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2008-10-10

広島庚午北 お好み焼き 「としちゃん」


この店は宮島街道沿いにあり、名前も「としちゃん」という男性名だから、いわゆる住宅地の中でおばちゃんがやっているお好み屋とはちょっと違うんだろうなと、前から気になっていたのだ。
実際店主は40歳位の男性、これが陽に焼けたなかなかのいい男なのであるが、店内は入り口を入ると右側に、奥に向かって8人ほどが並んで座れるけっこう大きな鉄板、左側にはテーブル席、鉄板はピカピカ、掃除も行き届いた感じで、おばちゃんも二人ほど働いており、ああ頑張ろうとしてるんだな、ということは伝わってくる。

しかしまあそうやって意気込むわりには、僕が行ったのが午後2時過ぎという、ランチの喧騒が終わってほっと一息ついたり、夜に向けての仕込みをしたりする時間だったのは分かるが、店主はお好み焼きを作りながらチラチラテレビを見ているし、おばちゃんも水がなくなっても全く注ぎに来ないしで、イマイチ実体が伴っていないというところなのだと思う。

焼き方は、多分この店主、みっちゃん総本店で修行したのではないだろうか。
キャベツを全く押すことなく途中で中に空気を入れながらふっくらと蒸すところ、生麺を使うのだがそれを茹でたら片面だけに焼きを入れるところ、などなど、随所にみっちゃんの流儀を感じる。

しかしもちろん、この店主が自分で考え工夫したのだろうなというところもあって、まず第一にキャベツの切り方。
1センチほどもありそうな、かなりの幅広である。
その幅広キャベツにきちんと火を通すためだろう、何ていう名前なんだろう、かぶせる蓋みたいなやつ、あれをかぶせてお好み本体を蒸している。
それからもう一つは麺の扱い方。
茹で時間がすこし短かめなんじゃないかと思う。
おそらく店主はキャベツや麺の「食べ応え」を重視しているのだ。

あと味付けにも工夫がある。
まず「おっ」と思うくらい大量のラードを使う。
それから麺を焼くとき、途中でどぼっとソースをたらす。

みっちゃん総本店の焼き方はほんとにプレーンで、逆に言うと味的にちょっと物足りないものもあり、みっちゃんから暖簾分けした店の中には化学調味料やガーリック、果てはマヨネーズなどの調味料に頼りまくりの店もあったりするから、この店がみっちゃんをベースにしながらも、キャベツの切り方や麺の茹で方、ラードやソースの使い方など、調理の基本的な部分の工夫で味にパンチを出そうとしていることは、評価できると思う。
評価って偉そうだが。


肉玉そば650円。

なかなかおいしいお好み焼き。
ラードとソースのおかげだろう、かなりのコクがあって、麺の生っぽい食感も悪くない。
ラーメンなんかも今はこってりコクのあるスープに存在感のある麺、というのが流行りだったりするから、このお好み焼きもそういう時流にうまいこと合わせていると思う。

でもなー、この店、何となく惜しい感じがする。
「気合」みたいなものを感じないんだよね。
たぶんまだ開店してそうは長く経っていないと思うから、ぜひこれから頑張って欲しいなと思う。
余計なお世話だが。

としちゃん (お好み焼き / 高須)
★★★★ 4.0