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2011-01-15

スーパーでイカを買ってみた

じつはここしばらく、スーパーへ行くと、秘かにずっと気になっていながら、見ないふりをしていたものがあったのだ。
それはイカ。
今が旬ということなのか、丸まんまのスルメイカが、わりと安く出ていて、お、いいなと思うのだけれど、これをどうやって料理したらいいのか、以前一回やったことはあるのだが、胴と脚をどうやって切り離したらいいのか、内蔵はどうしたらいいのか、皮は剥いたほうがいいのか、など、わからないなと思うと、ついいつも使い慣れている材料のほうへ、目が移ってしまうということになっていたのだ。
しかし昨日は、ついにそういう自分の気持に真正面から向きあって、って大げさだ、この生スルメイカ、買ってみることにした。

しかしどうしていいのか、わからないことは確かなので、そういうときは人に聞く。
スーパーのバックヤードに声をかけて、鮮魚担当の人に出てきてもらった。

やり方を聞いたら、「こちらでやりましょうか」と言うので、とりあえずお願いしたが、やってるところをそばで見せてほしいと言ったら、「バックにはお客さんは入れないんですよ」と言いながら、わざわざキャスター付きの台にまな板をのせて、売り場まで出てきてくれた。
これは声を大にしておくと、グルメシティ四条大宮店の鮮魚コーナーのお兄ちゃんなわけなのだが、だいたいスーパーの人でも、魚屋の人でも、料理のやり方を聞くと、ほんとにていねいに教えてくれる。
たぶん自分の知識を人に教えるということに、ちょっとした喜びなんかもあるのじゃないかという気がする。
だからこれは、どうあっても、聞かないことは損なのだ。

というわけで、お兄ちゃんにさばいてもらった生スルメイカ。
胴と脚は簡単に離れるようになっていて、脚についている内蔵の横に張り付いている、長細い墨の袋だけとりのぞかないといけないが、茶色の内蔵は、塩辛に使うことができる。
胴に残った灰色の内臓は、使えないから捨て、煮付けにするのなら、皮は剥がずに、そのまま切れえばいいのだそうだ。

ということで、まずは塩辛を作ってみることにした。
塩辛を作るのは、初めての体験だ。

まずは脚と切り離したワタの袋を、よくしごいて中身をしぼりだす。

ここにぶつ切りにしたゲソを入れ、塩をふる。

塩の量だが、これは完全に好みでいいのだ。
漬ける時間を聞いたら、「塩がなじめばいいので、2、3時間で」とのこと、実際このワタだけなめてみたら、こってりしてそのままで十分うまかったので、甘めがよければ塩は少なめ、辛めが好きなら多めにすればいいというだけのことなのだ。
もし保存したいと思ったら、塩は多めにしたほうがいいのかもしれないが、たいした量じゃないから、保存などせずその日に食べてしまえば、あれこれ考える必要もなくなる。

それでこれを箸でよく混ぜ、ラップして冷蔵庫で2、3時間。
いや楽しみだ。

それから胴は、大根といっしょに煮付けることにした。

適当な大きさに切った大根は、あらかじめやわらかくなるまで下ゆでをしておく。

下ゆでした大根を、あらためて空の鍋に入れ、その上にぶつ切りにしたイカをのせる。
どうでもいいのだが、大根は下にしたほうが、煮たとき汁がしみやすくなって、いいのじゃないかという気がする。
それが逆だって、べつにいけないことは、まったくないが。

この大根とイカを、どういう煮汁で煮るかが問題となるわけだが、当然昆布やだしパックのだしで煮たほうが、おいしいに決まっている。
でも初めからこれを使ってしまうと、使わない場合に、どの程度まずいのかが、わからなくなるのだな。
もしかしたらだしなど使わず、イカのだしだけで炊いたって、十分かもしれず、それなら単純なやり方でやったほうが、いいに決まっているというのが僕の考え。
そこで今回は試しに、だしは使わずやってみることにした。

ただ、酒はドバドバと大量に入れる。
臭みが取れるし、コクもでる。
ちなみに月桂冠「月」は、もう飲まずに、料理に使うことにした。

それからみりん。
これも大さじ一杯とかじゃなく、じゃばじゃばじゃば、とかいう感じで、けっこう多め。
やはり甘辛くこってりと仕上げてみたい。

ここに、醤油は入れず、イカがたしょう顔を出すくらいの量の水だけ張って、強火にかける。
魚は短時間で煮ないといけないので、初めから醤油を入れてしまうと、中まで味が入らなくなるのだ。
これは広島でしょっちゅう通った、食堂のおばちゃんの受け売り。
なんでも甘いものは分子が大きいので、分子の小さな塩辛いものが先に入ってしまうと、後からは入れなくなってしまうらしい。

煮時間なのだが、以前広島のスーパーの鮮魚コーナーのおいちゃんに聞いたときには、イカは2、3分と言っていた。
これは、あくまでイカのやわらかさを大事にするという立場なのだな。
このおいちゃんは、アラでも、15分でいいと言うのだ。
昨日のグルメシティのお兄ちゃんは、「いや、2、3分だと味がしみないので、10分くらい」とのことだった。
なるほど。

ということで、僕はその中をとって、7、8分でいってみることにした。
たしかに2、3分では、大根に味が入るのは難しいだろうから、そうすると、大根に事前に味をつけておいて、それからイカを入れて、とかいうようになって、段取りが面倒くさくなるからな。
大根にも味が入って、イカもギリギリ固くならず、というあたりの線を狙ってみたというわけだ。

沸騰したら、火加減は強めの中火。
短時間勝負だから、つねにきちんと、グラグラと汁が沸き立つようにしておく。
アクが出たら、たしょう取ってみたりする。

そして煮時間の半分、3、4分の時間がたったら、醤油を入れる。
味を見て、好みの味になるように加減する。
僕は甘辛いといっても、たしょう醤油の勝った、辛めの味が好き。

これを7、8分まで煮たら、火を止め、あとはそのまま置いて冷まして、味をしみ込ませる。

ということで、結果はいかに。

塩辛。
これはですね、抜群だったです。
イカの鮮度が最高というほどでもないので、死ぬほどうまいとまではいかなかったけれど、パックに入って売っている既製品よりはぜんぜん濃厚。
塩だけだとちょっと生臭いので、ほんとはゆずがうまいと思うが、レモン汁で代用。
それに青ネギで、バッチリでした。

ちなみに僕は、レモン汁にはポッカレモン100を使っている。
これはレモンを丸まま買うより安いし、保存がきくので、3個一袋で売っているレモンを余らせてしまうことを考えるとぜんぜんいい。

イカと大根の煮付け。
これも、しみじみうまかった。
だしを使わなくても、ぜんぜん大丈夫。
イカのうまみは十分で、味の素に慣れた舌には、ちょっと物足りないかもしれないが、素朴な味、僕はこういうほうが好き。
イカもぎりぎり固くはならず、大根にもちゃんと味がしみていた。

昨日はあとは湯豆腐。
豆腐はなしではいられない。

熱燗は菊正宗。
昨日も2合。
いっしょに写っているのは、湯豆腐のタレ。
生醤油に、青ネギとおかかとチューブのショウガ。