鯛のアラというのは、スーパーでも優等生なのだよな。だいたいは安く売っていて、しかも煮ても焼いてもそれなりにうまい。さらに魚の頭がまるごと食卓に並ぶというのは、日本人としては豪華な感じがするから、まさに言うことない。
その鯛のアラを、昨日はごぼうと一緒に炊いて、素麺を添えてみた。ってこれ、最近のお気に入りメニューなのだけれど。
魚を煮付けるというと、難しいような感じがする人もいるかもしれないけれど、べつにそんなことはない。ただ「煮る」というと、どうしても「カレー」を思い出してしまうことがあって、「汁を煮詰める」という感覚がどうもつかめない、というところはあるかと思うのだよな。だから「煮る」ということについて、カレーを思い出す人は、「煮付け」とか「煮込み」とかは、煮ると思うのじゃなく、「蒸し焼き」と考えたほうが近いと思う。
魚を煮付けるとき、唯一大切なのは「水の量」だ。魚に火が通るために必要な時間火にかけて、その間にちゃんと適度なところまで汁が煮詰まっているようにするためには、それに応じた適度な水の量になっていなければならない。
でもこれは簡単で、「煮時間10分で、水カップ1」と覚えておけばいいのだ。
煮付けをする場合、強めの中火くらいの、ちょっと強い火で、沸騰した煮汁がきちんと魚の上にかぶるくらいにして煮るわけだけれど、そのくらいの火の強さで、10分煮ると、ちょうどなくなるくらいの水の量が、1カップなのだ。まあこれは鍋の形などによっても多少は変わるとは思うけど。
そうすると、煮時間10分の場合、汁をほぼ完全に煮詰めようと思ったら、水は1カップにすればいいし、ちょっと多めに汁を残そうと思ったら、1カップ半でも2カップでも、好きな量にすれば、1カップより余分に入れた分の水が残ることになる。
ちなみのこの「水」というのは、水と酒を足したものの量のこと。これは酒の分量が多いほうがうまい。これに加えて、砂糖とか、みりんとか、それから醤油とかを入れていくということになる。
今回のこの鯛の煮付けは、1カップ半の水にして、そしたらたしかに半カップくらいの汁が残ったのだけれど、こうやって素麺を入れたりもするのだったら、もうちょっと水が多くても良かったかなと、出来上がってみて思った。
ちなみに煮時間だけれども、イワシとかの小さなものなら7、8分、カンパチのカマのように大きめのやつだったら15分。煮付ける場合は火を強くするから、それ以上やってしまうと魚がパサパサになってしまう。
それからもちろん、魚のアラを使う場合には、湯通ししてそのあと丁寧に水で洗うようにする。
あとはすぐき。三条商店街に露天を出している上賀茂の農家のおばちゃん、昨日のぞいたらまだすぐきを売っている。すぐきは春先までじゃないかと思っていたら、今頃のやつは熟成が進んでまたうまいのだそうだ。たしかにちょっと古漬けといった風情の深みのある味。またこれを食いながら酒をのむと、悪酔いしないのだ。おばちゃんによると、「すぐきは肝臓にいい」のだそうだ。
酒は福島、「大七からくち生もと」。岩手、宮城、福島を比べると、福島の酒が一番クセがあるように思うのだけれど、クセがありながらもバランスがいいという意味で、僕はいちばん好みだな。物事って小さくまとまるのは簡単だけれど、クセのあるものがきちんとバランスを保つというのは、けっこうな技量が要求されるのじゃないかと思う。