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2008-09-30

お粥レシピ ウィンナーとオクラのお粥


スパムには敵わないのだが、ウィンナーも悪くない出しがでる。スーパーで売ってるアルトバイエルンとかシャオエッセン。小口切りにして米といっしょに炊き、火を止めるちょっと前に、やはり小口切りにしたオクラを投入。塩でうすく味を付ける。

米0.5カップ、水3.5カップに対して、ウィンナー3本、オクラは5本。でももしかしたらウィンナーは2本でも良かったかも。

トッピングはやはり味付きのザーサイ。

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広島庚午中 お好み焼き 「まきつぼ」


地域のお好み屋の繁盛のポイントは、やはり第一にコストパフォーマンスである。その点この店はすごい。


そば肉玉550円。写真では分かりにくいのだが、このお好み焼き、大きいのだ。普通のものの1.5倍、30センチ近くある。がばがばっと二つかみ、大量キャベツが使われている。ひっくり返すのも大変だが、おばちゃん、慣れた手つきで次々焼いていく。

大きくても麺の量は同じなので、相対的に生地の量が多くなる。お好み焼きの基本ともいえる生地のさくさくした食感を、たっぷり味わえるのが魅力だ。

まきつぼ (お好み焼き / 古江)
★★★☆☆ 3.0

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2008-09-29

お粥レシピ スパムと大根のお粥


お粥と雑炊のちがいは何か。どちらも米を煮たものだが、僕の勝手なイメージでは、おかゆは米が主役であるのに対して、雑炊は汁が主役である。だからお粥のつもりだったのが、具を色々入れたり汁に味をつけたりしているうちに、気が付いたら雑炊になっていたという事があるので、注意しなければならない。

白粥はさすが、毎日食べ続けても飽きないのだが、やはりちょっと味を付けてみたいなと思うとき、昆布や削り節を使うとか、中華だしの素を使うとか、そういう出し専用の具材を使うとなると、お粥と雑炊のあいだの微妙な境界を、雑炊のがわに一歩踏み出てしまうような気がする。僕が勝手にそういう気がするだけだが。お粥にしたときの米の味というものが、「日本人に生まれて良かった」としみじみ思う、まさに「滋味」と呼ぶにふさわしいものな訳なので、合わせる相手も、やはり滋味なやつでないと釣り合いがとれない。出し専用の具材を使うとなると何となく、柔道の試合に鉄砲をもって参戦するようなもので、米の一本負けになってしまうと思うのである。

米と一緒に20分か30分、ことこと煮て、滋味にあふれた出しもでて、しかもそれ自体も食べられる、そういうものを探してスーパーで色々見たりもするのだが、これまで成功した骨付きの鶏肉とか、干し貝柱とか、そのくらいなのかな、意外に難しいな、と思うのである。

しかし、僕には強い味方がいたのだった。スパム。


これはアメリカ生まれの食品なのではないかと思うが、沖縄とか韓国とか、米軍基地のある場所で、その土地の料理として取り入れられていたりする。「ランチョン・ミート」というやつで、たぶんこま肉を一度徹底的にくだいて、それをまた圧着・成型する、というものなのだ。そのままただフライパンで焼いてもおいしいし、韓国では「ブデ(部隊)チゲ」という鍋料理に入れたりもする。いい出しがでるのだ。ずいぶん前に買った物だが、二度の引越しを経ながらまだ家にあったので、今回はこれを使ってみることにした。

でもそれだけだとちょっと肉々しいだろうと思うので、滋味派の野菜代表として、大根。これをあわせて入れてみる。

作り方は、超簡単。スパムはまず、縦でも横でもいいから7ミリくらいの幅に切って、それをさらに7ミリ角のさいの目にする。大根も、7ミリくらいの輪切りにして、皮をむき、やはり7ミリのさいの目。まあ何ミリでも好きで良いのだが。これを前の晩から3.5カップの水に浸してある、0.5カップの米の入った鍋にいれ、初めは中火、沸騰したら鍋の底から大きく混ぜ、あくを取り、とろ火にして20分。鍋のふたは吹きこぼれないよう隙間をあけ、時々あくを取る。火を止めるまえに塩でうすく味をつけ、かき混ぜて、ふたをして5分蒸らす。器にあけ、びん詰めの味付きザーサイをトッピングして、召し上がれ。

お粥に味を付ける場合は、白粥に比べると炊く時間をちょっと短めにして、きっちり汁を残さないとおいしくない。

スパムはどこでも売っているという訳ではなく、僕は名古屋の東急ハンズで買ったのだが、広島ではまだどこで売っているか、確認していない。

上の分量は僕の朝食一人前だが、お粥は腹持ちの割には分量がふくれるので、一度に全量は器にあけず、少なめによそっておかわりするようにする。

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2008-09-28

広島海田市 お好み焼き 「大樹」


この店、けっこうな宣伝上手で、Web上での評判をうまいこと作ったり、またテレビの取材などを入れたりしている。しかし辺鄙な場所で営業していく上で、そういう努力は必要だろう。

スタイルはひと言でいうと、調味料重視。塩、コショウ、魚粉、昆布粉、醤油らしきもの、大量の天かす、ラード、ガーリックオイル、青のり、ミルでひく白コショウ、などなど、調理の各段階で、細かく使い分けていく。「ソースをかければ、どこでも同じ味」と言われるのが、くやしいのだそうだ。(


肉玉そば650円。たしかにソースの味に頼らない、複雑なうま味がした。

お好み焼き 大樹 (ひろき) (お好み焼き / 海田市、矢野)
★★★☆☆ 3.0

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2008-09-27

宮島口 あなごめし 「うえの」

 

あなごめしの「うえの」は創業100年の老舗。広島湾はあなごの産地で、あなごめしは宮島の名物なのだが、広島の知人は、宮島には渡ってしまわず、手前の宮島口のほうがおいしい、中でもこのうえのが一番だ、と教えてくれた。明治30年に宮島口の駅ができたとき、この店の初代が白飯ではなく、あなごのあらで炊きこんだ醤油味のご飯に焼いたあなごをのせ、駅弁として売り出したのが、あなごめしの起源だそうだ。

待ち時間は1時間。それはそうだろう、秋の気持ちよく晴れた土曜日、午前11時半。しかしずっと並び続けなくても、名前を言って番号札をもらうと、順番がきたら呼んでくれる。となりは待合室、奥にはサロンもあり、優雅に順番待ちができる。

 

あなごめし普通、1,470円。ご飯の上にはびっしりあなごが敷きつめられている。量も十分あり、この値段は安いと思う。

味は、全体にうす味なのが意外。関東の、甘辛いたれをたっぷり塗った、うな丼を想像していたからだが、考えてみたらここは西日本、うす味なのだ。さらにあなごめしは、冷えてから食べる弁当に焦点をあわせて味を調整しているため、温かいうちに食べると、なおさらうす味に感じるのだそうだ。これは次回は、弁当にも挑戦しなければいけない。

香ばしく焼いたあなごは、関東のように蒸したりしないから、ぷりっとした歯ごたえがあり、かつ十分やわらかい。淡い醤油味のご飯ももっちりしていて、あなごによく合う。まあ風情のある、上品な食べ物だ。丼にはしょうがが添えられ、香の物も三種類、味噌汁も大変おいしかった。

しかしこうして、西日本がうす味だということを考えてみると、あの広島風お好み焼きの、めちゃ甘酸っぱい、どろっとしたソースの味が不思議になる。あれは関東の人間からみても、濃すぎると思うくらいだからだ。でももしかしたら、あのソースの味、逆にうす味文化だったからこそ、強烈なインパクトがあったのかもしれないなと思う。

うえのホームページ
うえの (丼もの(その他) / 宮島口)
★★★★ 4.0

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2008-09-26

広島東雲本町 お好み焼き 三八(再訪)


三八の味をあらためて確認したい、ということに加えて、ほんとは色々話も聞けたらと思ったのだけれど、平日の午後1時すぎ、ちょっと時間が早かったかな、席も満席、持ちかえりも多いらしく、おばちゃんたち、鉄火場のような慌ただしさ、声をかけるのは遠慮してしまった。


上の写真のまんなかに見えるのが、アイロン。これを両手でもち、体重をかけてグイグイ押しつけるのだ。

三八で焼いているのを見ていると、お好み焼きがグニャグニャしている。移動したりひっくり返したりされるたびにプルプルしていて、軟体動物みたいだ。「みっちゃん・八昌系」の店では、麺をパリッと焼き上げ、それが最後には、ふわふわキャベツの上に乗っかるような形になるので、それが骨組みのようになり、わりかしカチッと焼きあがる。こちらは甲殻動物みたいだ。三八では麺もいっしょに蒸しあげられるので、骨組みになるものがないのだ。


