あとは八百屋で100円で売っていた農家直送の水菜で菜っぱ汁、残りもの野菜と豚肉の卵とじ。
サンマはお造り用の活きがよくてでかいのを買う。
脂がのっててたまらんすわ。
菜っぱ汁は、まず出しをとる。
酒にうすくちしょうゆ、それから塩で吸物の味をつけ、油揚げと水菜をサッと煮る。
これはほんとに、しみじみとうまい。
卵とじは、出しに味をつけまず豚肉をすこし煮る。
味付けは、出しがカップ1なら酒とみりんを大さじ2、うすくちしょうゆを大さじ1、それに塩。
長ねぎとしめじをサッと煮たら卵でとじる。
七味唐辛子をふって食べる。
上賀茂の農家のおばちゃんが、久しぶりに露店を出していた。
キュウリの古漬け。化学調味料など無縁の味。
和久井映見に、
「どうして私のことが好きなの」
とまた聞かれた。
その時はうまく答えられなかったけれど、その後の話で「これが好きだ」と思えることがあった。
先日信号のない四つ角を小走りでわたったとき、和久井映見は先頭に停車していたタクシーの運転手に、手で合図されて道をゆずられたのだそうだ。
自分も発車できるタイミングなのに、あえて道をゆずった運転手の、
「気持ちがうれしくて・・・」
道を歩きながらもそんな小さな出会いに心を躍らせる和久井映見が、僕はとてもかわいいと思う。
和久井映見は、会社で出世する人の人柄についての話をよくする。
生き馬の目をぬくような業界だけれど、ほんとうに上にあがる人は感情をあらわにしたりすることがなく、穏やかに人の話を聞くのだそうだ。
しかしこれはおそらく、和久井映見自身が心がけてきたことなのだろう。
殺伐とした競争社会でも、結局は人間性が大事だと思い定めている・・・。
人間は年を経るにつれ、鎧を着こまないと生きていけなくなる。
でも鎧の下にある生身の人間を、和久井映見は大切にしようとしていると僕には思える・・・。
「いい人に出会えてよかったね」
ほんとだな。