2011-12-20
イカワタと味噌の濃厚な味。
「イカワタ鍋」
イカは、おもて向きさっぱりとした、上品な味をしているが、その奥底には、濃厚な味のイカワタを隠しもっている。
せっかくイカを食べるならば、このイカワタまで、丸ごと味わってしまいたいと思うわけだが、イカを食べるたびに、いちいち塩辛を作るというのもめんどうくさい。
そこで登場するのが、檀一雄の「イカのスペイン風」で、これは中骨とクチバシだけを抜いたイカを、中にイカワタを入れたままブツブツとぶつ切りにし、下味をつけたあとサッと炒めるという、まことに簡単な料理。さらにおなじ要領で、味噌味にしてもうまいことがわかっている。
ただこのところの寒さで、鍋ばかりやっているものだから、イカの出番はないとあきらめていたのだが、思い付いてしまったわけだ。「イカワタ鍋」。
ためしにネットで検索してみると、たしかにイカワタ鍋という料理があり、さまざまな作り方があることがわかる。
すべてのレシピに共通するのは、味噌を使うことだ。たしかにイカワタの濃厚な味と、味噌はよく合う。いくつかのレシピを参考にしながら、もっともシンプルだと思えるやり方で、イカワタ鍋を作ってみた。
まずはイカをさばく。イカをさばくのは、慣れないと多少とまどうところがないではないが、べつにまったく難しくない。
イカは、脚と頭と、イカワタの袋がつながっていて、その上を、三角の胴体がつつむようになっている。胴体とイカワタは、胴体の片側で、中骨を補強材としてたてにつながっているのだが、胴体下の、頭の部分と胴体とがつながっているところを、両手でパチンと、押し広げるようにして外し、左手で胴体、右手で頭をもちながら、すこしひねるようにして引っぱっていくと、わりかし簡単にはずれる。
これ以上引っぱると、イカワタの薄い袋が千切れるのじゃないかと、ちょっと心配になるのだが、かまわずゆっくりと引っ張っていくと、大体だいじょうぶだ。
引っぱり出して露わになったイカワタの袋の表面には、片側に、たてに青黒い墨の袋がついている。
墨も入れると、またさらに濃厚さが増すのだが、下手をすると、料理の色が真っ黒になってしまうから、今回は指で外すことにする。
イカワタは、袋ごと鍋に入れてしまう。
胴体には、片側に中骨がへばりついているから、それをはがして引っぱり出す。
脚の根元に硬いクチバシがあるから、それをほじくり出す。
目のちょうど真ん中に包丁を入れ、目をはずす。
あとは胴と脚を、食べやすい大きさに切れば、イカをさばくのは完了。
写真では、脚をぶつ切りにしてしまったが、本当は、脚2~3本ずつをまとめて切り離すようにしたほうが、鍋にするには食べやすかった。
だしの味付けだが、まず味噌。これは赤だし味噌と西京味噌をブレンドしてみたが、べつに何でも好きな味噌を使ったらいいと思う。
西京味噌は、1年以上冷蔵庫にほったらかしにしていたら、カチンコチンに固まってしまい、溶かすのが大変だった。冷蔵庫に1年以上放置した西京味噌があるのなら、新しいのを買ったほうがいい。
あとはおろしたショウガと、酒、みりん、醤油。まず醤油とみりん、酒を入れ、味噌を溶かしたあと、そこにだしを注ぐようにする。
だしは、昆布と削りぶしとか、昆布と煮干とか、濃いめのだしを取ったほうがいい。
イカワタの量が限られているから、だしの量は、少なめにしておくことがポイントとなる。鍋をしながら煮詰まってしまったら、その分水を足していくようにする。
材料は、イカの他には、味出しの長ネギ。味を吸いこむ油揚げ。香りのしめじ。あとは冷蔵庫にあまっていた白菜を入れた。
イカは、イキのいいのを買えば、刺身でも食べられるのだが、やはりちょっと煮込んで、ちゃんと味をつけたほうがうまい。イカと白菜、油揚げをしばらく煮込み、そのあと長ネギとしめじを入れるようにする。
鍋を作りながら、ちょっとしたツマミをつつき、あたたかい酒をのむ。
まさに濃厚な、ちょっとホルモン煮込みにも似た味。臭みは全くない。さわやかさのかけらもなく、ひたすら濃厚な味は、好みは分かれるかもしれないが、好きな人には、たまらない。
七味じゃなく、一味唐辛子がよくあう。
最後はうどんでしめると、抜群にうまい。