待機している焼きそばの図。そばは朝6時から、一日で使うぶんをすべて、鉄板でいため、天かすとソースで味をつけ、それを冷まして大きなポリ袋にいれ、さらに冷蔵庫にいれて冷やしておく。使うとき、そのポリ袋からまた鉄板にあけ、ソースで味をつけいため、使うぶんはそこから小分けにされるが、残りはそのまま放置される。そのうち鉄板の熱で水分がとばされ、下のほうはカリカリになっていたりするのだが、そこまでするから、キャベツといっしょに蒸しあげられても、ふやけたりせず、美味しいのだ。


完成したお好み焼き。肉玉そばシングル、600円。青ねぎのトッピングはサービス。

やはり三八のお好み焼きは、ふんわりしてやわらかく、しかもキャベツにもほんのり、ソースの味がついているのが持ち味だ。アイロンで押しつけるとパサパサになりそうな感じがするが、不思議なのだがまったく逆なのだ。押つけられてキャベツから出た水分は、お好み焼き全体にひろがり、麺につけられたソースを溶かし、それがまたキャベツに味をつける。だからへたな調味料は必要ない。押しつけることが、一つの味付けにもなっているのだ。

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2008-09-25

広島庚午 お好み焼き 「タッグ」

三八系」という言葉をこれまで、「みっちゃん八昌がやっている焼き方、以外の総称」として使ってきた。意味合いとしては、みっちゃんや八昌が編み出した焼き方を現在の主流ととらえ、三八系の焼き方とは、みっちゃん・八昌以前に広島でお好み焼きが焼かれていた時の、その「元々のやり方」である、ということである。そしてその特徴は、生地を鉄板に伸ばしたら、まず麺をそこに載せてしまうこと、それからキャベツを蒸らすとき、上からアイロンで押し付けることである。

しかしこれは恐らく、あまり適切な言葉の使い方ではない。まだ断言して言うほど、広島でお好み焼きを食べていない訳だが、恐らく、三八の焼き方は、それ以前の焼き方と同じではない。三八の、去年亡くなった訳だが先代のご主人は、お好み焼きの焼き方について、それ以前の元々のやり方を踏襲しながらも、新たな境地を開拓しているのである。たぶん。

僕は古いお好み屋を三軒知っている。一つは自宅近くにある「さざんか」、次もやはり自宅近くにある「ふくま」、もう一つは三八の先代の出発点ともなった、「一休」である。

さざんかは50年前、ふくまは今の女将は27年だが、先代を含めると40年前から営業していて、この二軒はとくべつ関係は無いようだが、焼き方の基本はよく似ている。鉄板に生地を伸ばすと、キャベツやもやし、肉を積み上げる。両店に共通するのはまず、このキャベツの切り方、幅が太いのだ。5ミリから1センチ程もある。次にそれをひっくり返し、上にアイロンを載せたり、さざんかの場合はコテで押さえて蒸すのだが、両店とも、三八のようにぺしゃんこに潰して、キャベツが水分を放出して、鉄板上で音を立てる、という事はない。三八のキャベツが極細に切ってあるのに比べて、こちらは太いから、三八のようにキャベツの水分を放出させることは、物理的に無理であるという事もあるだろう。あくまで火の通りを良くする為に、上から押さえている、という感じである。

一休は36年前からの営業だが、ここも先代から数えると50年近いのかも知れない。ここは上の二店とは異なり、キャベツは極細切りである。しかしあまり強く押さえ付けない事は、上の二店と変わりがない。火を通す時間も短いので、キャベツは生っぽい感じで仕上げられるのだが、それがこの店の持ち味になっている。

これらの店が、「お好み焼きの元々の焼き方」という物を今に伝えていると考えるとすると、「極細に切ったキャベツを使い、上から強く押さえ付けて、キャベツの水分を放出させる」というやり方は、三八の先代が始めた事なのではないかと思うのである。


という訳で、前置きが長くなったが、「タッグ」。

この店はもともと、「三八なお」という名前で、廿日市で営業していたが、名前を変えて、こちらに移転した。女将は「三八」で3ヶ月間、修行したそうだ。なのだが、女将の焼き方は三八と大きく違うところがあって、それは麺の扱い方である。

三八では、鉄板に生地を伸ばすとまず、そこに味を付け、炒めた麺を載せるわけだが、ここでは麺は載せずに、キャベツともやし、肉で本体を構成し、麺は本体とは別に炒めはじめる。本体をひっくり返してじゅうぶん蒸らし、さらにアイロンで押し付けてキャベツの水分を放出させ、そのあと、いちばん上にある皮を剥がして、そこにソースと隠し味の醤油で、時間をかけて炒めた麺をのせ、皮を戻すのである。

何故そのようなやり方をするのか訊いてみると、三八と同じように麺を本体の中に入れてしまうと、キャベツの水分で麺がふやけ、美味しくなくなってしまうからなのだそうだ。三八はなんと朝の6時から、一日で使う分の大量の麺をいため、ソースとイカ天かすの味をつけ、それを冷まして袋に入れて、さらに冷蔵庫に入れて冷やす、という事をやっているのだそうだ。そこまでするから、あのように放出されたキャベツの水分にさらされても、麺がふやけてしまわないのだと言う。

なるほど、そうだったのか、三八の店主はそこまでしてでも、キャベツの水分を放出させるという事にこだわったのである。


肉玉そば、600円。コチュジャンを入れるかどうか、訊いてくれるのだが、今回はガーリックだけが入ったものを頼んだ。

キャベツを見たことも無いくらい、大量につかう。それもキャベツを積み上げるとき二段階に分け、半分積んで、昆布粉をふり、さらに残りの半分を積むようにしている。きちんと味をつけるのだ。そのキャベツにきっちり火が通り、ほっこりとして美味しい。ソースはミツワソース、ガーリックとこしょうが利いて、全体として辛目の味に調整されている。肉が三八と同様、きっちり5枚、「日」の字に並べられるところも嬉しい。

女将は最近、焼き方について迷うところがあり、お客さんからも「生麺を使って店でゆで、それをパリッと焼き上げる、みっちゃん・八昌式のやり方をしたらどうか」などとアドバイスされることもあるそうだ。

しかし頑張って欲しい。三八の焼き方は、今の主流ではないが、ただ古いのではなく、この焼き方でしか出来ない、独自の味の世界があるのである。ぜひそれを追求してもらいたいなと思う。生意気だが。

タッグ (三八なお) (お好み焼き / 古江)
★★★☆☆ 3.0

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2008-09-24

広島お好み村 「大丸堂」


「この店のお好み焼きが『三八』と似ている、三八好きは行くべし」という情報を入手したので、「俄か三八ファン」となっている僕としては、早速出かけて行ったという訳だ。
実際食べてみて、言っている意味は分からなくはないのだが、作り方の手順としては、麺を最後に合体させる「みっちゃん・八昌系」で、味も三八とは全く違うものだった。
まあ、それはそれで。

この店の焼き方の特徴として、まず「生麺ではなく、ゆで麺を使う」という事がある。
店内で麺をゆで、それを鉄板に空けるというのは、みっちゃん・八昌系の店にとっては、恐らく一つのパフォーマンスともなっている訳で、お好み村のような素人客の多い場所でそれをしないというのは、ポリシーの問題である筈である。

店員に聞くと、
「麺は時間をかけて焼かないと、生臭くなる、麺をゆでていると焼く時間が足りなくなるので、それはしない」との明確な答えだった。
「生臭い」というのは、「生っぽい」の意味だと思うが。
実際キャベツを蒸し始めると、すぐに鉄板に麺をあけ、ソースを加え、おもてうら、時間をかけて丁寧に焼いていた。

それから次に、キャベツを蒸す時、最後に何度も、上からコテで押していた。
これもみっちゃん・八昌系では珍しい。
店員に聞くと、やはり、
「キャベツが生臭いと、おいしくない」とのこと。
この店は、生っぽさを徹底的に嫌うのだ。

味付けは、魚粉を大量につかう。
生地を丸くのばしたら、魚粉、それに昆布粉、さらに仕上げにも魚粉を使っていた。
化学調味料は使わない。


肉玉そば、735円。
ちょっとパサパサした感じもするのだが、生っぽさを徹底排除した、硬派な味。
男のお好み焼きである。

大丸堂 (その他 / 八丁堀(広島))
★★★☆☆ 3.0

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2008-09-23

広島祇園 お好み焼き 「きさや」


店主は、東雲本町のお好み屋「三八」で、10日間であるが修行し、三八の先代、日高光行氏の「弟子」を自認する人である()。
焼き方はたしかに、三八のやり方をきっちり踏襲している。

注文を受けると、鉄板に生地をのばすのと同時に、麺に火を通し始める。
そばの場合は三八と同様、事前に天かすを混ぜ込んであるものを使う。
鉄板に出すと、アイロンを上に置いてそのまましばらく火を通し、ソースを加えて全体を大きく炒める。
麺にしっかりと味を付けるというのが、三八の一つの特徴だ。

魚粉をふった生地の上に炒めた麺をおき、大量の、かなり細く切ったキャベツ、そして天かす、もやし、豚肉を積み上げていく。
そのまましばらく火を通し、ひっくり返す。
途中で向きを変え、火が均一に回るようにしながら、さらに火を通す。

