魚屋は「秋のサンマ祭」を終え、いよいよサバが、店頭に並びはじめた。
でもこのところ、サンマやイワシなど青魚が続いていたから、今日はスルメイカと鯛。
スルメイカは相性抜群のセロリと炒め合わせる。
味付けは、オリーブオイルにしょうゆと酒、唐辛子とレモンをきかせたさわやか味。
鯛アラは定番の酒蒸し。
あとはしじみを赤だし、大根を塩もみ。
八百屋のご主人が「もうこれで最後」という十六ささげは、さっとゆでる。
まずはスルメイカ・・・。
胴から中身をはずしたら、胴は軟骨を引きぬいて輪切り、中身は目から上を切り落とし、クチバシをはずしてぶつ切りにする。
オリーブオイルでセロリを炒める。
セロリはピーラーで皮をむき、5ミリくらいの厚さに切る。
火が通ったら、一旦取り出す・・・。
あらためてオリーブオイルをひき、イカと鷹の爪少々を炒める。
イカが赤くなったらセロリをもどし、合わせ調味料をそそぎ込む・・・。
合わせ調味料は日本酒とうすくちしょうゆ、ポッカレモン100を大さじ1、オイスターソースと片栗粉を小さじ1。
全体をさっと混ぜたら火を止める・・・。
イカとセロリのさわやか炒め。
次は鯛アラの酒蒸し。
鯛アラは塩をふって10分くらいおき、80度くらいのお湯でさっと湯通しする。
水でよく洗い、うろこや血の塊をていねいに取り除く・・・。
昆布をひいた深めの皿に、鯛アラと豆腐、ぶつ切りの長ネギをならべる。
日本酒をしゃばしゃばとかけ、うすくちしょうゆを少したらしたら、蒸し器に入れて10分蒸す・・・。
鯛アラの酒蒸し。
すだちを添える。
あとはしじみの赤だし。
砂出しし、よく洗ったしじみを水に入れ、日本酒少々を加えて火にかける・・・。
しじみの殻が開いたら、赤だしみそを溶き入れる。
大根は細く切り、塩もみしたら少しおく・・・。
よくしぼってすりゴマをかける。
十六ささげはさっとゆでる・・・。
削りぶしとポン酢しょうゆをかける。
いただきます。
やわらかなイカに歯応えのあるセロリ、オイスターソースのコクにレモンの酸味・・・。
鯛アラはほんとに最高。
晩酌を終え、おっさんは和久井映見と話をすることにした。
2人のこれからを、具体的に考えていかなくてはいけない。
和久井映見は言う。
「遠距離恋愛というのはどうなのかな・・・」
でもおっさんは、遠距離恋愛はイメージが湧かない。
期間が限られているならともかく、ただ時々会うだけで関係が続けられると思えない・・・。
おっさんはこれまで、あとしばらくは京都にいて、それから先は、60歳くらいまではまだ行ったことがない日本の各地を転々とし、そのあとはパリに移住しヨーロッパを放浪したいと思っていた。
「でもそれは、和久井映見に会う前のことだ・・・」
和久井映見に出会った今、おっさんの考えは変わっている。
おっさんは、和久井映見に言う。
「オレはこれから、映見といっしょに過ごすことを一番大事に考えたい。
そのためにはどうしたらいいか、形はどうであれ最善の方法をいっしょに考えてほしい・・・」
和久井映見はうなずいた。
それからしばらく話をした。
和久井映見の京都での滞在は、とりあえず1ヶ月、延長されることになった。
「ほー、珍しく思い切ったね」
もうすでにめまいがしてきたよ。