2012-01-30
日本を変えるただ一つの方法。
「常夜味噌鍋」
生活を変えるのは、意外に難しいことだというのは、僕にも分かる。
生活は、「習慣」として進んでいくところも大きいから、いつでも保守的な側面をもつ。
やり慣れていることを、「やらない」というのは、ほんとうにそれで大丈夫なのか、なかなか確信がもてず、踏み出す勇気が出ないものだ。
やったことがないことは、どんなことでも、「分からない」ものだ。
人には、会ってみなければ、どんな人だか分からない。
新しい店は、入ってみなければ、どんな店だか分からない。
思い付いた料理も、実際に作って、食ってみなければ、どんな味がするのか、ほんとうのところは分からない。
未知のものは、言い換えれば、経験による実績がないわけだから、経験済みの実績あるものと天秤にかければ、経験のあるものが、いつでも信頼性は、高いことになる。
若いうちは、自分自身が経験したことが、そう多くないために、新しいことをやってみるのに、ためらうことも少ないけれど、年を経て、経験が増えるにしたがって、新しいことをするのが怖くなる。
今のままでも、べつだん食うに困るわけでもなし、それならば、失敗の危険を犯して、新しいことをするよりも、現状維持のほうがいい。
それはもちろん、間違ったことではないし、それこそが、「大人の分別」というものだろう。
しかし「内なる声」というものがあることも、これまた事実だ。
人間は、どんなに機械化された世の中に住んでいても、自分の中に大自然を飼っている。
多くの場合、世の中と、自分の内なる大自然との折り合いをつけることは、なんとかうまく行くけれど、それがどうしても、うまく行かなくなることだって、長い人生の中にはあるものだろう。
折り合いがつかないまま、解決できずにいるうちに、人間は病気になったり、自ら死を選んでしまったりすることもある。
自然の力は強いから、どんなになだめすかし、都合がいいようにさせようと思っても、言うことを聞いてくれるものではない。
そういう時には、腹を決め、自然の言うことを聞くしかない。
そのためには、今持っている何かを、捨てなければいけない。
何を捨てたらいいのかは、自然が教えてくれる。
それも、中途半端ではいけない。
水泳で、息継ぎをする時、「息を思い切り吐けば、自動的に吸えるものだ」と習ったことがある。
初心者は、肺に息が残っているのに、さらに息を吸おうとするから、息継ぎがうまくできない。
息を吸うことを考えるのでなく、思い切り吐くことだけを考えれば、あとは身体が、自動的に息を吸ってくれるものだと。
何かを捨てようとする時も、おなじだろう。
中途半端に何か残しておくことをせず、徹底的に捨ててしまえば、あとは自分の自然が、なんとかうまく、やってくれるものだ。
何かを捨てることは、自分の生活の一部をなす、欠かすことができないと、それまで思っていたものを、取り外すことになる。
だから捨てることには、かなりの勇気がいるけれど、何かをほんとに変えようと思うのなら、それをやらなければ仕方がない。
仕方がないから、やるしかない。
たいへん簡単なことなのだ。
「日本を変える」と、坂本龍馬気取りの人が多いご時世となっているが、日本など変えられるわけがない。
「日本」などというものは、ない。
ただあるのは、国民一人ひとりの「生活」だけだ。
国民一人ひとりの生活が、集まったものが、「日本」なのだろう。
政治家を替えたって、日本など変わるわけがない。
国民の生活が変わらないのなら、どんなに何を変えたって、日本は今のままだろう。
でも、少なくとも明らかなことは、ちょっとした勇気を持ちさえすれば、自分の生活を変えることは、できる。
自分の生活を変えること、そのものが、日本を変えることだと、知ることが必要だ。
昨日は、ほうれん草が食いたいと思った。
青菜はどれも好きだけれど、やはり甘みがあり、やわらかなほうれん草は格別だ。
ほうれん草というと、瞬間的に連想するのは、豚肉、常夜鍋。
しかし常夜鍋も、あまり連発するのも芸がない。
それで、常夜鍋を、水炊きにするのでなく、味噌味で炊いてみた。
昆布と削り節のだしをとり、ここに赤だし味噌をたっぷりと溶き込む。
味噌なら何でもいいかもしれないが、やはりグツグツ煮込むには、赤だし味噌は最高だろう。
好みで砂糖やみりんを、入れてみたって悪くはないが、ここはむしろ、味噌だけの方が、素朴な味がしてうまい。
材料は、豚コマ肉、ほうれん草、安売りをしていた、中国産のシイタケ、油揚げ。
ほうれん草は、そのまま入れるとアクが出るから、かならずさっと下茹でしておく。
一回に食べる分だけ、鍋で煮る。
ほうれん草は、下茹でしてあるから、最後に入れて、温めるだけでいい。
七味をふって食う。
これは、うまい。
豚肉が、味噌と合うのは言うまでもないが、ほうれん草も、味噌と合う。
ほうれん草の味噌汁の感覚だ。
油揚げとシイタケに、味噌味のだしが、たっぷりと染みこむのもいい。
豚のだしがたっぷり出た、残り汁で煮るシメのうどんは、まさに、絶品。