2011-11-27
韓国式に作ってみる。
「キムチチゲ」
今日はキムチチゲ。
キムチチゲを、日本流の鍋ととらえると、鍋にだしを張り、醤油やコチュジャンで味付けして、肉やら野菜やら豆腐やらの材料のひとつとして、キムチを入れる、ということになると思うのだけれども、韓国で作られるキムチチゲは、それとはまったく趣きがことなる。
日本の伝統的な料理のなかには、キムチチゲと似た料理はないのじゃないかという気がするのだけれど、あえて日本で作られる料理で、近いものをあげれば、「カレー」なのじゃないか。
まあカレーは、日本ではカレールーが売られていて、日本流に、肉や野菜で味をつけて、そこに醤油やみその代わりに、カレールーを入れるということになっているけれど、カレーは元々ヨーロッパでは、玉ネギを長い時間かけて炒め、そこに小麦粉やらカレー粉やらを入れ炒め、スープを注ぎ、「ルー」を作るという、長いプロセスがある。
日本では、醤油だの味噌だの、すでに長い期間を経て熟成された調味料を買ってきて、家庭ではそれを入れるだけ、という形で料理するから、ルーだのソースだのを家庭で作ることはない。
でも日本以外の国の多くでは、日本で醤油や味噌に相当する、調味料の部分を自分で作るところから、料理が始まることが多いだろう。
キムチチゲもそれといっしょで、キムチはキムチチゲにおいて、カレーでいう「玉ねぎ」、味のベースを作るものに相当する。
だからかなりの時間をかけ、キムチを蒸し焼きにし、煮込み、というプロセスがまずあって、その後に、豆腐や野菜などの材料を入れ、それを煮るということになる。
韓国で、最もシンプルにキムチチゲを作ろうとうするばあい、入れるのは、肉とキムチ、豆腐、それに塩だけ。
コチュジャンやらニンニクやらというものは、一切入れない。
キムチの味だけで、味付けしてしまうのが、最もシンプルなキムチチゲなのだ。
実際キムチには、ニンニクやトウガラシはもちろん、アミの塩辛だの何だの、うまみの元が山ほど入っていて、さらにそれが発酵して、うまみが増すようになっているから、韓国の人はキムチだけで、ご飯が何杯でも食べられるという話になる。
キムチチゲを作るときには、やはり何といっても、キムチを選ぶことが重要となる。
近くに韓国食材店でもあれば、そこで買うのが間違いないけれど、最近はスーパーでも、いいのをけっこう売っている。
キムチを選ぶばあい、もちろん日本式にアレンジした、あっさりしたものではなく、きちんと韓国式の、辛いやつを買うことが大事なのは、言うまでもないけれど、「汁」がたくさん入っているのを選ぶこともポイントとなる。
キムチチゲは、キムチの汁で味をつけるといってもいいものだから、これが入っていないと話にならない。
今回使ったキムチは、家の近くの西友で買ったものだけど、西友にもけっこういいのが売っている。
それでこのキムチの量なのだけれど、これで味をつけるというわけだから、多いに越したことはない。
1人前200グラムはほしいところだろう。
そのくらいあると、コチュジャンだのニンニクだのを入れなくても、キムチだけで十分おいしいキムチチゲができる。
ただキムチは、韓国では自分で漬けるから、ほとんどただみたいなものだけど、日本ではけっこう高いから、そうそう豪勢に使うわけにもいかない。
その場合は、コチュジャンなどでうまみを足してキムチチゲを作るのも、仕方がないことにはなる。
それからキムチは、発酵がすすんで、酸っぱくなったもののほうがおいしい。
2~3週間たって、賞味期限もとおに過ぎたやつが、キムチチゲにするには一番うまいのだが、もし新しかったら、まる1日冷蔵庫からだして、常温においておくだけで、かなり発酵がすすむ。
キムチチゲは、まず1時間ほどの時間をかけて、味のベースを作ることになる。それができてしまえば、材料を入れてからは10分くらいで出来あがる。
キムチチゲに入れる肉だけれど、これは豚肉なら、好みでどんなものにしてもよい。
ばら肉みたいに脂の多い部分をつかえば、こってりと仕上がるし、ロースや肩ロースのように、油の少ない部分をつかえば、あっさりと仕上がる。
うす切り肉でもいいし、カレー用とかの角切りでもいよい。
コマ肉ももちろん問題ない。
キムチチゲは、あくまでキムチがメインで、豚肉はキムチの味を引き立てるためにあるものだから、量はキムチより、全然少なくてよい。
1人前100グラムもあれば十分だ。
と言いつつ、僕は200グラム入れる。
まず豚肉を、鍋に平らに敷きつめる。
このとき鍋に、好みでゴマ油をひいてもよい。
バターを入れるという人もいる。
敷きつめた肉の上に、今度はキムチをのせ、汁も全部ぶっかける。
この状態で、10分ほどおく。こうやって、肉に下味をつける。
これは、うす切り肉を使うなら、省略してもかなわないけれど、角切り肉などを使うなら、絶対やったほうがいい。
10分たったら、フタをして、弱めの中火にかける。
そのまま動かさず、蒸し焼きにする。
高温をかけることで、キムチをやわらかくするのと共に、キムチから出た汁で、肉に味をつける効果があるのだと思う。
この蒸し焼きも、10分ほどやる。
10分蒸し焼きしたら、ここに水を入れ、フタをして煮込む。
水の量だが、少なめにすることが大事なのだ。
キムチの量は、限りがあるわけだから、水の量が多すぎると、キムチの味がうすまってしまうことになる。
キムチの質にもよるから、一概にはいえないけれど、キムチが300グラムだったとしたら、水は600ccくらいだと、ちょうどよくおいしくできるんじゃないかと思う。
それより水が多いと、ちょっとうすい感じになってしまうから、コチュジャンなどで味をおぎなうことになる。
でもシャバシャバしたキムチチゲも、日本人好みではないかもしれないけれど、それなりに、しみじみとしたうまさがある。
煮込む時間は、最低30分はほしいところだ。もっと煮込んでもいい。
煮込まれて、とろとろにやわらかくなったキムチが、うまい。
煮込み終わったら、そこで味加減をみて、キムチの量が十分なら、塩だけを加える。
味が物足りないようなら、コチュジャン、醤油、おろしニンニク、などなどで、味を足すようにしてもよい。
野菜を入れていくが、まず最低限必要なのは、木綿豆腐。
木綿豆腐は、水切りしておいてもいいし、韓国で作るのを見ていたら、水切りせずに、豆腐から水がでるのを見越して、塩加減を強くしていた。
あと入れたらいいのは、青唐辛子、シイタケ、しめじなど。
10分ほど煮て、野菜がやわらかくなったら、キムチチゲの出来あがり。
韓国では、鍋をそのまま食卓へだし、家族全員が、直箸、直スプーンで、鍋から直接食べる。
よく韓国ドラマで、インスタントラーメンを鍋から直接食べているのを見かけるけれど、あの感覚だ。
韓国料理には、韓国焼酎ももちろんいいが、日本酒も普通にあう。
韓国にも、日本酒とまったく同じ「清酒」があって、韓国人もよく飲んでいる。
ご飯の上にのせ、汁もたっぷりかけて食べると、またうまい。