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2010-09-06

「小惑星探査機はやぶさの大冒険」(山根一眞)

ノンフィクション作家山根一眞が、小惑星探査機「はやぶさ」の、打ち上げ前から、7年にわたる飛行の末、今年6月に「カプセル」が着地・回収されるまでを取材し、多数の研究者にインタビューしたのをまとめたもの。

直径500メートルほどの小惑星「イトカワ」へ、岩石を採取するために打ち上げられたはやぶさ。
ソーラーパネルをふくめても、3メートル四方ほどの小さな探査機が、無限の宇宙をひとり飛び続け、世界初の挑戦をくりかえすという、けなげとも思える姿がまず、胸をうつのだが、さらにすごいのは、はやぶさが無事地球にたどり着くまでの、壮絶ともいえる研究者たちの悪戦苦闘の様子だ。

はやぶさはイトカワ着陸にあたって、3つあり、最低でも2つがないとうまく動かないはずの、姿勢制御のための装置、「リアクションホイール」が、2つまで故障し、残りの一つに、本来はべつの目的で使う「化学エンジン」を併用し、なんとか姿勢を制御する。
ところがその化学エンジンの燃料が漏れ出し、空になってしまい、さらに電池の充電も切れてしまったため、方向を制御できず、通信も不能になったはやぶさは、46日間にわたって行方不明になる。
やっと見つかったものの、姿勢制御ができないはやぶさを、主エンジンである「イオンエンジン」の燃料である「キセノンガス」を、直接機外へ噴射させて姿勢を制御するという、まったくの想定外の奇策でなんとか姿勢を立て直すが、4つあったイオンエンジンの、3つが壊れて、残った1つのイオンエンジンの、今度は「中和器」という装置が故障。
今度こそ絶望的かと思われたが、それも別のエンジンの、壊れていなかった中和器を使うという奇策でふたたび乗り切り、はやぶさは無事、地球に帰還するにいたる。

この本では、その研究者たちの、立ちはだかる壁をひとつひとつクリアしていく、ほとんど鬼気迫るともいえる様子を、本人たちのインタビューも交えながら、克明に描いていく。
7年間にわたり密着取材した著者だからこそ、書き得たことなのだろう。

はやぶさに思いをよせる研究者たちのセンチメンタリズムに、著者が肩入れしすぎ、後半ちょっと、ベタベタした湿っぽい感じになるのが、僕としては鼻に付くところもないではなかったが、日本が誇る、宇宙開発の大きな一歩である、はやぶさプロジェクトについて、全貌を知るには、おすすめの一冊だと思う。

★★★★ 4.0 
小惑星探査機 はやぶさの大冒険