2011-10-05
恍惚の幸せ感。鯛そうめん(ゴボウ入り)
鯛そうめんは広島や岡山、愛媛など瀬戸内海沿岸に伝わる郷土料理で、お祝いの席で出されるごちそう料理だそうだ。僕は広島では、鯛そうめんは食べたことがなかったのだが、広島の人に話を聞いて作るようになった。
正式には尾頭付きの鯛を使い、鯛の色があせないよう、醤油も薄口を使ったりもするみたいだが、なに、そこまでしなくたって構わないのだ。
要は鯛の煮付けをする時に、鯛の旨みがたっぷり出た煮汁を、そのままにしておくのはもったいない。そこでそうめんを入れ、その煮汁を残らず味わってしまおうということだろう。京都の魚屋でも、「鯛の煮付けに、そうめん入れてもおいしいよ」と教えてもらった。
こういうところが、家庭料理のいいところだと思うのだよな。鯛も焼いてしまえば、それでおしまいだ。焼いた鯛はもちろんうまいけれど、それ以上のことはない。ところがこの鯛を煮付ければ、煮汁が鯛をおいしくするのと共に、鯛も煮汁をおいしくする。それでこの煮汁がさらに、一緒に炊いたゴボウをおいしくし、おまけにそうめんまでおいしくしてしまう。みんなが一緒に幸せになれるわけだ。
しかも家庭の主婦にとっては、この料理一品だけで、他におかずを作らなくても、色んなおかずがいっぺんにできてしまう。手も掛からないということだよな。
僕がいつも魚を買うのは、三条会商店街にある「ダイシン食料品店」。べつにどうということもない、普通といえば普通の魚屋だけれども、とにかく店の人が親切で、あれやこれや教えてくれる。魚は料理の仕方に多少の工夫が必要だから、スーパーで見ただけでは、どうやって食べたらいいのか、分からない場合も多い。だからこういう魚屋で、料理の方法を聞きながら買い物をするのは、素人にとっては大変助かる。
昨日はここで、鯛のアラが250円で売っていたから買ってきた。鯛も切り身を買えば、それなりの値段がするが、アラはそれより全然安く、しかもうまいのだから言うことない。それに鯛の頭は、切り身より、なんとなく豪華な感じがするのもいいところだ。
アラは必ず湯通しする。グラグラと煮立ったお湯を使ってしまうと、鯛の皮が剥がれてしまったりするから、沸騰してちょっと冷めて、80度くらいの湯をかけるのがいいと、レシピに書いてあったりする。それなら給湯器の最高温度は、80度くらいだから、そのままかければちょうどいいのだ。
湯通ししたら、あとは水をかけながら、血の塊やぬめり、あと鯛の場合は残っているうろこを、手でていねいに取り除く。
レシピを見ると、湯通しする前に、塩をふってしばらく置くと書いてあるのもある。たしかに鯛のアラは、臭みが出やすいところがあるから、気になる人はそうしたほうがいいのかも。
煮付けをする時は、煮汁の量をどうするかが、けっこうポイントとなる。普通の魚を煮付けるのなら、煮時間は7~8分。アラはちょっと大きいし、火が通りにくいから15分。この煮時間で、汁がちょうどいい加減に煮詰まるようにしたいわけだ。
しかしこれは簡単なことで、フライパンのような平たい鍋で、強めの中火でグラグラと煮立てる場合、水気はだいたい10分で1カップなくなる。だから7~8分煮ようとするのなら、水と酒をあわせて1カップにしておけば、丁度よい加減で煮詰まることになる。昨日は15分煮ることにし、そうめんのために、汁を多めに残したかったから、水と酒をあわせて2カップ。
ちなみに酒は、多ければ多いほどうまい。昨日は水と酒を、ちょうど半々。
まず鍋に昆布をしく。それから水と酒を入れ、火にかけながら汁に味を付けていく。みりんと砂糖を好きなだけ入れ、それから味を見ながら醤油を足す。塩味は冷めるときつくなるから、少し甘目にしておいたほうが、最後までおいしく食べられる。
煮立ったら水にさらしたゴボウとアラを入れ、アクをていねいにすくい取り、クッキングシートの落し蓋をして、強めの中火で15分。
だし昆布は引き上げてしまわず、一緒に煮て食ってしまう。これがまたうまい。
煮上がったら、茹でて水で洗ったそうめんを添えれば、鯛そうめんの出来上がり。
ちなみに僕は、煮魚は鍋(フライパン)のまま出してしまう。一人で食べるものだから、それでいいのだ。
まあしかしこの鯛そうめん、うまいのなんの。こってりした甘辛い味というのは、食べてると幸せ感でいっぱいになりますな。
まずぷりぷりに煮えた鯛がうまいのは当然のこととして、この鯛の煮汁をたっぷり吸い込んだゴボウがたまらない。さらにそうめんが、時間がたつにつれ煮汁をどんどん吸い込み、かさが増え続け、食べても食べてもなくならない。この鯛・ゴボウ・そうめんの3連発の攻撃にノックアウトされ、酒の酔いも手伝って、最後は恍惚としてしまう。
それと一昨日のしめ鯖、少し残してあったのを、一夜おいた昨日食べてみた。魚屋のお兄ちゃんは、「一晩置くとまたうまい」と言ってたが、なるほどたしかに、味がなじんで、初日のプリプリしたのとは、また違った良さがある。これは次回は、初めから「2日分」と思って、しめ鯖を作るのが正解だな。