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2008-07-28

DVD 『アイ・アム・レジェンド』 (超ネタバレ)


※以下は映画『アイ・アム・レジェンド』の結末をばっちり明かしています。これからDVDを見ようと思っていて、結末を知りたくないという人は、決して読まないで下さいね!

久しぶりのDVD。ていうか、7、8年前、家のビデオが壊れて以来、レンタルビデオは観ていなかったのだ。もちろんDVDははじめて。この1年、家にはテレビも置いてなくて、You Tube以外の映像には縁遠い生活をしていたのだが、久しぶりにリアルな映像が見たくなり、家から50メートルほどのところにTSUTAYAがあるのをこれ幸いとレンタルし、PCで観たのだった。

2009年というから、来年ですね、はしかのウィルスを遺伝子操作することにより、癌の特効薬が開発された。1万9人の癌患者に試したところ、全員が完治したという奇跡の新薬だったのだが、このウィルスがじつは人類を全滅に至らしめる恐ろしいものだったという設定で、映画の冒頭は主人公であるウィル・スミスが2012年、廃墟と化したニューヨークで、愛犬とともに気ままに鹿狩りをするところから始まる。

はじめはウィル・スミスがただ一人生き残ったのかと思うのだが、じつはそうではなく、ごく少数、ウィルのように免疫があり生き残った人間がいたのと、それ以外に世界で1,000万人ほどが、ゾンビのように変わりはてた姿で生き残っていたのだった。ゾンビは光が嫌いで、日中は暗い建物の中で大人しくしているのだが、夜になると活動を開始し、ものすごいスピードで走り、ビルの壁をも駆け上がり、生き残った人間を見つけては襲い、食べてしまうのだった。ウィルは科学者で、使命感から一人ニューヨークに残り、動物実験や、またゾンビを捕獲しては人体実験をくりかえし、ゾンビを元の人間に戻すためのワクチンを何とか開発しようと努力を重ねていたのだった。

話は中盤から、ウィルとゾンビの戦いとなっていく。どうやらゾンビには親玉がいて、けっこうな知恵がある。あるときウィルはゾンビの罠にはまり、命からがら逃げ出すも愛犬を失い、逆上したウィルは捨て身で復讐にむかう。殺しても殺しても、次から次からうじゃうじゃ出てくるゾンビに攻撃され、 とうとう車もひっくり返され、もうダメ、絶体絶命、というところで危機一髪、突然あらわれた女性に助けられ、九死に一生を得て家に帰る。女性はやはり免疫をもった生き残りで、どこだかにある生存者のコロニーに向かおうとしていたのだった。

3年ぶりに人間らしい心の交流をしたウィルだったが、その夜ゾンビの総攻撃をうける。ゾンビは家の壁をも突きやぶり、防弾ガラスも体当たりで壊してしまう凄いやつらなのだが、最後の攻撃をうける直前、ウィルはとうとうワクチンが完成したことを知る。そこで血清を女性に託し、命をかけて女性と血清を守り、その血清によって人類は未来を得て、ウィルは伝説となった、というストーリー。徹底的にネタバレですみません。

ところでじつはこの結末、公開の一ヶ月前に本来の結末から差し替えられたものだそうだ。本来の結末とは、それは原作どおりのものだったというが、最後にゾンビの攻撃をうけ、ゾンビに処刑されようとするその瞬間、ウィルはゾンビにとってみれば自分こそが、ゾンビが寝静まったあと街を徘徊し、寝ているゾンビをつかまえては人体実験をして殺し、いわば極悪非道をくりかえす怪物であったことに気づく、というものだったという。この結末は公開の一ヶ月前にボツになり、主人公はあくまでヒーローとして伝説になる、という結末に変更されたのだそうだ。

それはそうだろう。この映画はニューヨーク州、アメリカ合衆国、アメリカ陸軍の全面的な協力を得て撮影されたそうだ。廃墟になったニューヨークの光景は、ただのCGなのかと思ったら、なんとニューヨークの5番街を200日間、全面封鎖して撮影されたのだそうだ。すごい。また兵隊もたくさん出てくるのだが、これが全部本物で、しかも10ヶ月前にイラクから帰国したばかりの人たちだったりしたらしい。それだけ国に協力してもらってしまっては、そのアメリカがじつは世界の怪物だった、みたいなことを言わんとする結末が、許されるわけはない。そうだったら面白かったと思うけど。なのでゾンビに親玉がいて、全員が統制の取れた行動をすることや、知恵ばかりでなく感情までありそうだということ、またウィルがたくさんのゾンビを人体実験したことなどが、伏線として張られていたようなのだが、それらは最後まで拾われず、そのまま放置されて終わっている。

監督はオーストリア出身で、もともとはエアロスミスなど多数のミュージックビデオを手がけており、映画はこれが二作目なのだそうだ。世界の真実を告発する希望に燃えて頑張ったのかもしれないが、所詮ハリウッドで作られる映画、監督なのか、プロデューサーなのか、ちょっと甘かったか、何か勘違いしてしまったか、だったのだろう。おそらく口八丁のプロデューサーが、いや、原作どおりで行くから、でもいちおう、別の結末も用意しておこう、などと言って、若い監督はそれを信じたのだけれど、けっきょくは最後にはしごを外されてしまった、という感じだったのではないでしょうか。残念!

評価:★★☆☆☆