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2012-06-08

鞍馬行き


梅雨入りが近いというから、梅雨になる前にとおもい、景色のいいところへ行くことにした。

しかしもちろん、その目的は僕のばあい、「酒をのむ」ということになる。

夜の街でのむ酒ももちろんうまいが、景色のいい場所で自然を満喫しながら昼間からのむ酒こそが、酒の醍醐味だと僕はおもう。



このあいだは京都の西にある嵐山へ行ったから、今度は京都の東、鞍馬へ行くことにした。

「鞍馬天狗」で知られる鞍馬には、「鞍馬寺」という山あいの大きな寺があるのだけれど、今回はそこはパス。

鞍馬寺の横をぬけて北へ10分ほど歩くと、日帰り入浴も可能な天然温泉「くらま温泉」」があり、その露天風呂へ行く。



行楽地はどこも休日は混むから、自由業である僕は平日を選んででかける。

「時間の自由がきくのはいいことだ」と、つくづくおもう。

しかしそれなら僕は、休日にがんばって仕事をしないといけないはずが、休日は休日で、やはりお休み気分でのんびりしてしまうから、結局いつも、遊んでばかりいることになってしまう。



家からバスで出町柳の駅へ。

まずは電車に乗るまえに、電車の待ち時間を利用して、駅前のカフェで生ビールを1杯。

電車は住宅地から、徐々に山の中へ向かっていく。

鞍馬に着いたら、駅前のみやげ物屋で瓶ビールをもう1本。

新緑の山の中、ひなびた道をトコトコ歩くと露天風呂。

入浴料千円で、間近にせまる山肌をながめながら風呂につかる。

風呂から上がって、生ビール。

今日のすべては、この1杯のためにある・・・。



勢いのついた僕は、鞍馬からもどると自宅近くのラーメン屋でキムチと餃子を肴にビールを1本。

家に帰ってちょっと寝て、鞍馬で買ってきた名物「木の芽煮」を肴に芋焼酎の水割りを2杯。

それから財布に残っていた2千円をポケットにねじ込み、四条大宮へ。



鉄板焼屋で、お客さんをながめながら冷奴を肴に角ハイボールを2杯。

ご無沙汰していた飲み屋をたずね、もう閉店だったのに「1杯だけ」と入れてもらって、ウィスキーの水割りを1杯。

ポケットには、まだ千円残っている・・・。



そこでやはりしばらくご無沙汰していた居酒屋へ。

そこは少し高いので、

「千円しかないんですけど・・・」

と遠慮がちに入っていく。

しかしママは気安く、自分のボトルを出してくれる。

お言葉にあまえて注がれる酒を遠慮なくのみ、出される肴をぜんぶ食べ、千円はらって無事帰宅・・・。



家に帰ってズボンを脱ぎ、ハンガーにかけようと逆さにしたら、全財産の10円玉が1枚、ぽとりとポケットから転がり落ちた。