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2011-01-28

ミニマル料理のすすめ。(鶏もも塩焼き)

鶏もも肉にただ塩をふって焼いただけというものは、料理の本にのっているのを見たことがないわけで、おそらくこれは、あまりに簡単すぎて、料理の本にのせる価値がないということなのだろう。
じっさい僕も、これを料理と呼ぶには、ちょっと気がひける。
しかしこの鶏もも塩焼きに、青ねぎとレモン汁をふりかけただけのものを、週に一度のペースで食べ続けている僕の経験によれば、これはまったく飽きることがなく、食べるたびに心の底からうまいと思い、週にいっぺん食べるというのも、べつにそう決めているというわけではなく、一週間くらいたつと、これを食べずにはいられなくなるということなのだ。
まあ僕が、20代のころ毎日のように焼き鳥屋に通い、そのたびに焼き鳥の塩という、これにほぼ似たものを食べ続けたおかげで、おそらく僕にとって、これが食べ物の基本として刷り込まれてしまっただろうということを、割り引いて考えたとしても、これだけ食べてそのたびうまいということは、これはじっさいにうまいのだ。

スパイスをきかせたり、トマトのソースをかけてみたり、それはそれで、もちろんいいと思うが、一人暮らしの人で、自分も料理をしてみようかなと思って、まあ当然そういう場合、料理の本を買って、いろいろやってみることになるのだと思うが、鶏もも肉というものは、そうやっていろいろ手をかけないとおいしくならないと思ってしまって、そうするとスパイスやら、トマト缶やら、買ってみたりするわけだ。
だいたいスパイスなどというものは、一回使ったらそれきり使わず、台所の肥やしになるというのがオチなわけだし、トマト缶だって、一人分だと一度でぜったい使い切れない。
そうすると、残りは冷蔵庫で腐らせてしまうということになるわけで、さらにこのチキンソテーに、つけあわせにニンジンとブロッコリーなどと書いてあったとして、そのレシピ通りにニンジン一本とブロッコリー一把を買うと、それもそのまま、余らせてダメにしてしまうことになる。
そんなことをしているうちに、一人暮らしのナイーブな男性は、やはり料理は面倒くさい、自分ひとりのために料理をつくるのは効率が悪いと思ってしまって、外食にもどってしまうのだ。

そこで僕は、「ミニマル料理」というものを提案したい。
これは僕の造語だが、「ミニマル」というのは、「必要最小限」という意味で、音楽や芸術、建築などで、「ミニマリズム」といって、装飾を取り払い、必要最小限の形式を追求するという運動があったりするわけだが、料理にだって、そういう考え方があってもいい。
料理の本が、本の見栄えをよくするために盛り込む、不必要な装飾をとりはらい、必要最小限の料理の姿を追求する。
まずは考えうる最も単純なやり方で、料理をしてみて、それでうまければ、それでよし。
もしイマイチだったら、その時点で初めて、もう一手間かけてみる。
家族がいたりすると、「なんだよ、また同じものかよ」とか、「こんなしょぼいものじゃなく、すこしは気をきかせよ」とか、言われてしまったりして、そういうことにはなかなか挑戦できにくいわけだが、その点一人暮らしの人こそが、思う存分、それを探求できる、恵まれた環境にいるわけなのだ。

ただこれには、ちょっと注釈が必要なのだが、ミニマル料理は「手抜き料理」とはちがう。
いや結果として、手間はかけないということだから、同じものになるのかもしれないが、「手抜き」というと、どうもことばの感じが、マイナスのイメージがあってよくないし、じっさいほんとは必要なのだけれど、あえて省略する、というニュアンスがある。
ミニマル料理はそうじゃなく、必要のない手間をはぶき、シンプルな料理の姿を追求するという、前向きな姿勢だ。
それこそが本来、毎日食べても飽きない、日常食のあるべき姿なのだ、という、ちょっとした主張も含んでいたりする。

それから、ミニマル料理は「粗食」ともちがう。
べつに健康に気をつかって、何かを我慢して、からだにいいものだけを食べることを心がけよう、ということではない。
脂身上等。
好きなものはガンガン食べるが、そのとき、いらない手間はかけない、ということだ。

これどうでしょうか。
一人暮らしの人、自分もやってみたいという方は、ぜひいっしょに探求してもらえたらと思います。

とずいぶん熱く語ってしまいましたが、鶏もも塩焼き。

これはやり方、何度も書いているけれど、このブログは今日初めてこれを見ている人もいるわけなので、同じことでも何十回でも書くわけなのだ。
前から見てくれている人、ごめんなさい。

鶏もも肉は、表裏に塩をすり込み、この塩の量は、表裏それぞれ、4本の指でひとつまみ、というくらいなのだが、何度かやっているうちに、だんだん加減がわかってくるのだ、これを油をちょっとしいた冷たいままのフライパンに、皮を下にしてのせ、弱火にかける。
そのまま時間にして15分か20分、ちょっと持ち上げてみて、皮がこんがり茶色で、これ以上焼くと黒く焦げそうだな、というくらいになったら、ひっくり返す。
そして今度は10分くらい。
そうやって弱火でやると、皮はパリパリ、中はモチモチの、最高にうまい焼き加減になる。

ここでポイントは、焼き上げた鶏もも肉を切ってみると、ときどき赤いことがあるのだ。
しかしこれは、あまり気にしないことが大事。
鶏肉は弱火で火を通すと、火が通っていても、赤いままのことがある。
また肉は焼きすぎてしまうと、とたんにモソモソして、まずくなるから、焼き過ぎるか、焼き足りないか、どちらかを選ぶとすれば、焼き足りないことを選ぶことが、うまいものを食べるという観点では、正しい。
鳥インフルだって、人間には感染しないわけだし、そんなに心配することないと思う。

これは青ねぎとレモン汁をかけて食べる。
わさびとか、柚子胡椒とかを添えてもいいが、添えなくても何の問題もなくうまいから、僕は添えない。
レモン汁は、ポッカレモン100が、安いし日持ちもして便利。

白菜のおしたし。
白菜はほんとに安くて、グルメシティでは、1/8カットというのが48円で売っていて、これは水菜が198円することを考えると1/4の値段なのだが、一人で食べるにはちょうどよい量。
塩をふった湯で好きなだけゆで、水にさらして冷やして、よくしぼる。
おかかと醤油をかけて食べる。

あとは湯豆腐。
だし昆布を入れ、水を張って、コンロで温める。
湯豆腐は、豆腐を煮るのではないのだ。
基本は温めるだけ。
豆腐は煮ると、かえってまずくなってしまうからな。

いっしょに昨日あまったタケノコ水煮も入れてみた。
タケノコは、昨日は5ミリくらいの厚さに切ったのだが、今日はもっと薄くしてみたら、鍋にもバッチリ合うことがわかった。

タレは醤油にレモン汁、青ねぎとおかか。
ポン酢でもいいのだが、それより醤油と酢をべつべつにしたほうが、好きな味にできてよい。

酒は菊正宗の冷酒。
昨日も2合で満足。