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2010-12-27

大宮京珉の五目ラーメン

昼めしを外へ食いに行こうという場合、どこへ行こうか、まず頭で思い浮かべるわけだが、そうすると今日などは、ikoi cafeは休みだし、新福菜館三条店ということになってしまう。
新福菜館三条店はいいのだが、それも芸がないなと思い、食べログをチラチラ見てみたりするわけだ。
でも家から近くの店で、興味があるところは大方行ってしまったので、上から下まで眺めてみても、どこへ行こうか決められず、とりあえず2、3軒候補をもって、家から出る。

ハナから行っていない店というのもたくさんあって、僕の場合その巨大な領域は、うどん・そばの店。
京都に住んで、京風うどんを食べずに一生を終えてしまうというのも、ちょっと何かとは思うのだが、本格的な手打ちそばは別として、うどん・そばにどんぶり物を出すいわゆる食堂は、好きな人には申し訳ないが、時代に適応できなかった過去の遺物という感じがしてしまって、どうも興味が湧かない。
開国とともに肉食を始めた日本人が、肉のうまみと、それまでの和食の伝統を、長い期間の試行錯誤の末融合させてきた、ラーメンという金字塔、その並々ならぬ努力と挑戦を、脇で見て見ぬふりをして、初めは余裕で高みの見物だったはずが、気付いたらはるか後塵を拝する結果になっていたという、保守派の大集団、書きながらこれはまさに、今の中国と日本の関係と同じなのではないかと思ったりもしたのだが、うどん・そばというと僕はどうもそういう感じがしてしまう。

まあどうでもいいんだが。

というわけで家の近くにも何軒かあるうどん・そばの店は今日もスルーして、四条大宮の近くにわりと最近できた煮干しラーメンの店で、何度か食べたのだが、まだ食べログにレビューしていなかったところがあったので、そこへ行こうと思ったら、なんと今日は定休日。
開店早々に行ったのに食べログにのせられなかったのは、住所や電話を書いたカードがまだできていなかったからだし、どうもこの店、縁がないなと思いながら、来た道を引き返し、来たのはいわゆる地域の中華屋さん、「大宮京珉」。

この店、前に一度来て、ラーメンと餃子という、中華屋の実力を計るにはふさわしからぬ注文をし、それでもそのラーメンが、一風変わった味がして、また来てみたいなと思いながらも、今まで来ていなかったのだ。

とりあえず生ビール小とキムチ。

そして熟考の末頼んだのは、五目ラーメン。
これならこの一杯で、店の実力を判断しても、文句はなかろうというものだ。

かなりシャバっとした塩味のスープ、作るのを見ていたら、ふつうは肉と野菜を炒めて、そこにスープを入れるところ、煮立てたスープに直接野菜を入れていたから、炒め油でコク出しをするという常套手段を使っていないわけだ。
その結果として、この透明感のあるスープ、なるほどなとは思ったが、しかしやっぱり、そのままではコクが足りないというのは否めない。

ところがだ。
この五目ラーメン、僕はこういうのはこれまで一度も見たことないのだが、玉子が入ってる。
煮立ったスープに割り落としたもので、かなりの半熟。
これはどう考えても、崩して食べろと言っているわけなのだ。

しばらくそのまま食べてみて、コクが足りないという結論に達した後、満を持してこれを崩してみた。
するとなんと、お嬢さん。
これがウマイ。
塩味のさっぱりとしたスープに、絶妙なコク。
考えてみたら中華料理には、玉子スープというのがあるわけで、これは中華の常套手段なのだろうが、日本で食べる五目ラーメンとしては、かなり意外。
あとで店主に聞いてみたら、これはほかではどこもやっていない、この店だけの昔からのオリジナルなのだそうだが、この小技のきかせ方、大したものだと思った。

でも食べながら思ったのだが、京都というのは卵にたいして、独特の愛着のようなものがある気がするのだがな。
有名な料亭「瓢亭」で朝粥を食べたときにも、細々と贅を凝らした伝統的な和食のおかずに、ただゆでただけの卵が加わっていて、繊細さと田舎臭さのアンバランスに興味をひかれるとともに、昔の旦那衆は、祇園で朝まで芸者遊びをしたあとで、ここで朝粥を食べ、このゆで卵で、精をつけたのだろうなと思ったものだ。
それから新福菜館の大盛りラーメンにも、生卵が入ってくる。

東京で育った48歳の僕の感覚としては、料理に卵を入れるというのは、卵かけごはんとか、学食のまずいカレーに、仕方ないから生卵を入れてもらって、ちょっとでもましな味にするとか、貧しい食の典型という感じがするのだが、これは地域差なのか、世代の差なのか、僕が持ったこともなかった、卵に対する思い入れのようなものをちょっと感じて、それがおもしろいと思った。

あ、でもおでんの玉子は大好きです、僕も。