2008-07-31
DVD 『キングダム/見えざる敵』
サウジアラビアで爆弾テロが起きる。欧米人の居住区域が狙われたのだ。多数の死者の中にFBI捜査官が含まれていたことから、仲間のFBI捜査官四名が反対を押しきり、アメリカから現地にむかう。サウジアラビアは、アメリカの力を背景に自らの立場と権益を守る王室と、それに敵意をいだく一部過激派グループとがするどく対立し、FBI捜査官が入国することは彼らの命が狙われることを意味した。サウジアラビア警察の協力のもと捜査をはじめた彼らは、徐々に真相に近づいていくのだが・・・。
製作はマイケル・マン。テレビシリーズ『特捜刑事マイアミヴァイス』で監督として頭角をあらわし、『ラスト・オブ・モヒカン』で評価を確立。他に 『ヒート』『インサイダー』『ALIアリ』『コラテラル』など。男くさい映画を撮ることで有名で、ダンディズムや哀愁、渋さを徹底した作品は評価が高い。またガンアクションの演出に高い評価を得ており、生の銃声をわざわざ録音して映画に使用し、壁の弾痕にまでリアリティを追及するほどのこだわりを見せる。監督のビーター・バーグは、彼の弟子(*)。
この映画でも、マンは一貫してリアリティを追及する。ほとんどのシーンが手持ちカメラで撮影されているようで、つねに画面がゆらゆらと揺れ、ニュースかドキュメンタリー番組を見ているかのような気にさせられる。テロリストの背後にある家族や、地域社会や、国家の複雑な状況をていねいに描きこむことで、善か悪かというアメリカが有しがちな素朴な視点では、問題は解決しないということを伝えている。映画の終わり方は、ちょっと衝撃的。
しかしマイケル・マンのリアリティ、浪花節的リアリティなのだ。この世のつらさ、はかなさを嘆いてはみせるが、だからといってどうということもない。嘆いておしまい。社会的な問題を扱ってはいるが、それについて何らかの主張をしたいのではない。社会問題は、うんうん、そうそう、現実は複雑で、そう簡単に解決ってできないよね、みんなそうだよ、わかるわかる、という肯きのための素材にすぎない。なのでこの映画、そういう浪花節の世界に浸りたい人にはおすすめ。
評価:★★★☆☆
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