そして、アイロンで上から押し付ける。
三八でやっているのと同様、かなり強く押さえ付け、キャベツから出た水で、鉄板がジューと音を立てる。
卵を割り、押さえた本体を上にのせ、しばらく待ってひっくり返す。
ヒガシマルソースを塗り、ガーリックやコショウなどを配合した調味料、白ゴマ入りの青のり、を振って完成。


肉玉そばシングル、650円。

さて味であるが、このお好み焼き、めちゃくちゃ美味しかった。
僕が今までいちばん美味しいと思っていた、「かんらん車」と同じくらいと思う。
本家の三八より、こちらの方が美味しい。

まず全体が、ふんわりと柔らかい。
三八系の焼き方だから、麺がやわらかく仕上がるという事も大きいが、何よりこれは、キャベツの調整に理由がある。
極細に切られたキャベツは、ほっくり火が通っているのだが、一本一本の歯ごたえがする程度にはみずみずしい。
キャベツの切り方、蒸らす時間、押し潰してキャベツの水分を出す、その力加減、それらの兼ね合いなのだろう。
それが全体として、ふんわりとした柔らかい食感を生み出すのである。

三八では、この店と比較すれば、キャベツに火が通りすぎ、水分が出切っているのだろう、キャベツの食感はあまりなかった。
この店の柔らかなキャベツの食感は、むしろ「一休」と近いのだが、一休では火の通し方が足りないのだろう、キャベツは鉄板上で、時間をおうごとに急速に水分を放出し、ペシャッとなってしまう。
キャベツの調整に関して、この店は三八、一休の上を行っていると思う。

またこれは「三八系の焼き方」というもの自体による事なのだが、このお好み焼きは、具材の全てにソースの味がついている。
麺にソースで味を付けるから、それを載せた生地にも味がつく。
また押し潰すときにキャベツから出た水は、上部に接する麺を洗い、付けられたソースを溶かし出し、それはまたキャベツに味を付けるだろう。
最後に載せられる玉子にも、上からソースが塗られる。
このようにお好み焼きの上から下まで、全てにソースの味が付いているという事が、しみじみとした美味しさを生み出すのである。

かんらん車」だけは別なのだが、一般の「みっちゃん・八昌系」の焼き方では、そうは行かない。
手順上、ソースは最後に玉子の上に塗られるだけだから、麺やキャベツには、直接味が付いていない。
そうすると、どうしても味が足りない感じになるし、またそれが、調味料の多用をまねく原因にもなっているのだと思う。

更に、この店のお好み焼き、味のバランスがとても良いのである。
魚粉やイカ天かす、ガーリックなど、かなり個性の強いものが入っていて、三八ではそれらの味が、一つひとつ個別に感じられた。
こちらにも同じものが入っている訳だが、どうしてなのだろう、それらは個別に突出せず、辛口のソース味と、ピリッと利いたコショウの味のもとに、全体として統合され、調和しているのである。
これはもう、店主のセンスであるとしか、言い様がない。

とにかくこの店、三八系の焼き方のすごみを存分に感じさせる、名店であると思う。

それからこの店、平日の昼にはコーヒーのサービスが付く。


こういう気遣いは嬉しい。
また接客も、全体として大変よかった。

きさや (お好み焼き / 下祇園)
★★★★★ 5.0

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2008-09-22

広島高須 お好み焼き サンQ


この店、名前が「三九」だから、東雲本町のお好み屋「三八」と関係があるのかも、という話は耳にしていたのだが、実際その通りだった。
女将はもともと三八のお客さんで、先代夫妻に可愛がられ、その薦めでお好み屋を開業したのだそうだ。
焼き方も三八で教わり、
「三八での教えを忠実にまもって焼いています」とのこと。
実際、麺の下処理に天かすを入れるところから、仕上げにガーリックを振るところまで、三八と全くいっしょだった。


肉玉そば550円。
たしかに三八直系の味。
麺とキャベツの一体感が楽しい。

食べながら女将とちょっと、焼き方の話になったのだが、やはり元々は、丸くのばした生地の上に、まず麺を載せるというやり方だったそうだ。
「麺を最後に合体させるやり方が、いつ頃、どうやって生まれたんでしょうね」と訊くと、
「これは私の想像ですが」と前置きしながら、
「繁華街で大量のお好みを焼くために編み出された、合理的なやり方だったのではないか」とのこと。

お好み焼きは、生地とキャベツ、もやし、肉、までは、すべてに共通な部分である。
麺については、そばかうどんか、シングルかダブルか、という選択があり、さらにエビやイカ、もち、イカ天などのトッピングを入れるかどうか、という選択があって、これは実際に注文を聞いてから決まる。
繁華街では少しでも短い時間でお好みを焼き上げないといけないから、お客が店に入ってきた時点で、注文を聞く前に、共通部分については焼き始めてしまい、選択部分については注文を聞いた後で調整できるよう、工程を切り離したという事だったんじゃないか、と言うのである。

うーむ、なるほど、これはたいへん納得できる話である。

サンQ (お好み焼き / 高須)
★★★☆☆ 3.0

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2008-09-21

広島高須 お好み焼き 「ふくま」

三八一休へ行って以来、麺がいちばん下に来るように焼く、三八系の焼き方の良さが分かってきた。
みっちゃんや八昌などの焼き方では、強く焼きを入れられ、玉子とソースがからんだ麺が一番上にあり、その存在を強く主張している。
それはそれで、もちろん美味しい訳だが、三八系の焼き方では、麺はもう少し控えめで、それでいて重要な役割をはたしている。

三八系では、鉄板に生地がまるく敷かれ、その上にソースで味をつけ炒めた麺、キャベツ、豚肉、の順で積み上げられていく。
ひっくり返してしばらく蒸され、さらにアイロンやコテで上から強く押し潰される。
この時、上下で隣りあった麺とキャベツは、押し潰されることでその境界をこえて混じりあい、麺につけられたソースの味がキャベツに移り、またキャベツの水分によって麺は柔らかくなり、両者は一体となることで、より高度な味へと昇華するのだ。
それほど大袈裟なものではないが。

なので、みっちゃんや八昌では、麺はパリッとした口当たりが持ち味だが、逆に三八系では、麺が柔らかく、むしろ存在すら感じさせないことによって、お好み焼き全体として、しみじみとした味わいを生み出すのだ。

という訳で、本当は今日は、コメントで教えてもらった、三八で修行したという祇園の店に行ってみたかったのだが、雨模様だったので断念、知人から「建物はぼろいが、味はおいしい」と教えられていた、近所の「ふくま」に行った。



建物は本当に朽ち果てそうで、もう40年になるそうである。
初代の人が13年やったが、結婚することになり、今のママが引き継いで27年になるそうだ。
広島のこの種の店に共通することだが、たしかに建物はぼろいし、店内もマンガやら民芸品やら、何やらかにやらでゴチャゴチャしているのだが、不潔というのとは違う。
年季の入った空間は、妙に心やすらぐものがある。

ビールは自分で冷蔵庫から出すようになっている。
ドライのレギュラー缶、300円。
お好みができるまで時間がかかるというので、野菜の天ぷらをサービスで出してくれた。

焼き方は三八系だが、ママの独自の考えもある。
いちばん重要なのは、「麺の質は、どんなことがあっても落とさない」ことなのだそうだ。
麺はいつも決まった店から仕入れているが、同じ店でも麺を打つ人が変わると、それだけでもう出来上がりが違う。
たまに麺が足りなくなって、別の店で買い足したりする時、値段の安いのを買ってしまったために、使い物にならなかった事もあったそうだ。

麺の扱い方も、他のこの手の店にくらべると念が入っていて、袋から出した麺を鉄板にのせ、そのまましばらく置いて、十分あたためる。
麺をほぐして油を足し、塩とコショウで味をつけ、そのあとさらにコテで押し付けながら焼きを入れる。
かなりパリッとさせるのだ。
「一旦こうやってパリッとさせてから、キャベツの水分で柔らかくなるのがおいしい」のだそうだ。

そこまでかなり時間をかけてから、生地を鉄板にのばす。
魚粉をふりかけ麺をのせ、大量のキャベツをのせるのだが、このキャベツの幅がたいへん太い。
1センチ近くもありそうである。
何か理由があるのかと訊いたら、
「私の性格が大雑把だから」だそうだ。
あはは。

蒸すのにそれほど時間を掛けるでもなく、お好み焼きは完成されていく。
アイロンで押しはするが、それほどぎゅうぎゅう押し付けるわけではない。
「キャベツは生でも食べられる物なのだから、そんなに強く火を入れなくてよい」のだそうだ。
たしかに。



肉玉そば550円。
青ねぎのトッピングはサービスしてくれる。

このお好み焼きは、三八系でありながら、麺とキャベツを融合させるのではなく、パリッとした麺と、生っぽいキャベツが、それぞれの存在を独自に主張するところに特徴がある。
それはそれで一つの考え方で、実際悪くない。
お好み焼きは食べ進むとモサモサしがちだが、これはそういう事とは無縁で、最後のひと口まで、変わらずにおいしく食べられる。
鉄板の上に置いているうちに、さらに火が通って味が変わり、美味しくなるそうなのだが、今日は火の点いていない側で食べてしまったので、それは体験できなかった。

