2011-11-26
いわずと知れた名古屋名物。
「味噌煮込みうどん」
これまで池波正太郎やら檀一雄、向田邦子など、作家のつくる料理に焦点をあててきたのだけれど、これからしばらく、鍋料理をやってみたいと思っている。
季節は冬。まさに鍋がおいしい時だから、「いま鍋を食べずに、いつ食べるんだ」という話だろう。
熱い鍋をつつきながら、一杯やるのは、たまらないわけだが、鍋はもちろん、ご飯にもあう。
一人鍋よし。家族でつついてよし。しかも手軽に出来るというのだから、いうことない。
というわけで、今日は「味噌煮込みうどん」。
味噌煮込みうどんは、いわずと知れた、名古屋名物の筆頭だ。名古屋には、ふつうのうどん屋とは別に、味噌煮込みうどんの専門店もある。
味噌煮込みうどんは、「うどん」なのじゃないかと思うかもしれないが、これは正真正銘、鍋料理。お店に食べにいっても、一人用の小さな土鍋に、グツグツと沸き立ったまま運ばれてくる。
名古屋の家庭では、大きな土鍋で人数分をつくり、それを皆でつつくという。
味噌煮込みうどんを作るのに、やはりどうしても必要となるのは、「豆味噌」だ。
豆味噌は、蒸した大豆に塩だけをくわえ、米や麹など他の材料はいっさい使わず、2年以上のあいだ寝かせることによりつくられる。
大豆しか入っていないから、他の味噌にくらべると甘みが少ないが、その分、圧倒的なうまみがある。
豆味噌のなかでは、「八丁味噌」が、ブランドとして知られていて、八丁味噌のなかでは「カクキュー」がトップブランドだ。
カクキューは、1645年に創業された、老舗の味噌メーカー。いまでも木の樽に、川原の石を積み上げた重しの、昔ながらのやり方で味噌をつくっている。
カクキューの味噌は、京都のスーパーにも売っているが、カクキューでなくても、八丁味噌か、または「赤だし味噌」を、ひとつ家においておくのは悪くない。
味噌汁や煮魚、炒め物など、幅ひろく使える。
味噌煮込みうどんの作り方は、意外なほど簡単。
まずだしを取る。味噌の味が濃いから、だしも昆布だしなどではなく、だしパックなどを使って濃いめのだしを取ったほうが、釣り合いがとれると思う。
味噌を溶きいれる。豆味噌は、煮込んでしまっても大丈夫だ。
ここに甘みをつける。みりんか砂糖を、味をみながら、自分が好みと思われるだけいれる。あまり甘くしすぎないほうがいい。
それから酒を、じょぼじょぼと、適当な量だけいれる。
実はもう、すでにこの時点で、ひっくり返るほどうまい。
あとはここに、材料をいれて煮込めば、出来あがりという寸法だ。
まず絶対に必要なのは、鶏肉。モモ肉のぶつ切りを使用。
味噌煮込みうどんの具の、定番は、長ネギに油揚げ、それからカマボコというあたりだろう。カマボコは、今回は省略。かわりにシイタケ。
ゴボウも、ささがきにして、水にひたしておいたのを入れる。
それからうどん。名古屋の味噌煮込みは、生麺をいっしょに煮込むが、うどんの生麺は、スーパーなどではなかなか手に入らない。冷凍うどんやゆでうどんを使うので、仕方がないだろう。
うどんは2~3分、グツグツと煮込む。
忘れてはいけないのが、生卵。これを最後に、人数分わり落とす。
鍋はあとから火が通るから、ここで卵に、あまり火を入れてしまわず、ほとんど生くらいにしておいたほうがいい。
味噌煮込みうどんの完成。
好みで七味唐辛子や一味唐辛子をふりかける。
うどんがあるから、酒だけでも十分だが、名古屋の人はここに、ご飯とお新香をつけて食べることが多い。
味噌煮込みうどんを食べる際、卵をどうやって取り扱うかが、考えどころのひとつとしてある。
好みでどうにでも、好きにすればよいのだが、味噌煮込みうどんは、そのままでも十分うまい。だからまずは、卵をいれずにしばらく味わい、やおら半熟加減となった卵をまぶし、味を変えるというのがオススメだ。