2008-10-01
広島横川 チョリソのリゾット 「ペペローネ」
昨日僕がソーセージを使ったお粥のことを書いたら、「この店のリゾットがよく似ておいしいから行ってみて」とコメントをもらったのである。今日たしかに横川に向けて自転車をこぎ出したのだが、予定ではこの店は外から様子だけ見て、同じビルの1階にあるラーメン屋に行ってみようと思っていた。ところがチラシを配っている女の子がいたのである。普段はチラシなど受け取らないのだが、目が合ってニコッと微笑まれてしまったのでつい手にしたそのチラシに、この店の名前が書いてあったのだ。これは運命というものだろう。僕は運命には素直に従うのだ。
「リゾットだけでもいい」と訊いたら、
「ええ、どうぞ」と言うので、この店にやって来たという訳だ。
しかしリゾットだけという訳には行かないのはもちろんだ。この店のリゾットは生米から作るため、25分ほど時間がかかる。生ビールと「アジのエスカベーシェ550円」を頼んだ。
エスカベーシェとは、マリネのことである。スペインでは、小魚を色々食べるのだ。といかにも知った風だが、一度だけスペインに行ったときに小魚を食べたという話である。
肝心のリゾットだが、コメントの文面からしてソーセージを使ったリゾットがあるのかと思ったが、そのようなものはメニューに載っていない。マスターに訊くとメニューにはないが、最高級イベリコ豚のチョリソ・ソーセージがあって、それを使ってリゾットを作っても良いという。いくらかと訊くと840円。お願いすることにした。
僕はイベリコ豚というのは最近まで知らなかったのだが、言わずと知れた、って僕は知らなかったわけだが、しつこいか、スペインの西部地方で飼育される最高級の豚である。黒豚の一種なのだが、絞める3ヶ月前からどんぐりばかり食べさせるので、その脂肪分が肉に入り込み、松坂牛のような霜降り状態になる。その肉から作るチョリソ・ソーセージは、腸詰にしてから2年間熟成される。そこまでしないと最高級品としての合格印をもらえないのだ。以上はマスターの受け売りである。
そしていよいよ、チョリソのリゾット。
申し訳ないが、これはすごい。まずチョリソがすごい。「うまい」という言葉はこのチョリソのためにある、というような味である。何の説明にもなっていないが。当然ソーセージの味なわけだが、普通のソーセージにくらべると身が締まっているのだろう、硬い食べごたえで、そこにうまみが濃縮されているという感じである。そのチョリソが贅沢に使われ、うまみが全体に行き渡っているのだから、うまいに決まっているというようなものなのである。
さらにチョリソを生かすための舞台作りにもぬかりがない。玉ねぎをオリーブオイルでていねいに炒め、続いて米を炒める。本当は外米を使ったほうがねばりが出ず、イタリアではそのようにさらっと仕上げるのだが、日本人は米にはうるさい、変なものを使うとすぐクレームがくるので、ここはきちっと日本産の新米を使っているそうだ。
米を十分炒めたら、白ワイン、そして煮立ったブイヨン。ブイヨンは煮立っていなければならない。イタリアは、やはりアルデンテの国なのだ。冷めたブイヨンを入れると、米が水分を吸ってしまい、芯が残らないのである。そして煮ること17分、器によそってパルメザンチーズとイタリアンパセリのトッピング。
チョリソに加えてオリーブオイル、白ワイン、ブイヨン、パルメザンチーズ、これらの織りなす濃厚なうまみ。それが芯が残ってはいるが十分やわらかな米に凝縮されている。「粥は滋味だ」と僕は書いたが、このリゾットは力ずく、圧倒的な迫力でうまいだろうと迫ってくる。さすが西洋人、考えることが違う。
Peperone (イタリアン / 横川)
★★★★★ 5.0
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