ふくま (お好み焼き / 東高須)
★★★☆☆ 3.0

広島ブログ

2008-09-20

広島東高須 お好み焼き ちいちゃん

広島というのはとにかく、お好み屋がたくさんあるのである。
市内の中心部には、それこそみっちゃんだとか、八昌だとか、観光客をたくさん集め、休日には行列ができるような店がある。
しかし広島市民は、そういう店にはあまり行かない。
聞くとだいたい、家の近所にお気に入りの店があって、そこへ行き倒すのだ。

僕の住んでいる界隈にも、けっこうな数のお好み屋がある。
それが表通り沿いにはむしろ少なくて、住宅地の裏通りみたいな場所に店を構えているケースが多い。
昔はふつうの主婦が、自宅を改造してお好み屋を始めたりしたのだそうだ。
子供をあやしながらお好みを焼いたというから、今のようにパートの口もあまりない時代、お好み屋は子持ちの女性ができる仕事、という位置づけでもあったのだろう。
実際小さなお好み屋は、仕入れから仕込み、調理、接客まで、女性が一人で切り盛りすることが可能である。

しかし何故、お好み焼きなのか。
戦後に登場し、古くからの歴史や伝統を持つわけでもない、一つの食べ物が、広島という場所で特異的に、何故毎日のように食べられるものにまで広がっていったのか、本当に不思議である。

と不思議に思いつつ、今日は近所でお好み焼き。



秋の晴れた休日の午後、ビールを一杯やりながらお好み焼きを食べるというのは、一つの贅沢である。
この店は10年前に始めたそうだが、美人のママにお手伝いのおばちゃん。
客は僕だけだったのだが、目の前で次から次へと、何枚ものお好み焼きが焼かれていく。
近所に配達もしているのだ。

「焼き方は誰に習ったんですか」と聞くと、
「最近はオタフクさんが講習してくれるんですよ」とのこと。
麺を初めに生地にのせてしまう三八系の焼き方ではなく、ソースで味をつけ炒めた蒸し麺に、最後に本体をのせるやり方だ。

「でも焼き方はその店それぞれですから」とも言っていたが、この店では卵を割ると、お好み焼きのサイズよりひと回り大きな円形に、それをていねいに伸ばしていく。
そうするとその上に本体をのせ、最後にひっくり返した時に、お好み焼きがかわいい玉子のお帽子を被ったようになるのである。
これがこの店の工夫なのだろう。



肉玉そば入り550円。
麺にはそれほど強く火を通さないから、蒸し麺のぷにぷにした食感がする。
それを食べながら、ああ、お好み焼きはやはり焼きそばを、生地と玉子で封じ込めたものであって、オムそばとかそういう洋食の一種なんだと、改めて思った。

ちいちゃん (お好み焼き / 東高須)
★★★☆☆ 3.0

広島ブログ

2008-09-19

広島立町 韓国冷麺 南大門

冷麺と言えば、韓国である。
しかし広島では、冷麺と言えばつけ麺のことを指し、韓国の冷麺は「韓国冷麺」と呼ぶのだが。

僕は韓国で冷麺を食べたのは数回で、また日本でもそれほど冷麺は食べないから、知ったような口は利けないことはもちろんなのだが、印象として言えば、韓国の冷麺と日本の冷麺との大きな違いは、麺である。
韓国の冷麺は糸のように細くて、色が濃い。
そば粉が主成分で、片栗粉や小麦粉をつなぎとして使うから、そばの色なのである。
味もそばのしっかりした味がする。

それに対して日本の冷麺は、そば粉を入れないのが多い。
たぶん。
盛岡冷麺には、そば粉は入れないそうだ()。
なので味が淡白で、片栗粉が入っているから噛み応えはあるのだが、太さも太めなので、ちょっとところてんみたいな感じがする。
何故そば粉を入れるのをやめたのか、色々理由はあるのだろうが、麺にインパクトがない分、日本の冷麺は焼肉のあとの仕上げには良いが、単品料理としての魅力にイマイチ欠けるところがあったと思う。



さて今回、南大門の冷麺。
南大門は広島における焼肉店の老舗で、1961年の創業、親子三代で通いつづける人もいたりするらしい。
焼肉はもちろんだが冷麺も評判が良く、コメントで薦めてももらったので、来てみる事にしたわけだ。
昼の1時15分ごろ到着したのだが、まだ満席で、昼からビールに焼肉、という人もけっこう多かった。



冷麺、シングルは1,000円だが、これはダブル、1,300円。
巨大な丼に山盛りで登場。
麺は倍量になるそうだ。

この冷麺、早くも結論を言ってしまうと、大変おいしかった。

まず麺がおいしい。
ここはそば粉をきちんと使っていて、そばの味がしっかりする。
絶対このほうがおいしいと思うのだが、他ではどうしてそうしないのだろう。
そんなに他のことは知らない訳だが。
とにかく、二度も言ってしまうが、このそばの味がしっかり利いた麺が、大変おいしかった。

汁もなかなかおいしかった。
写真でも分かるとおり色がけっこう濃いので、醤油などのうまみ系の調味料を、色々使っているのだと思う。
韓国人の味覚と日本人の味覚はかなり大きく違うので、特にスープに関して、韓国の味をそのまま日本に持ってきてしまうと、日本人の口に合わないことがある。
いちばん大きいのは、日本人には「うまみと塩気」が足りないように感じてしまうのだ。
なのでそれを良い加減に追加しているのだろう。

具は、キムチ、チャーシュー、酢で和えたきゅうり、錦糸玉子、りんご、それに薬味で青ねぎとゴマ。
韓国では冷麺には牛肉が入っていて、豚肉だと冷やすとどうしてもちょっとモソモソしてしまうのだけれど、値段的なものもあるのだろう。

それから特筆すべきは、卓上に置いてある辛味噌。
何も入れなくても十分おいしく、辛さもちょうど良かったので、半分ほどはそのまま食べたのだが、コメントには「これをたくさん入れる」と書いてあり、店のおばちゃんに聞いても、「お好みだが、自分はそれと酢をたっぷり入れる」と言っていたので、僕も試してみたのだ。
これがすごい。
この辛味噌、ただ辛いのではなく、何だかは分からないが、うまみの素が色々入っているのである。
入れると辛くなるというよりも、味に深みと奥行きが出る。
そして酢がまたそれをよく引き立てるので、驚きだった。

南大門 (なんだいもん) (焼肉 / 立町)
★★★★ 4.0

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2008-09-18

お粥レシピ 白粥


朝のお粥は三日坊主にはならずに続いている。
色んな種類のお粥を試してみようとは思ってはいるのだが、結局ほとんど毎日白粥。
朝ということもあり、下手なものを入れるより、これがいちばん旨いと思える。

米は前の晩に研ぎ、七倍量の水に浸しておく。
中火にかけ、沸騰したら火を弱め、鍋の底から大きく混ぜ、あくを取って、隠し味ていどの塩を投入。
あとはとろ火で30分。
吹きこぼれないように、ふたはずらして隙間をあけておく。
火を止め、10分蒸らして出来上がり。

白粥の場合、汁気の多いしゃばしゃばしたものよりも、長めに炊いてきちんと蒸らし、ちょっとねちっとさせたほうがおいしいと思う。

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広島観音新町 盛岡冷麺 いわて


西区観音新町という、中心街からはだいぶ離れたところにある。
ホームページのよると、先代の社長が、「岩手の冷麺を広島の人にも食べてもらいたい」とこの店を始めたのだとか。
もっと中心地でやればいいのにな。

盛岡冷麺はもともと、今の北朝鮮から、朝鮮戦争で逃げてきたのだろう、盛岡に渡ってきた人がはじめた焼肉屋で出されたものだそうだ。
それが色んな店に広まり、今では盛岡といえば冷麺、と言われるくらい、有名になった。
あ、もちろんわんこ蕎麦もあるけどね、盛岡。
盛岡ではジャージャー麺も有名だそうで、盛岡の人は麺類が好きなのかもしれない。

韓国の冷麺は、麺はそば粉を主原料とし、つなぎとしてでんぷんや小麦粉を入れるそうだが、盛岡冷麺ではそば粉は入れず、でんぷんと小麦粉が主原料だそうだ。
またスープも、韓国では鳥や牛の出しに水キムチの汁を混ぜるそうだが、盛岡では水キムチの汁は使わないとのこと()。
その代わり酸っぱさを出すために、キムチを入れるのかもしれない。
また韓国に比べて、麺が太いのも、盛岡の特徴だそうだ。



さてここいわての冷麺、おすすめ筆頭は「いわて冷麺(キムチ入り)」950円。
麺を1.5玉にしても、値段は変わらないので、僕は当然それにした。
韓国の冷麺とはだいぶ趣がちがって、なるほど、ふむふむ、こんな感じなのかー、と思いながら食べた。

