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2009-02-05

都町 お好み店「たま子」

いつもチェックしているブログ で、家からそれほど遠くないこの店のことを見て、「劇的にうまい」ということだったのでぜひ行ってみたいと思っていたのだが、これまで何回か前を通っても、営業していなかったのだ。
聞いたら毎年正月はゆっくり休むのだが、さらに今年はインフルエンザに罹ってしまい、1月はずっと休んでいたとのこと。
おばちゃんが一人でやっているのだが、齢を訊いたらなんと80歳。
腰も曲がっていないし、動作も言葉もしっかりしていて、とてもそんな齢には見えないな。

狭い店で、鉄板前は5、6人がやっと座れる感じ、それに小さなテーブル席がある。
僕が行ったのは午後2時頃で、その時にはお客さんは切れていたが、それからまた続々と常連のお客さんが入ってきて、すぐ満席になってしまった。

この店、始めて36年になるそうだが、おばちゃん、いかに常連のお客さんに可愛がってもらっているかということを、嬉しそうに話してくれる。
値段も消費税が5%になった時ちょっと上げたきり、変えていないそうだが、お客さんのほうが「もうちょっと値上げしなよ」と言ってくれたり、一昨年の冬に骨を折って、それからは体調が今ひとつなので、「無理せず、ぼちぼちでいいから、長く続けてくれ」と言ってもらったりするのだそうだ。

広島の人は本当にお好み焼が好きなわけだが、これはもう理屈じゃないんだなと思う。
広島の人の気質というのは「一途」であるというのを、僕は広島に来て8ヶ月、感じるところなのであるが、その広島人の一途な愛が、何にも増して、惜しみなく注ぎ込まれているのが、このお好み焼なのだ。
広島の人にとって、たぶん、お好み焼というのは、他の食品や料理との比較の問題ではない。
「とにかくお好み焼がすき」なのだ。
また無数に、と言ってもいいくらいあるお好み店についても、どこがおいしいのかを慎重に比較検討するということではない。
一旦「ここ」と決めたら、ひたすらそこに行き倒す。
特定の店を、長年にわたって、応援し続けるのだ。

だから、と言うべきなのかどうか分からないが、広島の人はお好み焼を、自宅ではあまり作らない。
大阪の人の全ての家には、たこ焼きを焼く鉄板が常備されていると聞いたことがあるが、まあそれは嘘か本当か知らないが、広島の人はお好み焼を、家で焼くのではなく、家で食べるにしても、店で焼いたものを持ち帰るか、配達してもらう。
店で焼いたほうがおいしい、ということも、多少はあるのかも知れないが、僕はそれよりむしろ、「お好み焼きは、店で焼かれたものを食べるものだ」と、広島の人が思っている、ということなのではないかと思う。
自分が贔屓にしている店を、応援することに意義があるのだ。
お好み焼は、広島においては、単に一つの食品ではなく、地域社会のあり方、のようなものとも、密接に関係してくるもの、またはその中核に位置するもの、なのではないかと思う。

とまあ、いらぬウンチクを語ってしまったが。

というわけで「たま子」のお好み焼、注文したのは「肉玉そば」580円。
作っているのを見てびっくり、

山のように盛られた、大量のキャベツ。
おばちゃんの手で、ふたつかみ半、入れていた。
すごいな。
これをひっくり返すと、あまり動かしたり、上から抑えたりもせず、ひたすら時間をかけて蒸す。
「八昌」と同じだな。
玉子を貼り付け、お好みソースと味の素をかけて、そこにコショウと一味唐辛子をたっぷり振り、青のりをかけて完成したのがこれ。

ほんとに巨大で、標準サイズの1.5倍位はある。
この値段でこのサイズ、それでほとんど決まりだな。
「儲けはないよ」とおばちゃん、楽しそうに言っていた。
時間をかけて蒸されたキャベツは、ほっくり甘い。
そこにたっぷり振られたコショウと一味唐辛子が、良いアクセントになっている。

常連さんたちは、この店にいる間じゅう、他愛もない世間話をしている。
僕が水を汲みに行こうとすると、代わりに常連さんが汲んでくれる。
一つの社交場なのだよな、お好み店は。

たま子 (お好み焼き / 観音町、西観音町、福島町)
★★★★ 4.0