2011-11-17
手間はかからず、コクは十分。
向田邦子「牛乳スープ」
向田邦子は、「寺内貫太郎一家」「阿修羅のごとく」「あ・うん」などを生んだ脚本家として知られるが、忙しい執筆作業の合間をぬっては、料理にも精をだした。
友人たちを自宅に招き、手料理でもてなすことが、向田邦子の大きなたのしみであったという。
友人たちを家へ招くと、コットンのスカーフで頭をきっちり包んだ邦子は、友人たちが手伝う間もなく、たちまちのうちに幾品かを、テーブルの上に並べていく。
美しい器をいかした盛りつけ。一品たりともおろさかにされぬ、なみではない美意識が生きている。
それを仲間に食べさせながらも、まっさきに自分が「うまい!」と言ってみせるのが、邦子の人生のたのしみ方だった。
邦子は仲間たちと競いあうように、新料理の「開発」につとめた。
邦子の手料理はいつでも、素早くでき、材料の味がそのままに生かされ、アイディアに満ちている。
そしてなにより、「人をよろこばせたい」という思いやりの気持ちにあふれていた。
せっかちだった邦子だが、スープをつくるのは好きだった。
座布団がはいってしまいそうな、大きな、プロ用の寸胴鍋を使い、原稿書きをしているあいだにスープを煮込む。
仲間が病気ときけば、小さな鍋に、出来たスープを入れ、仲間の家まで出前もした。
そんな向田邦子のレシピから、今回作ってみたのは「牛乳スープ」。
4人前で、「鶏骨つきぶつ切り肉」を400グラム。今回は、手羽もとを使用。
ジャガイモは、4人前で4個。小さなものならそのままで、大きなものなら2つに切って、水にさらして煮くずれをふせぐ。
厚手の鍋にバターをとかし、肉に焼き色がつくまで炒め、水気を切ったジャガイモを入れさらに炒める。
水をヒタヒタにそそぎ、塩加減をして、ジャガイモがやわらかくなるまでコトコト煮込む。
煮込んで煮汁が少なくなった分、ふたたびヒタヒタになるまで牛乳をそそぐ。ごくごく弱火で沸騰させないようにしながら、スープとジャガイモがなじむ程度に煮る。
向田がお気に入りだった、黒コショウをふって完成。
なるほどこれは、たいへん面白い。
一見すると、ポタージュに見えるのだが、もちろんトロミはつけていないし、ニンニクや玉ネギのみじん切りを、時間をかけ炒めることもしていない。
まったく簡単に、手早くできるのだが、コクは十分。
鶏のスープは、コトコト炊いて、塩コショウだけしてもうまい。
そこに牛乳を、和食で醤油をつかう感覚で入れるのが、実にユニークだ。
和食感覚でつくる、手軽な洋食。
「牛乳スープ」とは、言い得て妙のネーミング。
もう一品は、高野のレシピ。
「ブロッコリーとプチトマトのツナ和えスペイン風」
さっと塩ゆでしたブロッコリーと、プチトマト、油ごと入れたツナに、みじん切りしたニンニクと玉ネギそれぞれ少々、塩、レモン汁と酢、オリーブオイルを加え、よく混ぜる。