ただ一つ、どうなのかと思うことがあって、この冷麺、冷たい汁に唐辛子が入っていて、しかも中華麺などとちがって麺にあまりインパクトがないので、味のバランスとしてちょっとツライというか、からだが冷える感じがするというか、そういうものがある。
ほっとできる逃げ場みたいなものがないんだよね、辛さに追いつめられる感じで。
夏なんかはその方がいいという人もいると思うので、まあそういう向きにはおすすめだが、盛岡では冷麺は、基本的には焼肉屋のメニューの一つとして供されるとのこと。
焼肉をたべた火照ったからだで食べるのには、僕もたしかに打ってつけだと思う。
またソウルの冷麺専門店では、ユクスという温かい牛肉のスープをいっしょに出す。
それもからだを温める工夫なのだと思う。
ここでも何か、そういう配慮があったらいいのにな、とちょっと思った。

いわて (冷麺 / 高須、江波)
★★★☆☆ 3.0

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2008-09-17

広島中広 ラーメン 紺屋


この店は、店のホームページにも書いてあるが、
「化学調味料を使わず、自然の味を追求したラーメン」
を出す店なのだ。
「おいしくて体に良いラーメンの店」
がキャッチフレーズ。
店の客席にも、メニューの他にわざわざ一枚、それを延々と説明する文が置いてある。
これはつまり店主は、
「化学調味料を使うということが、不自然で体に悪い」
と言っているわけだが、要は化学調味料というものを悪者に仕立て上げ、
「自分はそっちじゃないから、だからいい者だよね、にこ」
と訴えるというやり方、何かをけなすことで、自分の存在場所を確保するというやり方をしているわけである。

これは世の中でほんとによく使われる、常套手段であるとは思う。
例をあげればキリが無いが、アメリカがアフガンやイラクを攻撃する時に使われる文句、「テロの脅威」も、まさに同じだ。
アメリカの場合、貿易センタービルに民間航空機を突っ込まれるというとんでもないことをされ、何千人という人が死んだわけだから、その首謀者であると犯行声明を出したビンラディンとタリバンが潜むアフガンを攻撃するというのは、まだ理解できるものもある。
しかしその余勢を買って、イラクが核兵器を隠しているからテロの脅威だといって攻撃し、政権を転覆させ、フセイン大統領を死刑にしてしまう。
テロの脅威と言うともっともらしく聞こえるが、それではイラクが核兵器を持っていたのかと言えばそうではなかったわけだし、イラクでアメリカ兵が非道な拷問をしていたりということも、何となくその錦の御旗の影で見過ごされてしまう。

これはもちろん、分かりやすいかなと思って、いちばん悪質なものを例として挙げてしまったわけで、化学調味料の場合は、話としてはもっと穏やかなのは言うまでもない。
しかしやっていることの構造は同じなのだ。

まず「化学調味料が不自然で体に悪い」というが、それは本当にそうなのか、ということがある。
毒入りの米や粉ミルクとなれば、それは体に悪いのはもちろんだし、農薬なんかも体にはあまり良くないだろう。
しかし化学調味料はサトウキビを発酵させ、それを精製して作られるもので、それが「体に悪い」とはどんな根拠があるのか、聞きたくなる。

しかしまあ、それは僕としてはどちらでも良いのだ。
化学調味料が体に良くても悪くてもいい。

それよりこの件にかんして一番のポイントは、「化学調味料を使っていないからいい者だ」という印象を人にあたえることで、「それではこの店が実際に何をやっているのか」ということが見えにくくなっているのではないか、ということだ。
「化学調味料を使っていないのだから、いいことをしているんだろう」と思いがちだが、本当にそうなのか?
こういう錦の御旗があるときは、「実はたいしたことやってないんじゃないか」ということをいつも疑ってかからないと、コロリとだまされてしまう危険があると僕は思う。


しょうゆラーメン800円。
写真だと分からないのだが、まずどんぶりが小さいことに驚く。
高さがあって、容積としては普通の丼とさほど変わらないのかもしれないが、ラーメンの丼としては間口というのか、開口部の面積が小さいから、「小さい」という印象を持つことはたしかだ。
でもたぶん、店主はそれを計算しているだろう。
この驚きは店主が、
「いやいや、小さく見えますが、中身は充実してますよ」とか、
「そう、これは普通のラーメンとは違うんですよ」
いうようなメッセージを伝えようとしているということなのだと思う。
店主はけっこうな戦略家なのだ。

さて肝心な丼の中身なのだが、たしかに良い材料をいろいろ使っているのだろう、また調理の手腕も並ではない。
チャーシューもトロトロすぎず、ちょうどいい加減のもっちりとした感じ。
味も上品につけられている。
ゆで玉子も信じられないほど味が濃い。
出しの具材や醤油なども、良いものを選びに選んでいるのだろう。
麺もちょっと固めでモソモソした感じで、スープとの絡みもよい。

また店主が様々な工夫をする人であるということも伝わってくる。
このラーメンにはメンマが入っていなくて、その代わりタケノコを薄味で煮含めたようなものが入っている。
洒落ていると言えば洒落ている。
白菜をちょっと湯がいたようなものも入っていて、これは普通のラーメンには全く入っていないものだから、これこそ店主が「これは普通のラーメンとは違うんですよ」と主張する、その象徴のようなものだが、上品な感じがすると言えばする。

とまあ、一つひとつの要素を見れば、どれもそれなりなのだ。
しかしそれでは全体として見たとき、このラーメンはおいしいのか?

いちばんの問題は、スープがかなり甘く調整されていることだ。
ラーメンのスープというより、煮物の汁に近い味がする。
これももちろん、店主が「普通のラーメンではないラーメン」を演出しようとしてそのようにしている訳だが、僕に言わせれば、申し訳ないがこのラーメン、スープと具と、全体を考え合わせると、食材マニアが悪ふざけをして、ラーメンに似た煮物をつくって喜んでいる、というようにしか思えないのだ。
「どうです?このラーメン、ちょっと変わってて、お洒落でいいでしょ、食材にもかなりこだわってます、分かってくれました?」という店主の声は聞こえてくるのだが、それはただ虚ろに響くだけだ。
「ラーメン」という歴史ある食べ物を本当に正面から受け止め、それを踏まえた上で自分なりの解釈をするという誠意が、このラーメンからは感じられないのである。

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2008-09-16

広島安佐南区 お好み焼き 一休


先日、東雲(しののめ)の「三八」に行った話を書いたら、三八のルーツが安佐南区山本にある「一休」であり、そこは「おいしいからぜひ行ってみて」とのコメントをもらった。
考えてみたら僕はこれまで、家の近所の店は別として、「みっちゃん系」か「八昌系」の店ばかりに行っていて、広島風お好み焼きの三大系列()の残り一つである「三八系」の店には、あまり積極的に行ったことがなかったのだ。
三八系の有名店がどれも郊外にあり、家からちょっと遠いということと、また三八系の有名店自体が、あまり数が多くないということが理由である。

しかし実際考えると、みっちゃん系の店とは、みっちゃんで修行した人が開業した店、八昌系とは八昌で修行した人が開業した店と、ざっくり考えるとして、広島市内には2,000軒のお好み焼き屋があるそうだが、そのうちそれらは何軒くらいを占めることになるのだろう。
1,000軒は行かないだろう。
500軒も行かないのではないか。
これは僕の全くの想像なわけだが、二軒の店が出発点だから、その子店、孫店で修行した人も含めるとしても、そうそう大きな数にはならないような気がする。
そうだとすると、広島のお好み焼き屋の大多数は、三八系であることになる。

これはもちろん、その全てが三八という店で修行したという意味ではなく、「三八系」という言葉は、お好み焼きの焼き方として広島に元からあった、「古いやり方」で焼く店、という意味で使われている。
みっちゃん、八昌、それぞれの店主は、お好み焼きの焼き方について、それぞれ新しいやり方を見い出したのだ。
三八系の焼き方とは、麺を初めに生地に載せてしまうことを指すが、たぶん、地域でおばちゃんが一人で回しているような小さな店は、未だにほとんどこの焼き方をしているのではないかと思う。
僕がこれまで行ったそういう店は、全てそうだった。
そう考えれば三八系にこそ、広島風お好み焼きの本丸があるとも言えるのである。

という訳で、「一休」。
安佐南の山の麓にあり、まあ、のどかでいい場所だ。
聞くと三八は、この一休の女将の弟さんが始めた店で、焼き方は女将が教えたとのこと。
たしかにこの店は、三八のルーツなのである。

店は近所の社交場も兼ねているようで、僕は1時半過ぎに行ったのだが、まだ数人、おばちゃんが残っていて、女将とぺちゃくちゃおしゃべりしていた。
女将は今年76歳、「肝っ玉母さん」といった趣の、腹の座った商売人で、
「人生はなるようにしかならん、色々考えたってしょうがない、その時になって考えればいい」などとニヤニヤしながら言い放つ。
僕もすぐにおしゃべりの輪に巻き込まれ、店の話もいろいろ聞かせてもらうことができた。

