昼から酒を飲むというのは、もちろん酒を飲むということによる開放感も大きいが、それだけでもなく、やはりすべからく料理は、酒を飲みながら食べたほうがおいしい、ということもある。
料理に酒というのは、昔からつきものなのであって、どういうことなのかよく知らないが、アルコールによる何らかの効果が、味覚を鋭敏にするとか、そういうようなことがたしかにあるのだと思う。
以前は僕は、酒を飲むということは、とにかくへべれけになることであると思っていて、つまみも少しは食べるが、必要最低限、酒がまずくなるから、できるだけ空腹の状態をたもつように心がけていたのだが、このごろ日本酒を飲むようになってから、料理をおいしく食べるための酒の飲み方というものが、少しわかるようになってきた。
だから好きなものを食べるときは、きちんと酒を飲みたいのであって、僕のいちばんの好物である寿司を、日本酒なしに食べるということは、ちょっと考えられない。
同じように、ラーメンも、僕はビールなしに食べるということは、あまり考えられないのだな。
しかしそうやって、ラーメンにビールはつきものであると考えるというのは、寿司に日本酒がつきものであると考えることに比べて、あまり一般的ではないみたいで、世の中には、ビールが似合うラーメン屋と、ビールが似合わないラーメン屋とがある。
これは店の造りや、店員の受けこたえの仕方、メニューの構成、さらにはラーメンの味によって決まってくるもので、ファッショナブルな、イマ風な店構えであるよりも、ちょっとくすんだような、雑然とした感じのほうが望ましく、店員もハキハキと元気よく答えるよりも、ちょっと疲れた、無愛想な感じのほうがよい。
メニューにキムチとギョウザがあるかどうかというのは、これは最大のポイントで、ギョウザが置いてあるラーメン屋は多いが、さらにギョウザは出てくるまでに時間がかかるので、それを待つあいだにつまむキムチというものが、ビールを飲むには必須なのだ。
ラーメンの味というのも不思議なもので、何が違うのかよくわからないが、ビールに合うラーメンと、合わないラーメンというものは、たしかに存在する。
以上すべてのポイントを満たした、酒飲みの気持ちがよく分っているラーメン屋は、なぜか老舗の店に多く、最強なのは、「第一旭たかばし本店」だと思うけれど、家の近くの新福菜館三条店も、かなりのものなのだ。
平日はやはり、ちょっと遠慮して、ビールも小瓶にしてみたり、キムチだけでギョウザは頼まなかったりとしがちになるので、休日に、この新福菜館三条店で、きちんとビールの中瓶を頼み、ギョウザももちろん注文するというのを、僕はけっこう楽しみにしている。
新福菜館三条店は、ギョウザもかなりうまい。
大きさも、大きすぎず、小さすぎず。
肉と野菜の割合も、なんとも絶妙。
皮もモチモチとしていながらにして、固くもあり、そしてをそれをパリっと焦げ目をつけて焼きあげてくれる。
まさに王道といえるギョウザで、それでなんと、250円だというのだから、涙がちょちょ切れるじゃないか。
ビールを飲んで、餃子も食べて、しかもラーメンを大盛りにしてしまっては、ちょっと食べ過ぎだろうということで、かなりがんばってガマンして、並を頼んだ。
しかしこの並は、大盛りがもやしに生卵が入ってきて、総合芸術とでもいう趣きをたたえるのにたいして、甘辛いスープの味がストレートに出ていて、これはこれで、スプリンター的な感じでうまい。
晩めしは、ぶりのみぞれ鍋にした。
ぶりは今が旬だから、やはり食べておかないとな。
今年は天然モノのぶりが豊漁で、グルメシティなどでは、養殖モノより安く出ていたりするのだが、昨日は養殖しか置いてなかった。
でもきちんとでかいのが二切れで300円ならば、文句はないのだ。
だし昆布に酒をどぼどぼと入れた水を沸かして、まずぶりをさっと煮て、アクなど取ってみて、それから水菜と豆腐と、大根おろしをどっさりと入れ、ひと煮する、というようにしてみた。
タレは醤油にポッカレモン100をたらした、手製のポン酢。
いやこれはうまい。
脂ののったぶりの、とろとろ、ほくほくとした食べ応えに、ややシャキシャキとして、しんなりもしている水菜が、なんともよく合う。
汁に味をつけず、ポン酢で食べるようにしたというのも、かなりよかった。
しかし。
今回鍋に初めから材料を全部入れるというやり方をしたわけなのだが、時間がたって、何度か温め直しをしていると、ぶりのとろとろ感がなくなって、だんだんモソモソしてきてしまうのだ。
肉の場合だと、そういうことはあまりないのだが、魚はやはり、煮てすぐ食べないと、ダメなのだな。
これはカキと同じように、小鍋だてにしないといけないということが、今回よくわかった。
酒は、ネットで「花酔」という、広島県は庄原市の酒を取り寄せてみた。
本醸造酒でも2,200円という、けっこうな値段がするのだが、ひとことで言うと、男の酒。
フルーティーとか、甘みとか、そんな女々しいものは微塵もなく、あくまで辛口、そして濃厚、さらにいわゆる日本酒らしいクセが、はばかることなく、強烈に出ている。
やはり広島県は呉の酒である「千福」に、ちょっと似ている。
千福は戦艦大和にも搭載されたという、男の中の男の酒なのだ。
しかしまだ日本酒歴が浅い僕は、こういう強烈な酒は、ちょっと苦手なのだな。
今回は常温で飲んだので、このクセのある味がストレートにきたというところもあると思うので、次は燗をつけて飲んでみる。
シメはぶり鍋の汁に、塩と醤油で味をつけた吸い物。