このブログでは、料理本、料理エッセイをいろいろ取り上げてきていますが、これまで紹介していないものも含め、「読んで楽しい料理本」を、改めてまとめてみました。
順位もつけてみましたが、これは高野の独断と偏見により決められています。
第1位 「檀流クッキング」(檀一雄)
不動の1位。和食から中華、韓国、スペイン、ロシアなど、各国の料理を網羅。この1冊で、料理の基本がマスターできるのみならず、「料理の楽しさ」を実感できる。レシピを参考にするのもよし、ただ読んでみるのもよし。まさに座右の書となりうる一冊。実際にレシピ通りに作ってみると、檀一雄の人間性に、より肉迫できるのが魅力。分量などが細かく書いていないのもいい。
第2位 「食卓の情景」(池波正太郎)
池波正太郎は、それほど自分で料理をするわけではないが、池波の「食」についての考え方や感じ方が、風情があって非常にいい。10代のころ株屋で働き、相場で儲けていたため、感性の豊かな時期に遊びたおした池波は、「日本人の食」について確固たる考え方をもっている。古風ともいえるその考え方は、現代においては貴重。文章の、流れるようなリズム感が、またいい。
第3位 「向田邦子の手料理」(向田和子監修)
脚本家向田邦子の死後、妹さんの向田和子がまとめたもの。向田邦子も、毎日自分が食べるものについて、こだわり続けた人で、料理について様々なチャレンジをしている。一見それほど特別に思えないレシピも、実際にその通り作ってみると、脚本家らしい向田邦子のセンスが感じられるのが楽しい。「おきゃんな女性」向田邦子の、人間性に触れられる一冊。
第4位 「そうざい料理帖」(池波正太郎)
池波正太郎が書いたエッセイの中から、料理について書いたものだけを抜粋し、編集したもの。イラストに簡単なレシピも載っているから、自分で作って見ることで、池波正太郎の世界を体験できるのが魅力。
第5位 「わが百味真髄」(檀一雄)
「檀流クッキング」が「サンケイ新聞」に連載され、主婦向けに書かれたものであるのにたいし、こちらは初め「週刊現代」に連載され、男性読者を想定している。細かいレシピはそれほど多くないが、日本および世界の津々浦々の様々な料理を、軽妙な筆致で紹介している。
第6位 「御馳走帖」(内田百けん)
夏目漱石の弟子内田百けんが、「食」について書いたエッセイ。百けん自身は料理はしないが、食にたいして独自のこだわりがあり、それを「いじましい」とも感じられる書き方をしているのが微笑ましい。明治から昭和初期の食文化、生活風俗が感じられるのもいい。
第7位 「美味放浪記」(檀一雄)
日本および世界の料理を、土地ごとに紹介している。もともと旅行雑誌に連載されたものだから、旅のガイドブック的趣きがある。
第8位 「そうざい料理帖 巻二」(池波正太郎)
「そうざい料理帖」の続編で、読者が自分で作れる料理が少ないのが難点だが、端々に池波が家で食べてきた料理について書かれているのがいい。
第9位 「うまい!海軍めし」(海軍めし愛好会)
戦前・戦中の、男ばかりの世界である海軍で、どのような物が食べられていたのか垣間見ることができるのが魅力。家で自分で料理できるよう、詳しいレシピも載せられている。
第10位 「ごちそうちゃんこ」(中山暢子)
男ばかりの世界である、相撲部屋のちゃんこ料理を紹介。鍋料理が多いが、一品料理も多数掲載。詳しいレシピ付き。
番外1 「魯山人味道」(北大路魯山人)
伝説の料理人で陶芸家、魯山人のエッセイ。日本料理についてのうんちくは、大変参考になるが、ちょっと攻撃的で暗いのが難。
番外2 「食は広州に在り」(邱永漢)
作家であり、多数の会社の経営者でもあった、邱永漢の食についてのエッセイ。レシピも一部載っているが、邱永漢自身は、それほど料理したわけでもないらしい。何かというと中国料理の自慢話になるのが難。
番外3 「男のだいどこ」(荻昌弘)
映画評論家荻昌弘の、食に関するエッセイ。荻は休日になると、料理に腕を振るったようだが、すこしマニアックなところが難。