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2011-11-18

手軽なのに、うまい。
向田邦子「ピーマンと油揚げ」

向田邦子は、せん切りが「得意技」だった。

運動神経、反射神経とも抜群だった邦子は、集中し、歯ぎしりをかむように口をとじ、いきおいよく切っていく。

包丁ももちろん、自分で砥いだ。

「包丁の峯の下に十円玉を入れ、その角度を利用して砥ぐと間違いなく切れる包丁になる」

と、小説に書いている。



邦子がせん切りの技を生かし、考案した、「ピーマンと油揚げ」。


今回はこれを作ってみた。



ピーマンは縦半分に割り、種をとり出して、熱湯にくぐらせる。

水気を切り、マッチ棒くらいの太さの、縦せん切りにする。



油揚げは、うらおもてを直火でこんがりと焼き、やはりマッチ棒くらいの太さにせん切りする。

せん切りしたら、油を抜くため、熱湯にくぐらせる。



ピーマンと油揚げを、生醤油か、めんつゆ、または醤油にうま味調味料をふり込んだもので和える。




これは、すごい。

ピーマンは、適度な歯ごたえがあり、甘い。

ピーマン特有の青臭みや苦味は、まったくない。

それがせん切りにされているから、食べごたえが、なんとも、いい。



細切りにしたピーマンの料理は、青椒肉絲が知られているが、あれは炒めるタイミングがなかなかむずかしい。モタモタして炒めすぎてしまったり、逆に炒め足りなかったりしがちになる。

ところがこれは、ただ「熱湯に通す」だけだから、何のむずかしいところもない。しかも手間もかからない。

ピーマンを熱湯に通すのを、邦子が自分で考え付いたのなら、すごいことだ。



歯ごたえのあるピーマンに、やわらかな油揚げのとり合わせが、またいい。

醤油だけの味付けも、文句がない。



向田邦子、ただ者ではない。




あとは、サンマの蒲焼。

3枚におろしたサンマに、小麦粉をふり、フライパンでこんがりと焼く。

醤油に酒、みりんと砂糖のタレを煮詰め、よくからめ付けたら出来あがり。

山椒をふって食べる。



サンマは塩焼きもうまいが、塩焼きは冷めると、急激にまずくなる。

ところがこれは、冷めてもおいしく食べられる。

酒の肴にいい。




池波正太郎が若い頃、「三井老人」の家で食べた、大根の煮たの。

厚く輪切りにした大根を、昆布をしいた鍋で、気長く煮る。

煮上がる寸前に、鍋の中へ、少量の塩と酒をふり込む。

醤油を2、3滴たらし、熱いうちに食べる。




シメは、うどん。