「焼き方を誰に習ったのか」と聞くと、
「見よう見まね」だとのこと。
女将は元々この店の客だったのだが、36年前、自分がこの店をやることになった。
お好み焼きを焼くというのは簡単そうに見えるが実はとても奥深い世界で、鉄板の温度と火の加減とか、キャベツやそば、肉など材料をどんなものを使うのかとか、3年くらいは試行錯誤して、なかなか上手くできなかったそうだ。
とにかく仕事が好きで、お好み焼きを焼くことが自分の楽しみなのだと言う。

店の真ん中に大きな鉄板があり、その周りに詰めても7、8人。
みっちゃんや八昌では、鉄板の焼け焦げを、一回作るたびごとにコテでこそげ落とし、鉄板の全面がつねに黒光りしているという状態を保つのだが、ここではあまりそんなことは考えないようだ。
焼け焦げや材料の切れっぱしなどが、鉄板の上にそのまま残っている。
不潔というのとはまた違うのだが、たぶん細かいことは気にしないのだ。
三八でも、それは全く同じだった。

注文を聞くとまず、そばを袋から出し、鉄板に置く。
と同時に生地を丸く伸ばすのだが、穴があいても気にしない。
鉄板でほぐした麺を生地にのせ、ソースで軽く味をつける。
大づかみにした細切りキャベツ、天かす、もやし、豚バラ肉4枚。
そのままちょっと置いて、ひっくり返す。

しばらく蒸して、丸いアイロンで上から押し付ける。
卵を割って、本体を上にのせ、ひっくり返して、ヒガシマルソース、味の素、コショウ、ガーリック、青のり。
そば肉玉シングル、今どき550円。


さてこのお好み焼き、最大の特徴は、キャベツにある。
今までこういうのは食べたことがないし、三八ともまた全然ちがう。

三八ではアイロンでぎゅうぎゅう押すことにより、キャベツの水分を徹底的に追い出すわけだが、こちらのキャベツは、やはりアイロンで押してはいるが、火をかける時間がみじかいのだろう、まだ半生の状態だ。
半生だと普通は生っぽい感じがするところだが、ここではキャベツを他のどの店より細く、糸かと思うような幅で切ってある。
その細長いキャベツの一本一本が、熱を加えられてしなっとしてはいるが、まだ水を含んでいる状態、これ以上火をかけるとその水が全部出てしまう、その寸前、というほんとに微妙な、良い加減のところに調整されているのだ。

ほっくり、というのとはまた違い、もっと繊細な、ふわふわとして柔らかく、かつみずみずしい、という歯ごたえである。
厳選された元々甘いキャベツが、火を加えられてさらに甘みが引き出され、それがソースの甘辛い味と溶けあうと、もうこれは幸せとしか言いようがない。
これが女将が見よう見まねで試行錯誤しながら、到達した場所なのだろう。
あの一見、雑にも見える作り方が、このような繊細な味を生み出すのは、ちょっと驚きである。

しかしこのお好み焼きも、食べ進んで残り半分をこえる頃には、鉄板の火で加熱が進み、キャベツはぺしゃっとしてしまう。
ちょっと残念だが、それは仕方がないことだろう。
あのキャベツの加減は、一瞬の輝きなのだ。
しかし逆に、このお好み焼き、持ち帰っても味が変わらないそうだ。
空気中の水分を吸い込んでしまうことが無いからなのかも知れない。

この店、女将と、もういい年の娘さんと、二人でやっているようだが、二人ともまあとにかく人が良く、お冷がなくなればさっと注いでくれるし、僕が三八に行って、それでここを聞いてきたと言えば喜んでくれるし、帰りも満面の笑顔で「またきてね」と送り出された。
初めて会ったのに、親戚の家にでも行ってきたような気分である。
いや本当に、いい土地に越してきたものだなと思う。

一休 (お好み焼き / 下祇園)
★★★★ 4.0

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2008-09-15

広島地蔵通り お好み焼き 貴家。


この店の店主は、まだ若いのだが「みっちゃん総本店」で15年修行し、うち4年は店長をつとめていた()というツワモノだ。
2004年4月オープンだからまだそんなに時間も経っていないのだが、けっこうな評判で、入り口近くには何十枚という色紙が貼ってある。
そのうち一枚に沢口靖子の名前が見えたので、NHKとのつながりでもあるのだろうか。
ホームページも開設し、ネットテレビで店の様子をオンラインで中継したり、ネット販売もしたりと、いろいろ努力している。
ネット販売では、年末には二ヶ月で1,200枚の受注があった()というから、事業人としてもバランスが取れているのだろう。

みっちゃん総本店の会長は、広島風お好み焼きを現在のように「広島の名物」にまで育て上げた、中心人物である。
まだ広島をたいして知りもしないくせに言い切ってしまう訳だが。
今主流となっているお好み焼きの焼き方を考え出し、そのお好み焼きを大量の人に提供するための仕組みを、店舗のあり方や、駅や空港などでの販売、ネット販売、などなど全て考え、さらにそれを実現するための人材の育成にも熱心に取り組んでいる。
広島風お好み焼きの屋台骨を担っていると言っても過言ではない。
たぶんだが。
会ったことはまだないが、おそらく強烈な個性の持ち主だろう。
そのような人のもとで15年働き、そして独立するということは、総本店のDNAを当然色濃く継承しながらも、自分自身は何をめざすのか、みっちゃんとは異なるどこへ向かおうとするのか、ということを明確にする努力が必要だったに違いない。

この店のばあい、それが一番はっきりと表れているのは、店舗のあり方である。
みっちゃん総本店は、客に鉄板で食べさせることを放棄した。
もちろん総本店にも巨大な鉄板があり、そこで大量のお好み焼きが焼かれるわけだが、その前には椅子は5脚ほどしか置かれておらず、リクエストすれば鉄板前でも食べさせてくれるが、何も言わないとテーブル席に案内され、お好み焼きは皿に盛られて運ばれる。
たくさんの客にお好み焼きを提供するためには、鉄板前に座らせるだけでは限界があるのは当然のことである。
これは僕の想像だが、総本店会長は、屋台時代の古い固定観念に囚われないようにしようと心がけたのだ。
屋台時代とは桁ちがいの数の人にお好み焼きを提供することを、屋台時代の形に囚われることなく思いえがく努力をし、それを大胆に実行したところに、みっちゃんの今の飛躍があったのだ。
鉄板で食べさせることの放棄は、そういうことの一つだったのだと思う。

しかしこの貴家。は、鉄板で食べさせることにこだわった。
店を入ると手前に大きな鉄板があり、お好み焼きはそこで焼かれ、その前にもちろん客も座るようになっている。
しかしそれだけではなく、さらに奥に向かって、カウンター状の台の上に細長い鉄板が続いている。
お好み焼きを焼くためではなく、あくまで食べるための鉄板なのだ。
テーブル席はない。
「お好み焼きは鉄板で食べる」という原点に、この店は改めて立ち返ろうとしているのである。

またこの店は夜は居酒屋風になるようで、焼酎などお酒を何十種類と置き、つまみの鉄板料理もかなりの品数を用意している。
夜の12時まで営業しているそうで、昼からの営業だから、店主は若いとは言え大変である。
客は全てカウンター席にいるわけだから、ただ飲食を提供するだけではなく、時には酔っ払いの話し相手にならないといけない。
苦労は並大抵ではないだろう。
みっちゃん総本店にいた頃には、全く存在しなかった苦労である。

しかしたしかにその通り、客は機械ではない。
高度経済成長の時代には、おいしいお好み焼きが目の前にあり、ただそれを口に運べば人は満足していたのかもしれない。
しかし今の時代は、それだけでは十分ではなく、お酒も飲んだり、一緒に色々つまんだり、店員や周りの客とちょっと話しをしたり、などということの総体に、「食べる楽しみ」が存在するようになっている。
みっちゃん総本店のやり方では、今の楽しみに対応しきれないのである。
そんな時代の変化に合わせて、この店はただ「おいしいお好み焼き」という物体を客に提供するということのみに留まらず、お客に食べる楽しみを感じてもらうこと自体を目指しているのである。
おおげさだが。


さてそのお好み焼きだが、ひとことで言うと「直球ストレート」。
みっちゃん総本店の流儀を、大切にしながらもさらにブラッシュアップさせ、総本店よりおいしいお好み焼きを出す。
ソースから生地、キャベツ、もやし、焼き方、それぞれに独自のこだわりがあるそうだ()。
野菜はみずみずしく味があり、麺はかりっとしている。
途中で飽きることなく、最後のひと口までおいしく食べられる。
かんらん車」のような革新的な転換はないが、かなりのレベルだと思う。

