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2011-10-16

魚屋のお兄ちゃんに学ぶ、本格塩辛の作り方


三条商店街の、よく行く魚屋に、ちょっと「かねてっちゃん」
にも似た、威勢のいいお兄ちゃんがいる。

いかにも「職人」という一本気な性格と見受けられ、祇園祭になると、お神輿をかつぐ男衆にくわわったりもしている。

魚屋には、旦那さんらしき年配の男性と、奥さんらしき年配の女性、その他手伝いをしているとおぼしき年配の女性が2人いて、このお兄ちゃんは「若旦那」なのだと思う。美人の奥さんに、小さな子供もいて、まさに人生真っ盛り、充実した毎日を送っている様子が伝わってくる。

このお兄ちゃんが、また魚のさばき方や、料理の仕方などについて、滅法くわしい。お父さんである旦那さんより詳しいようで、たぶんどこかの料理屋かなにかで修行して、そのあと家業を継ぐことにしたのじゃないか。

最近は、おばちゃんだけでなく、このお兄ちゃんに、色々きいて、非常に勉強になっているというわけなのだ。




こないだの火曜日、見るからに活きのよい、まっ茶っ茶のスルメイカが大量入荷していたから、これを1パイ買い、胴のところは塩焼きにし、生姜醤油で食べ、ゲソを塩辛にしてみることにした。

それで塩辛の作り方を、お兄ちゃんにきいてみたら、僕が承知していたやり方とは全然ちがう。

僕が以前、スーパーの鮮魚コーナーのお兄ちゃんからきいた、イカ塩辛の作り方は、
「ワタに塩をし、そこにイカを3時間ほど漬け込む」
というものだった。

このやり方で作った塩辛は、それなりにおいしく食べられるものにはなったのだが、魚屋のお兄ちゃんは、
「3日めくらいにならないと、うまいと思えるだけのコクがでませんよ」
とのこと。

そこでいうまでもなく、その魚屋のお兄ちゃんにきいた、より本格的なやり方を、ためしてみることにしたわけだ。




イカはまずよく水洗いし、水滴をキッチンペーパーでふき取っておく。


胴の袋のところから、足とワタが一体になった中身の部分を引き抜かないといけないのだが、昨日改めて、お兄ちゃんにきいてみたら、胴と中身がつながっている部分の両側に、左手の人差し指と中指を挿し込み、右手で中身をおさえながら、上に引き上げるようにすると、「パチン」という音と共に、胴と中身が外れるようだった。あとは中身を、すこしねじるようにしながら取りだせば、中身は胴から、「スッ」と抜けてくるとのこと。ただしこの時は、ああでもないこうでもないと、ずいぶん苦労した。

さらに胴を縦断して、一本太い骨があるから、それも引きぬいておく。


「目の真ん中」で切って、ゲソの部分とワタの部分とを分ける。

ワタ袋の表面を縦断して、墨袋があるから、それを潰さぬよう、慎重に手で取り外す。ワタ袋の先端にある内臓も、いっしょに手でむしりとっておく。

以上は、前回イマイチうまくいかなかったので、昨日お兄ちゃんに質問して聞いた、正しいやり方。

まあしかし、ワタを袋のまま、こわさぬように取り出すことができれば、それでいいということだ。


ワタの袋は、塩を大量に、「埋めてしまうくらいに」振る。これで一晩置いておく。


一晩たったワタ袋。ずいぶんと水分が出てきていることがわかる。


ワタ袋はいったん水で洗い、塩を洗い流して、ペーパータオルでよく水をぬぐい、袋の表面に、縦に包丁で切れ目を入れる。


そしてワタ袋を箸でしごきながら、中身をすべてとりだす。

イカのわたは、生のときは鮮やかな黄土色をしているのだが、塩に漬けて一晩おくと、こげ茶色になる。熟成がはじまっていることを意味しているのだろう。


漬け込むイカの方だが、今回はゲソだけだが、こちらにも塩をして、1時間から3時間くらいおく。

1時間から3時間の幅があるのは、ここでおく時間により、塩辛の塩からさが決まるということらしい。

時間がたったら、水洗いして塩を落とし、水気をよくぬぐい取る。ここで水気を残してしまうと、カビが生える原因となる。


ゲソの場合、目やくちばしは取りはずし、ぶつ切りにして、イカと混ぜ合わせる。これをタッパーなどに入れ、冷蔵庫で3日おくわけだ。




3日たった塩辛。

このままだと、ちょっと生臭みがあるから、ここに「酒」と「みりん」を、ほんのちょびっとずつ入れる。

酒とみりんは、はじめから入れてしまうと、熟成が進まないということらしい。

3日たったら、作った全量に対し、酒とみりんをくわえる。塩辛は、あまり漬けすぎても、いけないそうだ。3日目で酒とみりんを入れることで、熟成をとめる意味もあるのだろう。

保存するなら、この状態で保存して、さらに食べる時に、ゆずなりレモン汁なりの柑橘果汁をふる。




これはこっくりとしたコクがあり、やはり3時間で漬ける浅漬とは全然ちがいます。酒のアテにも、ご飯のおかずにも、たまらんうまさ。

時間はかかりますが、イカをさばくのがちょっと面倒だとはいえ、それほど手間がかかることではないので、もし活きのいいスルメイカを見かけたら、ぜひやってみてください。

スルメイカの活きのよさを見分けるポイントは、
「表面の茶色い色があざやか」
なことです。