このサイトは、おっさんひとり飯の「旧サイト」です。
新サイトはこちら
へ移動しました。
なんでサイトを移動したの?⇒ こちら

2011-11-01

日本にいながらにして、スペインの食卓。
檀流「スペイン酢ダコ」「あさりのサフラン煮」


檀一雄「檀流クッキング」には、和食はもちろん、朝鮮料理、中国料理、ロシア料理、欧風料理など、世界各国の料理が紹介されているのだが、そのなかでスペイン料理はいくつも取り上げられている。檀はポルトガルに1年以上滞在したこともあり、その間ちょくちょく、スペインへも出かけていたらしい。

檀はスペインの酒場について、次のように書いている。
「スペインの町々をうろついている時に、何がうれしいかといって、裏町の居酒屋や、安食堂のカウンターの上にズラリと酒のサカナが整列していることだ。 
たとえば、ここはマドリードだが、昨晩はいりこんで行った安食堂のカウンターの上には、右から、イワシの酢漬け。マーシュロムの油漬け。ムール貝のニンニク、トンガラシ焼き。さては、タニシのような小貝の塩ゆで。パエリヤ。イカのフライ。あさりのサフラン煮。ウナギの子の油いため。・・・」
僕もむかし観光でスペインへ行ったとき、まったく同じ光景を目撃した。マイヨール広場のまわりには、「バル」がいくつも立ちならぶ。バルでおじさんたちが昼間から、ワイングラスをかたむける、そのカウンターの上には、おいしそうな酒の肴がならんでいる。魚介類が中心で、どれも安い。小さな一皿が、50円くらいだったと記憶している。またそれが、どれもうまい。魚介だから、日本人の口にもよくあう。



「檀流クッキング」には、檀が行ったスペインの酒場で出てきた酒の肴の、「スペイン酢ダコ」が紹介されている。「これはいける」と思った檀は、店で酒をのみながら、スペイン酢ダコを「分解し、推理し、研究し」、さらに宿に帰り、宿の女性に実際につくってもらい、つくり方を習ったというものだ。

同行の日本人につくって食べさせたところ、「いやー、これはどうも、スペイン式酢ダコの方が一段上だね」と言わしめたとのこと。その日本人は、自分は日本式酢ダコをつくっていたのに、それは一口二口でやめ、スペイン酢ダコに乗換えてしまったのだそうだ。

昨日はこの「スペイン酢ダコ」を、家でつくってみることにした。



魚屋で、タコの足を買ってくる。これはスーパーで、すでにゆでてあるやつを買ってきても、悪くないのは言うまでもない。

塩ゆでされて、真っ赤になったタコ。昨日は2本の足のうち、1本だけ使った。

これを、「なるべく小さいサイの目に」切る。

「タマネギを半個ばかり、これも小さい乱切りか、サイの目に切って・・・」ということだったのだが、これはタコの足「2、3本」にたいする分量で、足1本に玉ねぎ半個は、ちょっと多すぎだった。

「トマトも種を抜き、皮をむいて、なるべく小さく、乱切りにする・・・」

トマトは湯むきしなくても、きちんと研いだ包丁をつかえば、わりかし簡単に皮がむけることがわかった。

「レモンはどこの店も、小さく切り込んでいたし、その皮をみじんにしてちょっと落としておく方がよろしいだろう・・・」

「ニンニクは例外なしに、どこの店のものにも、かなりの量、切り込んであった・・・」

ニンニクは4かけ分いれたが、これもちょっと多すぎたかも。

これらをボールに入れ、味つけする。

「軽く塩、コショウする。酢をかける。その倍量ぐらいのサラダ油(落花生油)をかけたあげくに、ほんの2、3滴のオリーブ油をたらしたい・・・」

オリーブオイルは、「2、3滴」というよりは、もう少したくさんいれた。

「少量のマヨネーズ・ソースを加えるのもよろしいだろう・・・」

これは、マヨネーズ・ソースが何のことかわからなかったので省略。

全体をよく混ぜ、器にもって、「鶏卵の黄身を細かに砕いてふりかけ」、コリアンダーを「大マカに刻んで」ふりかける。




スペイン酢ダコの完成。




全体を混ぜ合わせてしまうと、いかにも「スペイン風」という感じの、なんともきれいな色合いとなる。



このスペイン酢ダコ、非常にうまい。酢ダコというより「タコサラダ」のような風情なのだが、数多くの材料がバランスよく配置され、それぞれの役割をきちんと果たしていくので、味に足りないところがない。時間がたって、味がなじんでくると、またなおさらうまくなる。

ニンニクやらコリアンダーやら、刺激の強そうなものがずいぶん入っているが、それらが突出してしまうこともない。全体のなかによく調和している。

スペイン料理がどういうものか、まだまったくよくわからないが、日本式とはまったくちがう、スペインの味付けのやり方、とても興味深い。



昨日は冷蔵庫に、きんぴらごぼうだの、漬物だのが入っていたのだけれど、スペン料理は一品つくると、献立全部をスペイン風にしなければ、非常にバランスが悪くなってしまうことを「イカのスペイン風」で体験した。そこで「檀流クッキング」にのっているスペイン料理を、もう一品つくることにした。

「あさりのサフラン煮」。これも檀がスペインの酒場で食べた料理だ。

これはつくり方は非常に簡単なのだが、檀のレシピを忠実に守ると、「サフラン」を買わなければいけない。省略しようかとも思ったが、せっかくだから買うことにした。

サフランは他のスパイスよりひと回り大きな瓶にはいっていて、値段も700円ほどもする。

ところが中身は、ほんとにちょっぴり。

このサフランをひとつまみ、「白ぶどう酒で一度煮立たせておき、色どりと香気をとかし込んでおこう・・・」。

あさりは、海水程度の濃さの塩水につけ、砂出ししておく。

鍋を熱して、サラダ油を入れる。そこにニンニクと唐辛子。ニンニクは、2かけ入れたが、1かけで十分だ。唐辛子も、丸ごとのがなかったから、切ったのを入れたが、丸ごとのがあれば、そのまま切らずに入れればいい。

ニンニクのにおいが立ってきたら、あさりを入れる。そこに塩コショウ。あさりにはすでに塩気があるから、塩はほんとにちょっぴりでよい。じつは昨日、塩を入れすぎた。

サフランのとけ込んだ白ワインを入れ、そのまま沸騰させて、あさりの口がすべて開いたら、ひと混ぜして出来あがり。




これはまず、サフランの黄色がとてもきれいだ。上のスペイン酢ダコにしても、これにしても、あざやかな色を見ただけで、スペインに瞬間移動してしまったような感覚におそわれる。

そこから立ち上る、ワインとサフランの風味。「いかにもスペイン」としか言いようがない。

ちょっと高かったが、サフランを買ってほんとによかった。




この汁をパンにひたして食べると、またいうまでもなく、ぶっ飛ぶうまさだ。




チリ産の安物の白ワインを、グラスに2杯。いつもと変わらない量だったが、のみ付けない酒をのむと、やはりふだんより酔いがまわる。



おまけ。

ゆでたまごは、ゆでるまえに「丸いほう」のはじを、ちょっと割っておくと、殻がたいへんきれいにむける。



もうひとつおまけ。

あまったバゲットは、冷凍しておけば、いつでもおいしく食べられる。