2011-12-09
寒い季節にはやはりこれ。
「おでん」
いよいよおでんの季節が到来している。冬の凍りつくような寒さのなか、屋台でおでんを肴に熱燗を一杯やるのは、これ以上ないたのしみとも言えるだろう。
冬空の屋台の肴は、やはりおでんでなければいけないのであって、汁物でありながらも、具が小さく刻まれず丸ごとはいっている、おでんの野趣にかなうものはない。
おでんの具の、何が好きかは、人により様々なわけだけれど、私のばあいは、まず大根。それから厚揚げ。そして玉子。おでん屋で、この3つだけは、何があってもたのむ。
そろそろツイッターでも、おでんを食べる人がちらほら出はじめたので、昨日は私も、おでんのネタを探しに、近所の商店街へ出かけていった。
魚屋も年末体制にはいっていて、棒ダラが山のように積まれている。棒ダラは、タラをカチンコチンに干し上げたもので、まずこれを一週間水につけてもどし、さらに半日かけて炊くのだそうだ。そのタラをえび芋といっしょに炊きこんだ芋棒は、京都の正月を彩る料理のひとつとなる。
旬の真っ盛りをむかえているサバも、まるまる太り、銀色にかがやく、見るからにうまそうなのが出ていたから、3枚におろしてもらった。これは今日と明日の鯖寿司にする。
魚屋で、ちくわのほかに、おでんに入れるものを探していたら、小さなイカを勧められた。イカをおでんに入れるとは、聞いたことがなかったけれど、関西ではタコはふつうにおでんに入れるし、イカもOKな範囲に入るらしい。一人分で3杯だけ、160円で売ってもらった。胴のなかの中骨だけ引きぬいて、そのまま煮てしまう。
今回おでんは、だしをきちんと取ることにした。いつもだしパックですませてしまうところ、まずは昆布。奮発して2枚いれた。昆布は煮るとぬめりが出てくるから、鍋の底やまわりに、気泡がついてくるあたりで取り出す。
それから削りぶし。カツオではなく、サバやらイワシやら、ムロアジやらの、節や煮干しがはいっている。おでんや味噌汁には、こちらのほうが濃い味が出てうまいと、魚屋に勧められた。
昆布だしが沸いたら、たっぷりの削りぶしをいれ、弱火で2~3分煮て火をとめる。ざるにペーパータオルをひいて濾す。
取っただしに、酒とみりん、それに醤油で味をつける。
今回おでんを京都流にやってみようと思い、魚屋の3人のおばちゃんに、醤油はうす口をつかうのか、濃口をつかうのか、きいてみた。
すると、ひとりはうす口。ひとりは濃口。もうひとりは、
「お店では、汁が煮つまって色が汚くなるのを避けるため、うす口をつかうんだよね」
とのこと。要はどちらでもいいと判断し、昨日は濃口醤油にした。
この汁で、まずは大根だけ、30分ほど、コトコト煮る。こうやって大根だけ先に煮てしまえば、別鍋で下ゆでする手間が省けるし、煮汁で煮る時間が長くなるから、味もよくしみる。
大根に火を通したら、そのほかのネタをいれ、さらに30分ほど煮る。
卵はふつうは、ゆでて皮をむいたものを入れるところだが、昨日はよく洗った生卵を、殻をつけたまま入れてみた。
広島のある店でおでんを食べたとき、そういえば卵に殻がついていた。殻付きのまま、おでんに生卵をいれることがあるのかと、ネットで調べてみたら、やはりそうやる人は、けっこういるらしい。
http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2005/1108/066267.htm
卵の殻には、小さな気孔がたくさんあいているから、殻をつけたままでも味がしみる。コンビニの味付け玉子の要領だ。おでん屋でも「玉子は殻つき厳守」の店があるそうだ。
煮上げたらしばらく置いて、味のしみたおでん。風呂にはいり、暖房のきいた部屋で食べるから、日本酒は常温。
イカは、はじめはどうかと思ったが、いやこれはいい。しかも中に卵をいっぱいつけていて、けっこうな珍味。
餅入り巾着は、豆腐屋で厚揚げのほかに、何を買おうか考えていたら、そばにいたほかのお客さんに勧められた。巾着のなかで、やわらかくなった餅に、汁がたっぷりしみ込んでいるのは、たまらない。
殻をむいた玉子は、写真ではわかりにくいが、ほんのり色がついている。ゆでてから入れるのとくらべ、それほどちがいが無いようにも思えるが、十分うまい。生卵をいれるのは、作るのに手間がかからないから、ちがいが無ければ、そのほうがいいな。