2012-02-27
品数をしぼって骨付き肉を入れる変わりおでん。
「大根と鶏のおでん」
池波正太郎が、
「人間は死ぬために生きている。その生を精一杯充足させるために、真剣に食べるのだ」
というようなことを書いている。
この池波の、「人生の目的は死ぬことである」というのは、池波一流の、やや強すぎる言い方であるとは思うけれども、しかし人間が、誰でもいずれ死ぬことはまちがいない。
年ももう50を目の前にし、これまで生きてきた期間より、これから生きる期間のほうが短いということになってくると、立つ鳥跡を濁さずではないけれど、自分がどのように死ねるのか、思いをいたらせずには得ないところがある。
死がいつやってくるのかは、誰にもわからないことだけれど、死に方の理想としては、おそらく誰にとっても、「ポックリ死ぬこと」なのではないか。
前の日までは元気だったのに、次の日になったら死んでいる。
あまり苦しんだりすることも、それほど他人に迷惑をかけることもない。
「あらー、この人、昨日まではあんなにピンピンしてたのに、今日になったら死んでるわ」
などと言われるようだと、言うことないだろう。
僕はタバコを吸うから、タバコが「百害あって一利なし」だという人から見れば、健康管理は0点だということになるのかもしれない。
しかしタバコを吸うことで、10年や20年寿命が縮まったからといって、それで悪いともあまり思えない。
このあいだニュースで、「日本人の死因1位であるガンを減らすために、タバコを規制する」というようなことが書いてあった。
もちろん、タバコを吸いたくない人が、他人の煙を吸わなくてはいけないことについては、対策を考えなければいけないだろうけれども、タバコが好きな人が、好きなだけタバコを吸って、その結果肺ガンで早死したとしても、それはそれで、幸せな人生だったのではないかとも思える。
誰だって明日死ぬ可能性がある以上、人生の過ごし方としては、「今をどれだけ充実させられるのか」ということにしかならないだろう。
これはあまりに当たり前のことで、今さらいう必要もないようなものだけれど、こう日本人が長生きするようになると、自分も長生きしないと、損したような気がするのかもしれない。
たしかにみんなが得をしているところで、一人だけ損をするというのは、あまり気持ちのいいことではない。
しかし「損して得とれ」ということが、日本人の昔からの美徳というものなのではないか。
福島には現在でも、多くの人が住んでいる。
子どものいる人は、多くが県外に避難しているそうだけれど、さまざまな理由から、福島に残る選択をしている人もいる。
福島に残っている人も、一度は県外への避難を考えたことだろう。
しかしその上で、福島にとどまることを決めたということの重みを、僕たちは考えなければいけないように思う。
人間にとって、「生きる」と「死ぬ」とは、決して切り離すことのできない、表裏一体のものだ。
「死」をはっきりと思い定めるからこそ、「生きる意味」が生まれてくる。
「どのように死にたいか」と、「どのように生きたいか」は、まったくおなじ問いだろう。
日本人はこれまで、なんとなく「自分は死なない」のではないかと、思ってきたところがあるように思うけれども、死はほんとうは、誰にとっても、すぐ身近にあるものであることを思い起こすことは、これからの日本を考えるにあたって、決して無駄なことではないように思う。
鍋はすぐに火が通るものを、サッと煮て食べるのもうまいけれども、大きなままの材料を時間をかけて煮るのもまたたのしい。
材料が大きくなると、鍋は「おでん」と呼ばれるようになるのだけれど、おでんはすでに様式化されていて、入れる材料も地域や家庭によって、決まっていたりもするだろう。
しかしおでんに入れるより材料をしぼり、おでんにはあまり入れないようなものを加えてみるのも、また気分が変わっていいものだ。
このときスペアリブや鶏手羽元など骨付きの肉を入れると、いいだしも出るし、いつものおでんとは、まったくちがった感じになる。
だしは昆布と削りぶしでとる。
簡単にやろうと思ったら、「おでんだしの素」を買ってくればいいけれど、自分でだしを取るのもそれほど面倒くさいものではないし、だいいちおでんだしの素より断然うまい。
水にだし昆布1枚と削りぶし1つかみを入れ、中火にかける。
煮立ったら火を弱くして、アクをとりながら、コトコト3分ほど煮る。
あとはザルにペーパータオルをひいて濾す。
ここにまず酒をジャバジャバと入れ、みりんを、自分が好きなだけ入れる。
最後に味を見ながら、醤油かうすくち醤油を、辛さがちょうど良くなるまで入れる。
大根は、好きな形に切って、15分ほど下ゆでし、箸がすっと通る程度のかたさにしておく。
手羽元と、下ゆでした大根、それに厚揚げでもゆで卵でも好きなものを入れ、弱火でコトコト、30分くらい煮る。
最後に水菜でも入れれば出来あがり。
カラシを添えて食べる。
おでんとまったく同じことなのだが、鶏のうまみが出ているのがまたうまい。
だしをすこしうすめて、うどんを入れるのもいい。