2008-08-02
DVD 『犯人に告ぐ』
豊川悦司主演。誘拐事件を担当した巻島(豊川)は、寸前のところで犯人を取り逃がし、誘拐された子供は殺される。さらに記者会見でも失態をおかした巻島は左遷されるが、六年後、新たな誘拐事件の捜査のために呼びもどされる。テレビのニュース番組で犯人に直接呼びかけることで、犯人逮捕につながる情報を視聴者から入手しようというのだ。巻島がテレビで犯人を挑発すると、犯人から手紙が送られてくる・・・。
まずおそらく原作がいいのだろう。主人公が、妻が出産するにあたって、妹からのたび重なる電話連絡がきっかけとなって捜査に失敗、記者会見で失態してしまうところから始まり、捜査の実力はないが政治力だけは強い県警本部長、父親の威光だけで出世している若い上司などに翻弄され、またテレビ局どうしの視聴率競争に巻き込まれながらも、自分をつらぬき、事件を解決していく。無理も矛盾もまったく感じられない自然な展開で、原作者はまだ四十にならない年だそうだが、たいしたものだと思う。題名もいい。
それから豊川悦司がいい。影の部分が多い役回りになるのだが、それを淡々とした生活の動作の中に埋め込んでいく。またそれだけでなく後半、「犯人に告ぐ」とそれまでの万感の思いを込めた大見栄をきるのだが、その爆発力も胸のつかえがすっと下りる快感がある。刑事役ははじめてだったそうだが、とても良いのではないかと思う。本部長役の石橋凌、若い上司役の小澤征悦の憎まれ役ぶりも、ああ、ああ、そうそう、こういう人いるよね、と膝を打ちたくなる。
四十もすぎるとただ企画ものの番組や映画は観たくない。やはりきちんと人間が描きこまれていてほしい。この映画は「劇場型捜査」などというキャッチフレーズもあったようだが、これが二作目の監督は、人間を描くことを目標に、出演者におさえた演技を求めたそうだ。予算はおそらくテレビのサスペンス劇場に毛が生えた程度のものだったのではないかという感じがするし、派手なアクションシーンも皆無なのだが、観おわったときの満足感はかなり高い。
評価:★★★★☆
犯人に告ぐ|WOWOW ONLINE