコラム「プロのしゃべりのテクニック」をまとめたもの。
「しゃべりのプロが指南する、会話およびコミュニケーション術」というかんじのハウツー本で、初めの2、3ページを読んだ時点でそれがわかって、それなら買うんじゃなかったと思ったが、せっかくだから最後まで読んでみたのだ。受け答えの具体例から始まって、次第にもう少し奥深い内容になり、最後は「ら抜きことば」、「か取りことば」など、日本語自体の変化についての話で終わる。
「KYと言われても、自分自身で考え、人にかまわず行動することも大事だ」とか、「人は表面的なことばだけでなく、しゃべり方とか、声質とか、動作など、肉体の動きそのものを感じるところから、共感や信頼が生まれる」など、含蓄のあることも書いてある。
またさすが放送界の人だから、芸能人だとか、政治家だとか、誰でも知っている人のことを具体例にあげながら、話をすすめていくので、興味ももてるしわかりやすい。
仕事で人との関わり方について、悩んでいる人とか、かなり参考になる内容が書いてあるのじゃないかと思うし、僕自身も自分をふりかえって、思うところもいくつもあった。★★★☆☆ 3.0
即答するバカ (新潮新書)
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