地蔵通りは拙宅からちゃりんこで30分ほどかかるので、酔っ払うと帰りがしんどいのだが、今度はぜひ夜の時間帯に行ってみたいと思う。

貴家。 (たかや) (お好み焼き / 中電前)
★★★★ 4.0

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2008-09-14

広島東雲本町 お好み焼き 三八


広島風お好み焼きの焼き方は、麺の扱い方によって大きく分けると二種類ある。

みっちゃん八昌など名の通ったお好み焼屋のほとんどが採用しているのが、茹でた麺を鉄板で焼き、最後に本体と合体させるやり方。

それに対して地域の小さな店の多くが採用しているのは、生麺をつかわず、蒸し麺をはじめに軽く炒め、ソースで味をつけて、それを丸くしいた生地の上にまず載せてしまうやり方。
生地にのせた麺の上に、さらにキャベツや天かす、豚肉などを積み上げていく。
ひっくり返してしばらく火を通したら、アイロンのような丸い重しで上からぐいぐい押しつけ、キャベツの水分を搾りだすのである。

このやり方だと麺を茹でなくて良いので、女性が一人でまわしている小さな店などでは調理がしやすいということがあるだろう。
また広島風お好み焼きを「もともとのお好み焼きと、焼きそばの合体したもの」と捉えると、焼き方としてはこちらが初めで、その後ゆでた麺につよく焼きを入れてパリッとした食感を楽しませるというやり方が、新たに編み出されていったと考えられるだろう。

この初めの焼き方を「三八系」と呼んでいる人もいて()、この「三八」という店が、広島風お好み焼きのオールドスタイルな焼き方を代表するらしい。
ということでこれは行って見ずばなるまいと、ちゃりんこに乗って片道30分、出かけてきたのだった。


休日のお昼時ということで、けっこうな人が並んでいた。
有名店の行列はよく観光客によって作られるが、ここは全員、地元の人。
それだけでまず凄さが分かる。
店で食べるばかりでなく、同じくらいの量の持ち帰りがある。

入り口をはいるとでっかい鉄板があり、おばちゃんが三人で何十枚というお好み焼きを焼いている。
よく有名店で男性の職人が何人かで焼いているのは見かけるが、おばちゃんが三人で、しかも四角い鉄板を三方から囲んで焼いているというのは初めてみる光景で、韓国の飲食店をほうふつとさせる、なかなかの活気と迫力なのである。

鉄板がこんな状態なので、鉄板で食べるなんてことは出来ないのかと思ったが、聞いてみるといいですよと快諾、隅のほうに場所を空けてくれた。
しかしよくほかの店がやるように鉄板から焼け焦げをきれいにこそげ取るということもなく、ちょこちょこっと布巾でふいてくれる程度、あたかも調理場のすみで賄いを食べるという格好になったのだが、それはそれで悪くない。

目の前の鉄板で、大量のそばが炒められ、天かすとソースで味付けされる。
この天かすは、イカ天の天かすのようで、食べた時にイカ天の味がした。
その焼きそばを一人前分、丸くのばされ、けっこうな量の魚粉が振りかけられた生地の上にのせ、大量の細切りキャベツ、天かす、もやし、そして豚ばら肉が、普通は3枚のところ何とここでは5枚、それらをこんもり載せたところでひっくり返す。

しばらく蒸して、そしてアイロンでギュウ押し。
かなり強く、ぺちゃんこになるまで何度も押しつける。
これはキャベツの水分を取り、ほっくりさせる効果と、同時に上にある麺の味をキャベツに染みこませ、キャベツと麺とを一体化する効果があるそうだ。

ギュウ押しが終わると鉄板に卵を割り、コテでのばす。
卵は二つ玉。
上に本体をのせて、しばらくしてひっくり返し、ソースはミツワソース、青のりと白ゴマ、ガーリックパウダーで出来上がり。



シングル600円。
ほかにそば倍量のダブルや、半量のレディースがある。
青ねぎはサービスでトッピングしてくれる。
シングルだがすごいボリュームで、肉も5枚、卵も二つ玉で青ねぎ付きというのに、今どき600円はかなり安い。
やはり行列店の第一条件は、この強烈な割安感だろう。

食べてみると、ふんわりとして柔らかい。
なるほどこの柔らかさが、オールドスタイルな焼き方の身上なのだろう。
肉と魚粉、天かすでうまみもしっかり出ていて、ガーリックが良いアクセントになっている。
気取らない、素朴な感じで、ああ、広島風お好み焼きとはもともとこういうものだったのだな、と思う。
隅々まで神経を行き届かせて焼くお好み焼きはもちろんおいしいけれど、こういう店が、広島のお好み焼きの広い裾野を形づくっているのだろう。
ごちそうさまでした!

三八 (さんぱち) (お好み焼き / 段原一丁目、天神川)
★★★☆☆ 3.0

広島ブログ

2008-09-13

七田式が子供の脳を破壊


突然ですが、七田式。

9月11日(木)に発売された週刊文春によると、早期教育をうけた幼児が体調をくずしたり、心身症におちいったりする例が続出し、問題になっているそうだ。

0歳から3歳までの子供を対象とした「超早期教育」というのがあるそうで、それ自体すごい話だが、それを受けた3歳の子供が、あるとき突然、
「一喜一憂、一喜一憂、一喜一憂」
「吉田松陰、高杉晋作・・・」
と壁にむかって一心不乱に、念仏のように唱えつづけたり、別の2歳の子は、夜な夜な「ギャーッ」という近所中に響きわたるような奇声をあげて、泣くようになったのだという。

「フラッシュカード」というものがあって、絵や漢字が書かれており、それを0歳から3歳の子供にむかって、0.5秒に1枚の速さで次々にめくって見せ、子供たちはそれにあわせて早口で読み上げていく。
大量のカードをフラッシュして見せることにより、右脳が活性化するということなのだそうだ。

早期教育はもともと、ソニーの創業者である故・井深大が、『幼稚園では遅すぎる』という凄い題名の本を出版して提唱し、「公文式」と「七田式」が代表格として実践してきた。
ところがだんだんその弊害が大きいことが分かり、公文式は早期教育を積極的には薦めないようになったのだが、七田式は学習プログラムを全く変えることなく、早期教育をつづけてきた。

独り言や奇声の子供たちが通っていたのも、七田チャイルドアカデミー、専門家からも、七田式にはメンタルな問題をかかえてしまう子が多いと言われており、七田式が進出した韓国でも、児童に問題が多発して教室の一部を閉鎖したりもしたそうだ。

今は核家族だし、子供を生んだばかりのお母さんって、子供をどうやって育てたらよいのか、自信がないんだと思う。
3歳にもならない子供の目の前でカードをめくり続けることなど、拷問にも等しいことだが、もっともらしい説明をされてしまうと、それも分からなくなってしまうのだろう。

変なものには引っかからないよう、気をつけなければいけないですね。


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広島本通 カレー ガリバー


本通りからちょっと入った、ひろしま国際ホテルの前にある、カウンター10席ほどの小さな店。
2階が厨房になっているようで、そこでソースなどを仕込んでいるのだろう。

店のカウンターには若いお兄ちゃんと、おばあちゃん。
このおばあちゃん、ご飯をよそう役なのだが、年だからだろう、手つきがちょっとおぼつかない。
しかしお兄ちゃんは怒りもせず黙って見ているので、先代の女将さんか何かなのかも。

お兄ちゃんはカレーを仕上げるのだが、基本のソースがあって、ここに牛肉とか、ポルトガルソーセージとか、エビやベーコンやナスやきのこや、そういうものをメニューに応じて入れ、ひと煮して出すようになっている。
辛さは0から5までの6段階、これもそこで調整するのだろう。



「ポルトガルソーセージのカレー(ナス入り)」840円、中辛100円。
辛さをつけると100円取られるようになっている。
小さなサラダがついてくる。

ご飯は黄色く色がついている。
サフランライスなのか、何なのか。
カレーとよく合う、水分の少ない固めのご飯だ。

カレーは、ひとことで言うと、きちんと手がかけられているカレー。
カレーの味で、僕が一番のポイントだと思うのは、ていねいに炒めた玉ねぎの味。
これはたぶん、材料費はかさむし時間はかかるしで、省略される場合が多いのではないかとおもう。
カレー業界のことは詳しくないので分からないが。
しかしここではきちんと玉ねぎの味がした。

それから果物が何か入っている。
これも僕的にはポイントが高い。
カレーは味がどうしても肉々しくなるので、そこに果物が入っていると、世界がひとつ広がるような所があるとおもう。

中辛でもけっこう辛いのだが、スパイスの香りはあまりせず、唐辛子のような辛さ。
世の中にはスパイスの香りだけさせてインドカレーを標榜するものも多いとおもうが、それって醤油を入れれば日本料理、というようなもので、あまり感心しない。
むしろスパイスの香りが立ちすぎないようにする方が、上品であると僕は思う。

いずれにせよ、大変おいしいカレーでした。

ガリバー (欧風カレー / 立町)
★★★★ 4.0

広島ブログ

2008-09-12

広島福島町 ステーキ 菊


ラーメン屋「己己」、焼肉屋「菊寛」につづき、ステーキとコーヒーの店「菊」へ行ってきた。
福島町でひときわ目立つ、ツタのからまる大きなおうち。
中もしゃれた喫茶店風で、デートなんかにも使えると思う。
実際昼の1時半頃に行ったのだけれど、まだ席は8割がた埋まっていて、若い男女や女性同士のお客さんも多かった。



