2012-06-27
豚肉と小松菜の卵とじ、スルメイカのお造り
今日の晩酌。
肴は豚肉と小松菜の卵とじ、イカの造り、塩辛、冷奴と冷やしトマト、きゅうりの塩漬け。
豚肉と小松菜の卵とじ。
冷蔵庫に残っている小松菜は、ただ豚肉と炒め合わせてもおいしいけれど、やはり出しで煮て卵でとじると、和食のおもむきが増す。
フライパンにサラダ油を強火で熱し、豚こま肉を炒め、つづいて食べやすい大きさに切った小松菜をさっと炒める。
酒とみりん、うすくちしょうゆ各大さじ1、砂糖大さじ2分の1に、おろしショウガ少々の合わせ調味料を入れ、ひと煮立ちさせたら出しカップ1くらいを入れる。
味見して甘めに調整し、中火で2~3分煮て溶き卵をまわし入れ、フタをし火を止めしばらく蒸す。
七味をふって食べる。
スーパーに売ってる180円のスルメイカでも、その日市場から仕入れたまっ茶っ茶なやつはお造りにできる。
スルメイカの胴は左右をひらき2枚にして、ふきんでつまみながら表の厚い皮をはがし、裏のうす皮はふきんでこすり取り、細く切る。
大葉と水にさらしたみょうがを添え、ショウガじょうゆで食べる。
ゲソは塩辛に。
しぼり出したイカワタに塩1つまみをまぜ、ぶつ切りにしたゲソを和えて、冷蔵庫で2~3時間おく。
酒とみりん、ポン酢果汁をそれぞれひとたらしして食べる。
酒は焼酎水割り。
今日は3杯。
立ち飲み屋は12時までに入らないといけないから、この頃は家をでる時間をすこし早めるようにしている。
後院通をななめに下がり、錦小路を東へ入る。
大宮通をこした先にある古い飲み屋アパートの1階、曲がりくねった怪しい通路を入った奥に、立ち飲み屋はある。
先客は、手前で男女5人、奥では男女2人が、それぞれ話し込んでいる。
僕はそのあいだ、大将の真正面に場所をとった。
手前5人のうち実際に連れ立って来ているのは3人で、あとは常連さんが入っている。
奥の男女も、常連さん同士のようだ。
手前と奥がそれぞれで話し込んでいるから、僕はそのあいだで、話を聞きながら酒を飲む。
でもそれはべつに、苦痛ではなく、心地よい。
話に入ろうとおもえば、いつでも入れるのだから、黙って飲んでいるのもわるくない・・・。
大将へは、行きつけのバー「Kaju」のマスターから、
「Kajuさんがほめていたと伝えてくれ」
と、冗談半分でいわれている。
でも今のこの店の雰囲気では、その話を持ちたすタイミングではないなとおもう。
「おれもだいぶ空気が読めるようになった・・・」
やがて手前5人の話題が、「血液型」の話になった。
話題の中心にいる男性が、AB型なのだそうだ。
「僕もAB型なんですよ」
僕は急に、話題に入ってみる。
そうしたら、奥の女性もAB型で、それからしばらく、「AB型がいかに傷付きやすいか」という話で店全体が盛り上がる。
「完璧な入りができるようになった・・・」
そのうち酎ハイレモンを飲み終わった僕は、今日は控えめにしておくことにし、お勘定の350円を払って鉄板焼屋にむかった。
鉄板焼屋は、手前のカウンターが埋まっていたから、まん中のカウンター、女性2人連れの隣にすわる。
店長のお兄ちゃんと時々話をしながら、女性の話を聞いていたが、話しかける雰囲気ではなさそうだ。
無理に話さず、角ハイボールを飲み終わった僕は、180円を払って店をでた。
歩きながら、僕はおもった。
「おれもだいぶ、大人の飲み方ができるようになった。
空気を読み、控えめに終わることなど、以前のおれにはできなかった・・・」
今日はこのまま、家に帰って寝ようとおもった。
大宮通を北に上る。
キム君のバーの看板の灯りが、煌々と輝くのがみえてくる。
念のため、店をのぞいてから帰ろうとおもう。
店の前から、ガラス戸越しに中をのぞくと・・・。
「女性1人客のとなりが空いている・・・」
残っている金で、あと1杯は飲めるはずだから、キム君の店に寄っていくことにした。
店へ入り、女性の隣にすわる。
女性は年のころは30代、長い髪を後ろでしばり、小さなメガネをかけている。
白いブラウスに紺のスカートのOL風。
念のため、キムくんに全財産をみせる。
470円・・・。
「それなら400円の焼酎ですね」
キムくんが、ちょっとあきれた様子でいう。
OLの女性も笑っている・・・。
そこで僕は、キム君と女性に、お金を持っているといくらでも使ってしまうから、千円札1枚だけポケットに入れ、夜の散歩をしていると説明した。
「なるほど、それは頭のいい飲み方ですね」
と女性。
「千円で3軒もまわるというのだから、大したものですよ」
とキム君。
次に僕は、このあいだは千円で、おごってもらって朝まで飲んだという話をする。
女性が、
「私は人におごられるのが苦手で・・・」
と話をはじめる。
しばらく女性が「おごられ下手」の話をするので盛り上がる。
やがて僕は、「関西の飲み屋のカウンター」の話をはじめる。
「なるほど、世界中の人が友達だというのはおもしろいですね」
と女性。
「関西のこと、そうやって思ってもらえるのは、関西人としてうれしいですよ」
とキム君。
「でも京都は、会話の作法が発達していますよね。京都の人は、ほめられたら、かならず謙遜してほめ返すとか、気をつけている感じがするし、たぶんほめた回数までカウントしているところがあるでしょう」
ほめられてうれしくなった僕は、京都論をかたる。
「そうそう、京都の人は、『自分がほめられたいから相手をほめる』みたいなところもありますね」
とキム君。
「フムフム・・・」
と女性。
そのとき、カウンターの端で話し込んでいた男性2人客が、キム君にお勘定をたのんだ。
僕は、我に返った。
「それじゃ、時間も遅いから、私もお勘定お願いします・・・」
女性も帰ることになる。
「話しすぎた・・・」
うれしくなって、最後に京都論を語ったために、ほめられっぱなしで終わることになってしまった。
「ほめられたらほめる」などと話をしながら、それを自分が守れないなど、言ってることとやってることが全然ちがう・・・。
僕は恥ずかしい気持ちで家に帰った。
まだまだだな。