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2012-06-07

豚バラ肉とジャガイモのカレー煮込み


今日のおれの酒の肴は、豚バラ肉とジャガイモの煮込みと、冷蔵庫にあまっていた水菜のサラダ、塩漬けしてある白菜で、即席キムチ。

豚バラ肉のカレー煮込みなど、おれは今まで作ったこともないし、どこかで食べた覚えもないのだけれど、これまで自分が作った料理やどこかでみたレシピの断片が、おれのあたまのなかで象を結ぶのだろう、作り方もイメージできる。

おれの経験によれば、そういうときは下手にネットを検索してレシピを確認したり、しないほうがいい。

レシピをみると、かならず自分がおもったのとちがうやり方が書いてあるから、せっかくの冒険の機会を失うことになってしまう。



肉屋で買ってきた300グラムほどの豚バラブロックを、ザクザクと大きめに切って鍋にいれ、かぶるくらいの水を張り、酒2分の1カップほどをいれて、ニンニク1かけとネギの青い部分といっしょに、鍋のフタはせず、コトコト1時間くらい弱火で煮る。

途中でもし水が足りなくなったら水を足すけれど、このあとここに調味料をいれ煮詰めていくようにするから、1時間たったころ「かぶる」くらいになっている程度に、水加減を調節する。

1時間たったらゴロゴロと大きめに切り水にさらしたジャガイモをいれ、味付けしていく。

みりん大さじ2くらい、しょうゆ大さじ2くらい、カレー粉大さじ1くらい・・・。



と、ここで、ほんとは砂糖をいれようとおもっていたおれは、それをやめ、もうすこしちがったものを、色々いれてみることにした。

「カレーは、味が複雑なほうがうまい・・・」

サラダのために買ってあったミニトマトを3つ4つ、ヘタをとり、握りつぶしていれる。それにイチゴジャムを大さじ1くらい、ウスターソースを小さじ1くらい。

さらにコトコト20~30分、ジャガイモがやわらかくなれば出来あがりだけれども、煮汁も3分の1ほどまで煮詰めるよう、火加減を調整する。



ふつうにおいしいカレーの味。

肉もトロトロにやわらかく煮えている。

おれがおもっていたより、おいしくできた。



水菜のサラダ。

いれたのは、洗ってざく切りにした水菜、輪切りのキュウリ、うす切りの玉ねぎ、みじん切りのニンニク、ミニトマト。

たっぷりのオリーブオイルとレモン汁、塩少々であえる。



これだと単独に食べるにはあっさりし過ぎだけれども、こってりとした肉があるからちょうどいい。



冷蔵庫に塩漬けの白菜が食べ頃になっているのだけれど、そのまま食べたのではカレーとニンニク、オリーブオイルの味に負けてしまう。

そこで醤油にすりおろしたニンニク、韓国粉唐辛子、それにゴマ油であえ、即席のキムチにした。



「悪くは、ない・・・」






酒は芋焼酎の水割り。

2杯のんだが、まだ足りないので、うすいのをもう1杯のんだ。






「日本人は酒飲みにたいして寛容だ」というのは、おれも聞いたことがある。

たしかに酔っぱらいが道端でクダをまいていたとしても、その酔っぱらいに直接からまれるとか、ゲロをひっかけられるとかいうのでないかぎり、多くの日本人は「アホだなあ」とはおもいつつも、あたたかく見守るのだろう。

それは日本では昔から、酒が「仕事」に活用されてきたからだろうとおれはかんがえる。

昔の日本の政治家は、料亭で政治家どうしが密会することが、政治家の仕事として重要な意味をもっていただろう。



ただグローバル化した今の時代、多くの仕事が、それでは立ち行かなくなっているのもたしかだろう。

料亭で顔をあわせることができるくらいの少数のひとの意思で、会社や日本を動かせるような時代はおわっている。

これからは、酒をのまずに仕事ができるようにならなければ、日本はどうにもならないとおれもおもう。

そういう意味で、今の若い世代があまり酒をのまなくなっていることは、当然のなりゆきだとおれにはおもえる。



しかしだからといって、

「おれが酒をやめるわけにはいかない・・・」

もう30年にわたり酒をのみつづけてきているおれの体は、酒がガソリンの役割をはたすようにできている。

時代遅れといわれようが、それは今さら変えられない。

どうせ生きてきた時間より、死ぬまでの時間のほうがはるかにみじかいこの年だから、好きなようにやるだけさとおもっている。



「Kaju」へいったら、お客さんはおおかた引けていた。

手前にカウンターに突っ伏して寝ているお客さんがいたから、おれはいつもはあまりいかない、一番奥の席にすわった。



いつもは座らない場所からあらためて店の中をながめてみると、なかなか心落ち着くつくりをしている。

古ぼけた木の壁に映画やら芝居やらのポスターがベタベタと貼ってあり、昔のジャズ喫茶のようだ。

おれは高校生のころなどに、新宿や渋谷のジャズ喫茶にでかけたクチだから、こういう雰囲気は懐かしい。

マスターはおれとおない年だから、感覚が似ているところがあるとおもう。



マスターはひとりで見ていたテレビを消し、DVDに切りかえた。

忌野清志郎の「ナニワサリバンショー」。

清志郎が病気になるまえに、3年連続で大阪でやったライブを、小芝居などもいれ映画にまとめたものだそうだ。

ライブで清志郎は、多くの若手ミュージシャンとも共演している。



ひとり若い男性ミュージシャンで、勢いがあってすごくいいとおもったのがあったから、マスターに名前をきいたら「斉藤和義」だった。

斉藤和順は何度も名前はきいたことがあり、話題になった反原発ソングをユーチューブでみたこともあったけれど、おれはこれまで、なにもいいとはおもわなかった。

しかし清志郎との共演をみて、「これは人気がでるはずだ」と納得した。

チャラと清志郎とのコンビもよかった。



やがてマスターは、

「『夜の散歩』という曲があるんですが、聞いてみますか」

とおれにきいた。

おれが最近、四条大宮の飲み屋を転々とながめ歩いているのを知っているから、ぴったりだとおもったらしい。

ゆっくりとしたバラードにのせ、清志郎は切ない恋のゆくえを歌い上げる。

おれはその曲をすっかり気に入り、自分のテーマソングにしようと心に決めた。



カウンターに突っ伏していた酔っぱらいが、半分寝ぼけたままお勘定をして店を出ていく。

おれもマスターに、いいものを見せてくれたお礼をいって店を出た。

ポケットに手を突っ込み、帰り途をふらふらと歩くおれは、完全に清志郎の気分。

やっぱり酒は、おれにとってはガソリンだ・・・。



家にかえって、おれはパソコンのスイッチをいれ、ブログのテンプレートを清志郎ばりのサイケなデザインのものに取り替える。

「おれはこれから、清志郎でいく・・・」



しかし翌朝、酔いがさめた目でみてみると、それが「料理」をテーマとしたブログにはいかにもふさわしくないのに気付いたおれは、あわててテンプレートを元のにもどした。