ハンバーグとか生姜焼きとか、ランチも色々あるのだけれど、せっかくなのでステーキを所望。
「シングルステーキ(220g、ミニサラダつき」1,575円、ライス大盛り315円。
焼き方もちゃんと聞いてくれて、「ミディアムでいいですか」というので「はい」とお返事。
肉はハラミという横隔膜の部分を使っているそうだが、この大きさで1500円は、和牛であろうことを考えれば安いと言えるのかもしれない。

外側は焦げ目がついて、中はピンク色、セオリーどおりの焼き方なんだろう。
でも焦げすぎだったかも。
炭の味がちょっとした。
ハラミはやはり内臓系だから、脂身はほとんどなく、しこしことした歯ごたえ。
こういうのが好きな人も多いだろうが、僕は肉はもっと脂っこいのが好きなのだ。
まぐろは大トロ。
関係ないけど。

ソースはにんにく醤油みたいな味。
何ていう名前なんだろう、けっこう塩辛く調整してある。
にんにくチップが振りかけられ、レモンとバターが置かれている。
ここまではまあ、いいのだけれど、それにさらに粒マスタードが別皿でけっこうな量、ついてくるのである。
にんにく醤油とレモンとバターと、粒マスタード。
これって合うか?
僕は合わないと思う。
粒マスタード、ソーセージなんかに付けて食べるとおいしいが、味の濃いソースがかかり、レモンにバターまでついた上にさらに付けると、何の味だか全く分からなくなる。

粒マスタードを出すのは味的にそれがおいしいから、ということではなく、一種のサービスなんだろうと思う。
新聞屋が洗剤つけちゃう、みたいな。
広島風お好み焼きにマヨネーズ、っていうのもそうかも。
でもそれが物事を台無しにするのなら、そんなことしない方がいいのだ。

つけ合わせのニンジンは砂糖で甘く煮られていて、これもにんにく醤油と合わないし、ハッシュポテトも冷凍食品みたいな感じだった。
全体として味のバランスがとにかく悪く、申し訳ないが何が言いたいのか全くわからなかった。

この店は、おいしいものを食べたいと思うひとが行く店というより、とにかく肉を安くお腹いっぱい食べたい、という人にむいている場所だと思う。
しかも雰囲気はちょっと洒落ているので、若い人がデートなんかをするには、まさに最高である。
なわけないか。

菊 (キク) (ステーキ / 福島町)
★★☆☆☆ 2.0

広島ブログ

2008-09-11

広島福島町 カレー 菊寛


「きくひろ」でなく「きくかん」と読む。菊の字を「きく」と読むのは音読みなのだ。だからどうした。
メニューを見たら実際かなり低めの料金設定だった。
しかしこの日は焼肉ではなく、カレー。
ランチのカレーが旨いという評判だったのだ。


「焼肉屋さんのカレー(サラダつき)中辛」700円、大盛り150円増し。
この名前から、肉ががんがん、まじ?というくらい入っているのを想像してたのだが、小さな塊がいくつか浮いているだけ。
まあウリは肉そのものではなく、たぶんスープにあるんだと思う。
隣のラーメン屋「己己」のスープもとてもおいしかったし。
しかしこのカレー、味付けが濃すぎて、まず塩気が強すぎるのと、中辛なのだがスパイスがかなり効いていて、スープの風味はまったく感じられない。
言っちゃ悪いが、そのあたりの牛丼店のカレーと変わらない味だった。
もしスープの風味を生かしたいのなら、もう少し穏やかなタイプのカレールーを選んだらよいと思うのだが、どうなのでしょう。
あと値段的にも、700円は高いと思う。

菊寛 (キクカン) (焼肉 / 福島町)
★★☆☆☆ 2.0

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2008-09-10

広島本通 カレー 一楽章


本通から路地をちょっと入ったところにあるのだが、カレー専門店というにはちょっと変わっている。
喫茶店というか、カフェというか、バーというか、レストランというか、正体不明な感じなのである。
昼はママとアルバイトの二人でまわし、夜はママが一人でやるらしい。
このママというのが独特な雰囲気をかもし出している人で、ひとことで言うと過剰なまでの母性本能の持ち主なのではないかと思う。
人と接するのが好きで、相手に喜んでもらうことが自分の喜び、店もはじめは喫茶店か何かでスタートしたのが、お客さんが来るようになり、その人たちとやり取りするうちに、だんだんと今のような形になってきたのではないかと想像する。
といっても雑多というのとは全くちがい、全体として包み込まれるような、統一的な個性を感じさせる。
ママの人柄だろう。
カレーも、そのようなところから自然にメニューに加えられるようになったのかもしれない。
それが今では、カレー屋として広島ではけっこう有名な存在となっている。



そのカレーだが、ベースは完全におうちのカレー。
既製のルーを使い、そこにスパイスなどを足しているのだと思う。
けっこう辛めに味を決めているのが特徴といえば特徴だが、ソース自体はどこにでもある、家でも作れる、普通のものだ。
しかしこの店の売りは、ソースでなくトッピングにある。
「今日のおすすめ」が毎日変わるそうで、今日は「牛肉ときのこのオムレツカレー(サラダつき)」850円、大盛り100円増し。
「ベーシックカレー」というのがメニュー筆頭にあったので、それを頼もうと思ったら、「おすすめだったらすぐに出来るのですが・・・」とのことだったので、そちらにした。
カレーのトッピングといえばカツやらハンバーグやらが主流だし、オムライスはドミグラスソースと合わせられることが多いので、こうやってオムレツがカレーのトッピングになるというのは、考えてみたら新しい。
味も何の違和感もなくおいしく食べられた。

この店、休日なしで、昼の11時半から、夜中の12時まで営業しているのだそうだ。
帰り際にママに「夜の12時まで頑張っていますので、ぜひまたいらして下さいね」と言われ、うん、そうだな、またこなくちゃな、という気にさせられた。
常連さんもけっこう多いのだろうと思う。

一楽章 (インドカレー / 本通)
★★★☆☆ 3.0

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2008-09-09

広島西区 ホワイト餃子 広島店


「ホワイト餃子」とは初めて聞いたのだが、千葉県の野田に本店があるチェーン店で、全国に31店舗あるのだという。
チェーン店といっても本部が食材などを供給するというわけではなく、本店で修行した人がのれん分けという形で新たな店を開業するということで、餃子はそれぞれの店で一から手作りしているらしい。
「ホワイト」というのは餃子の店としてはまた変わった名前だが、創業者が満州で中国人の「白(パイ)」という人から餃子の作り方を教わり、戦後日本に引き揚げてきて餃子店を始めるにあたって、「パイ餃子」では色気がないので「ホワイト餃子」にしたとのこと。
こちらも大して色気があるとも思えないのだが。

こちら広島店は横川駅の北側の商店街をちょっと行ったところにある。
店構えは広島の繁盛店によくある、ちょっと小汚い感じ。
店内には店を訪れた芸能人やテレビ局のアナウンサー、プロレスラーなどのサインと写真で埋め尽くされている。
かなりの話題店らしい。
ランチメニューの「8個定食672円」を注文。



焼き餃子が8個、それにご飯、味噌汁、キムチがつくのだが、この餃子、とても変わっている。
焼き餃子というのは普通、皮が薄いものだが、この皮はまるで水餃子のように分厚いのだ。
なのでそれをただ蒸し焼きにするのでは、中まで火が通らないからだろう、フライパンを使うのだが、強火にかけると餃子にかぶるほどの湯を注ぎ、まず初めにゆでるのである。
それだけなら水餃子な訳だが、次が変わっている。
しばらくゆでると今度は湯が入った上から大量の油を注ぎ、そのまま火にかけ続ける。
そうするとだんだん湯が減り、そのまま揚げることになっていくわけだ。
最後は油を切って焦げ目をつけて出来上がり。
けっこうな時間がかかり、メニューにも「当店は調理時間に17分かかります」と書いてある。

揚げ餃子は普通、皮がパリパリになるものだが、ここはゆでてから揚げてあるので、皮はもちもちでさくさく。
ちょっと揚げパンと似た感じもあるが、餃子の皮としては初めての食感だ。
タレは、作り方が書いてあるあのだが、酢を2、醤油を1、ラー油を入れて、多めの一味唐辛子とおろしニンニクを入れるのがポイントとのこと。
なるほど、タレの辛味が皮のモソモソ感をうまく中和する働きがある。
激辛でもったりした皮と、ほくほく餡の取り合わせ、たしかに癖になりそうな感じで、値段も安いし、繁盛するのもよく分かる。
今回は定食にしたのだが、今度は餃子だけ食べるようにしてもいいかなと思った。

ホワイト餃子 広島店 (ホワイトギョウザ) (餃子 / 横川)
★★★★ 4.0

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