名古屋から男女4人の友だちが来て、京都でいっしょに少し遊び、そのまま僕は車に乗せられ、名古屋へ連れ帰られた。
名古屋には2年ほどいて、5年ほど前に離れたのだが、名古屋にいる間にできた友達関係が、今でもずっと続いていて、時々飲み会が計画されては、そこに誘ってもらっている。
一人、料理がたいへん得意な女性がいて、会費を払い、彼女に料理を作ってもらって、みんなでその料理に舌鼓を打つというのが基本パターンだ。
僕が最近、仕事を変わったため、まだ収入が不安定であまり旅行をしたりできないという話をしたら、わざわざみんなで、はるばる京都まで、僕を迎えに来てくれたというわけなのだ。
京都では、祇園で昼飯を食べた。
祇園の店など、僕はどこも知らなかったから、花見小路でよさそうな店を探そうということにしていたのだが、入ってみた店がたいへん良かった。
「ご飯処 山ふく」という名前。
食べログでの評判も良かったのだけれど、ランチは20食限定だから、予約もしていないし、無理だろうと思っていた。
そうしたら、たまたまキャンセルが出たというので、5人で入ることができたのだ。
四条通から花見小路を南へ下り、最初の角を東へちょっと入ったところにある。
「お食事処」といった風情で、おばちゃんが、息子さんらしき人と二人でやっているようだ。
花見小路といえば、祇園の中心街。気取った店も多いところ、この店が出してくれるのは、なんとも素朴な、京都の家庭料理。
ランチは1800円で、このあたりでは最も安い部類に属する。
おかずは4~5品かと思ったら、次から次へと出てきて止まらない。
自家製の漬物から始まって、おひたしに煮豆、ワカサギの南蛮漬け。
さらに揚げ出し豆腐。湯葉や高野豆腐、里芋の入った煮物。肉じゃが。おでん。
炊き込みご飯と赤だし。
どれもおばちゃんの心が込められていて、大変うまい。
さらにその他にも、鯛の子の炊いたんやら、小魚の佃煮やら、サービスだといってあれこれ出してくれる。
最後には、炊き込みご飯をお茶漬けにしたらいいと教えてくれたが、これがまたうまかった。
おかずがたっぷりとある上、ご飯はおかわりもできるから、男性でも完全に満腹になる。
店を始めて49年になるというおばちゃんは、「肝っ玉母さん」を絵に描いたよう。
口は悪いが心はやさしい。
お客さんも、観光客はあまりおらず、年配の常連客が中心のようだった。
祇園を一回りして、甘味処「ぎをん小森」。
わらび餅パフェと抹茶。
それから、一路名古屋へ。
名古屋でも、またごちそうの数々。
味噌おでん。
味噌味のおでんは初めて食べたが、うまいのは言うまでもない。
カキと韓国のりの炊き込みご飯。
韓国のりの香ばしい風味が、カキによく合う。
名古屋へ来たら、やはり食べて帰らなければいけない名古屋めしがある。
シロノワール(ミニ)。
コメダ珈琲は、京都の家にもあり、店内の様子からコーヒー、料理まで、名古屋とまったく同じものが食べられるのだが、やはり名古屋で食べるシロノワールは、ひと味ちがう。
あんかけパスタ。これは「ポパイ」という商品名。
ほうれん草と、ベーコン、赤ウィンナー、玉ねぎを炒め合わせたものがトッピングされていて、ミートソースとカレーを融合したと思える、独特のソースがかけられている。
あんかけパスタは、名古屋以外の場所ではなかなか食べられない。
というわけで、土曜日から日曜にかけ、ごちそうをたらふく食べたため、昨日の夜は、もうお腹があまり空いていなかった。
それで、軽いものを食べたいと思い、思い付くのは湯豆腐。
食事は、何を食べようか考える時が、いちばん楽しい。
これにはいつも、1時間ほどの時間をかける。
はじめにパッと思いつくものは、どうもイマイチなことが多いのだけれど、あれこれネチネチ考えていると、最終的にはかならず、自分が食べたいと思えるものになる。
湯豆腐も、豆腐だけだと寂しいから、あっさりしたものを何か入れたいと思うことになる。
まず思い浮かぶのは、池波正太郎流のハマグリだけれど、これはわりかし最近食べたから、何かちがうのにしたい。
そこで、アサリ。
これに冷蔵庫に入っている白菜を合わせることにした。
まず昆布だしで白菜を煮て、それから砂出ししたアサリを入れる。
豆腐を入れたら、火を落としてもう煮立てない。
考え方はいろいろあると思うけれど、湯豆腐は、あくまで豆腐は「温めるだけ」というのがポイントだろう。
煮立てて固くせず、豆腐のやわらかく、なめらかな食べごたえを楽しむ。
アサリの、素朴な味のだしが、またいい。
タレは、ポン酢でもいいけれど、昨日はしょうゆに削りぶしとネギ。
それだけだとちょっと辛いから、鍋のだしで少し割る。
好みで七味を振ってもいい。
湯豆腐を食べ終わったら、鍋のだしをタレの器に注いで飲む。
だしは、うどんにしてもまたうまいのは、言うまでもない。